レクサスの新コンパクトSUV「NX」を試乗する|Lexus
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2015年5月20日

レクサスの新コンパクトSUV「NX」を試乗する|Lexus

LEXUS NX200t│レクサス NX200t
LEXUS NX300h│レクサス NX300h

デザインとエンジンで攻めるプレミアムブランド

レクサスの新コンパクトSUV「NX」を試乗する

コンセプトモデル「LF-NX」譲りの躍動感に溢れるデザインをまとい、今年4月、レクサス初のコンパクトSUVとして北京でワールドデビューを飾った「NX」。「RX」よりもひとまわりサイズを落とし、新開発の2リッター ターボエンジンを組み合わせるなど、これまでとはちがうあたらしいレクサスを具現化した、いま注目の一台にモータージャーナリストの河村康彦氏が試乗した。

Text by KAWAMURA YasuhikoPhotographs by HANAMURA Hidenori

あらたなるマーケティングへのチャレンジ

日本唯一のプレミアムブランド、レクサスが放った最新のモデル「NX」。例によってアルファベット2文字で表されるその車名は、「動きが速い」あるいは「鋭敏な」という意を示す英語“nimble”の頭文字“N”と、クロスオーバー(crossover)を示す“X”の組み合わせに由来をするという。

レクサス初のコンパクトSUV、と自らをそう紹介するNXのボディサイズは、兄貴分「RX」に対して全長が140mm短く、全高が45mm低い。いっぽうで、1,845mmという全幅に“コンパクト”という表現を用いるのは、こと日本の市場ではじゃっかん奇異と感じられるかも知れない。

実はこちらも、RXに対しては40mmのマイナス。そんなこのモデルの大きさは、「ヨーロッパ市場を念頭に置きながら、アメリカ以外のすべての市場で高い適合性を備えることを意識したもの」と、チーフエンジニアは語る。

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LEXUS NX300h “version L”

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LEXUS NX300h “version L”

ん? アメリカ以外??

……と、そんな氏のコメントを耳にして気が付いた人はなかなか鋭い。

1989年に初代「LS(日本名:セルシオ)」とともにアメリカで産声を上げ、その後もこの巨大市場に軸足を置いてきたのがレクサスというブランド。ところが、「もちろんたくさん売れてくれるに越したことはありませんが、でもこの地では『そこそこ売れてくれれば良い』と考えているんです」と、このNXの場合には敢えてアメリカがナンバーワン市場ではないことを強調する。

そう、そんなサイズ観で開発され、それゆえ日本への適合性もRX以上に高いとおもわれるNXには、もうひとつ、そうしたあらたなるマーケティングへのチャレンジのための“隠し玉”がある。それが、完全に新開発され、「レクサス初のターボ付き」とも紹介される2リッターの直噴4気筒エンジンだ。

LEXUS NX200t│レクサス NX200t
LEXUS NX300h│レクサス NX300h

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カタログスペック上に現れない数々の工夫

8AR-FTS型と名付けられた、ターボ付きの直噴4気筒新開発エンジン。それが発する最高出力と最大トルクは、それぞれ238psと350Nmという値だ。

すなわち、レクサスでのパワーユニット ラインナップで言えば、これが既存の3.5リッターV6自然吸気エンジンを今後置き換えて行くべく企画された、いわゆる“ダウンサイズユニット”であることは容易に想像が付く。

ヨーロッパの各メーカーでは、すでに数年前からこうした動きは当たり前におこなわれている事柄。例えば、いまやジャガーのフラッグシップ大型サルーンである「XJ」にすら、2リッターの直噴ターボ4気筒エンジンが搭載される時代でもあるのだ。

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レクサス初のターボ付きとなる2リッター直噴4気筒エンジン

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かくして、見方によっては“あと出し”感も漂うこの新作のエンジンは、それゆえに「これまでハイブリッド用のユニットに織り込んできた数々の技術も織り込むなど、高効率と低燃費を徹底的に追及した」と開発陣が豪語をするものとされている。

例えば、シリンダー内直接噴射とポート噴射を使い分けるトヨタオリジナルの“D-4S”システムや、高膨張比を実現するアトキンソンサイクルの採用。燃費が悪化する冷間始動時に暖機を素早くおこなうブロック冷却水制御や、ピストンオイルジェット停止システム、2槽式オイルパンの採用などがその一例。

また、“世界初”が謳われる4→2集合エキゾーストマニホールド一体シリンダーヘッド+ツインスクロールターボや、専用低水温ラジエーター回路を備えた水冷インタークーラーとコンパクト吸気系のコンビネーションなどは、ダウンサイズターボエンジンが陥りがちな加速Gの不自然さを解消するアイテムとして注目されるものだ。

いずれにしても、こうしてカタログスペック上に現れない部分にも数々の工夫が施されている点に、“あと出し”によるハンディキャップをむしろ糧へと転じるための決意が感じられるのが、このあたらしい心臓。そしてもちろん、この先のロードマップには同様の考え方に基づいたエンジンバリエーションの拡充や、一層の高効率化を追ってのリーンバーンの採用など、さらなる展開が待ち構えているにちがいない。

今後にそんな期待を予感させる新世代の心臓が、まずはNX200tシリーズに搭載されたこのユニットであるわけだ。

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LEXUS NX200t “F SPORT”

LEXUS NX200t│レクサス NX200t
LEXUS NX300h│レクサス NX300h

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攻めの姿勢が感じられるのがNXのデザイン
前述のように、RXよりもひと回り小振りに仕立てられたNX。だが、それでもその存在感が決してそうした兄貴分に負けていないのは、まずは大胆なまでに抑揚に富み、陰影が深く刻み込まれたそのエクステリアデザインによるところが大きいと考えられる。

“スピンドルグリル”に代表されるアグレッシブなフロントマスクは、いまやすべてのレクサス車に共通する、このブランドの作品に固有の代表的特徴。NXではさらに、立体感の強い側面の造形やBピラー部分が強く外側に張り出した“ひし形ボディ”などで、このモデルならではの個性を強くアピールする。

フロントドア断面の張り出しのピークとドアパネル下部後端が、共に斜め上方へと向かうキックアップライン。それに、リアエンド部分にも反復されたスピンドルのモチーフや、前後ホイールフレアの強いボリューム感など、複雑な要素が随所に盛り込まれたデザインだけに、「こんなカタチはビジー過ぎて好みではない」という人も現れる可能性はあるとはおもえる。

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LEXUS NX200t “F SPORT”

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LEXUS NX200t “F SPORT”

それはインテリアでも同様。特に、金属を削り出したかのように存在感の強いセンターパネル部などには、やはり“好み”が分かれる要素は多分にありそうだ。

しかし、クルマにしても宝飾品にしても、そもそもある程度の過剰性は不可欠というのが、プレミアムブランドの作品の鉄則でもあるはず。となれば、万人受けを狙った結果に凡庸となり、良くも悪くも記憶に残らない“無印良品”化をしてしまうよりは、遥かに攻めの姿勢が感じられるのがNXのデザインであることは間違いない。

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LEXUS NX200t “F SPORT”

ちなみに、特にインテリア各部の仕上がりレベルの高さは、「さすがはプレミアムモデル」と納得できるもの。多彩なインテリアカラーの組み合わせが選択可能なのも、見逃せないポイントだ。

走行機能のアップを狙った専用メカニズムと共に、内外装にもよりスポーティなデザインが与えられた「Fスポーツ」ももちろん用意をされている。専用スポーツシートや、専用デザインのステアリングホイール、アルミ製スポーツペダルなど、インテリアの差別化が明確なこのグレードは、若々しく、アクティブなユーザーがターゲットとなるNXでは、人気のモデルとなりそうだ。

LEXUS NX200t│レクサス NX200t
LEXUS NX300h│レクサス NX300h

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加速力のリニアリティ

まずは前出のあたらしい心臓を搭載した、200tのベースグレードFWD仕様で走りはじめる。1.7トン超の重量に2リッターエンジンではさすがに物足りないのでは!? というおもいは、走りはじめると同時に良い意味で裏切られる。

そう、スタートの瞬間から加速感はおもいのほか軽快。アクセルペダルを踏みくわえて行くと、3,500rpm付近から上では4気筒エンジンならではの音が耳に付きはじめはする。それでも、街乗りシーンであればそんな領域まで引っ張る必要性はほとんどないから、静粛性も十分に”レクサスらしい”高さがキープされるのだ。

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LEXUS NX300h “version L”

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LEXUS NX200t “F SPORT”

あたらしい心臓の美点は、発する加速力のリニアリティが高い点にもある。これまで世に出た“ダウンサイズ ターボ”エンジン搭載車の中には、アイドリング付近でのトルク感がいささか物足りなく、それゆえにアクセルペダルを踏み増すと、今度は唐突にトルクが立ち上がって加速力がおもいのほか高まってしまう、という不自然さを伴うモデルも実は少なくない。

だが、200tの場合にはそうした違和感は見事なまでに皆無。良い意味で自然吸気エンジン搭載車のような、ナチュラルな加速感を得ることができるのだ。

いっぽうで、“その気”になって高回転域まで引っ張れば、おもいのほかにパワフルだ。タコメーター上に引かれたレッドラインは6,000rpm。そこまで、きっちりと力強く回りきるというスポーティなキャラクターを併せ持つことも確認できた。

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LEXUS NX300h

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LEXUS NX200t “F SPORT”

そんな性格の持ち主ゆえに、よりアクティブなイメージの強いFスポーツとの組み合わせでも、マッチングに文句ナシ。そんなこんなで、“遅れてやって来た”このダウンサイズ エンジンは、なかなかの仕上がりなのだ。

いっぽう、200tシリーズから、すでにハリアーに先行搭載されているハイブリッド ユニットを譲り受けた300hシリーズへと乗り換えると、まずはモーターパワーのみでスタートを切ることによる、際立ってスムーズかつ静かなスタートのシーンが、やはりこちらはこちらで独特のプレミアム感を演じてくれる。さらにフルパワーを引き出すべくアクセルペダルを深く踏み込めば、そこでは2.5リッターのエンジンがノイズを急速に高めることになってしまう。が、緩加速が主体となる日本の日常シーンでは、そうした領域まで踏み込むのは稀なことだ。

燃費の良さのみならず、こうした穏やかなキャラクターの持ち主であることも、日本が世界屈指の“ハイブリッド普及国”となった理由のひとつかも知れない。

LEXUS NX200t│レクサス NX200t
LEXUS NX300h│レクサス NX300h

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NXが狙った走りのキャラクター

ところで、最新ブランニューモデルであるNXは、フットワークの点もなかなか非凡な実力の持ち主だった。200tに300h、FWDに4WD、ベーシックグレードにFスポーツと多彩なバリエーションを用意するこのモデル。が、そうしたどの仕様に乗ってもまず基本的に共通するのが、ストローク感に富み、路面の凹凸をしなやかに吸収するというテイストだ。

そうした中で特に好印象が残ったのが、200tのベーシックグレードと、おなじくFスポーツのFWD仕様。

先に述べたように動力性能は予想と期待をした以上。ハンドリング感覚も正確な上に軽快で、恐らくはNXというモデルが当初から狙ったであろう走りのキャラクターを、もっとも忠実に再現していると思えたからだ。

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LEXUS NX200t “F SPORT”

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NX300h AWDモデルには、独立したリアモーターによって後輪を駆動させるE-FOUR(電気式AWDシステム)が備わり、滑りやすい路面での発進性、走行安定性を高めている

なかでも、フロントサスタワー上部とボディリアエンドにパフォーマンスダンパーを採用し、専用チューンが施された電子制御式の可変減衰力ダンパーを備えたFスポーツは、ストローク感が特に富んだ上でボディ振動の減衰も素早いので、ダンパー減衰力がもっともハードなレベルを基本とする”スポーツ+”のモードを選択したとしても、狙い通りにボディの不要な動きが抑制されるいっぽうで、不快感はほとんど増すことがない。

逆に、300hでのリアモーターなども含め、後輪駆動系が追加されるためか、4WD仕様はFWD仕様よりも総じてブルブルとしたボディ振動の減衰が鈍めの印象。FWD仕様同士で200hと300hを比較した場合では、後席下に置かれた駆動用バッテリーをはじめ、モーターや駆動力分配ユニットなど様々なハイブリッドシステム用のアイテムが路面凹凸を拾った際の振動源となるためか、やはり走りのスッキリ感では「200tの方が上」という印象だ。

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LEXUS NX300h│レクサス NX300h

デザインとエンジンで攻めるプレミアムブランド

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「レクサス」というブランドのあらたなステージ

通常のスポット溶接よりも細かいピッチでの結合が可能な“レーザースクリューウェルディング”や、構造用接着剤などを用いた結果による高い剛性を実現したボディ骨格に、前出新エンジンの採用。

さらには、これまでのレクサス車にとっては“聖地”でもあるアメリカ市場に対する呪縛から解放されたクルマ作りなど、なかなか気合いの作品であることが納得できるのがNXというこのモデル。

いっぽうで、いまや「7段や8段が当たり前」というプレミアムモデルの世界では物足りない6段に留まった200t用のATや、残念ながら「世界の最先端を行っている」とまでは紹介ができないドライバーサポートシステムの機能など、そこにはまだ“死角”が存在するのも事実ではある。

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軽量化と高剛性を実現したボディがスポーティなハンドリングを可能とする

けれども、そうは言いつつもその仕上がりぶりを知れば、「レクサス」というブランドがあらたなステージへと踏み込んだことを、誰もが実感できるに違いないというのもまた事実。

NXは、“これからのレクサス”に大いなる期待を持たせてくれるブランニューモデルでもあるのだ。

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LEXUS NX200t│レクサス NX200t
ボディサイズ│全長 4,630 × 全幅 1,845 × 全高1,645 mm
ホイールベース│2,660 mm
トレッド前/後│1,580 / 1,580mm(Fスポーツは前後ともに1,570mm)
最低地上高│170 mm
エンジン│1,998cc 直列4気筒DOHCターボ
エンジン最高出力│175 kW(238 ps)/4,800-5,600 rpm
最大トルク│350 Nm(35.7 kgm)/1,650-4,000 rpm
トランスミッション│6段オートマチック
駆動方式│FF、4WD
サスペンション 前/後│マクファーソンストラット / ダブルウィッシュボーン
ブレーキ 前/後│ベンチレーテッドディスク / ディスク
使用燃料│無鉛プレミアムガソリン
燃費(JC08モード)│(2WD)12.8 km/ℓ   (4WD)12.4 km/ℓ
定員│5人
価格(消費税込み)│428-518万円

LEXUS NX300h│レクサス NX300h
ボディサイズ│全長 4,630 × 全幅 1,845 × 全高 1,645 mm
ホイールベース│2,660 mm
トレッド前/後│1,580 / 1,580mm(Fスポーツは前後ともに1,570mm)
最低地上高│170 mm
エンジン│2,493cc 直列4気筒DOHC + モーター
エンジン最高出力│112 kW(152 ps)/5,700 rpm
フロントモーター最高出力|105 kW(143 ps)
リヤモーター最高出力|(4WDのみ)50 kW(68 ps)
エンジン最大トルク│206 Nm(21.0 kgm)/4,400-4,800 rpm
フロントモーター最大トルク|270 Nm(27.5 kgm)
リヤモーター最大トルク|(4WDのみ)139 Nm(14.2 kgm)
トランスミッション│電気式無段変速機
駆動方式│FF、4WD
サスペンション 前/後│マクファーソンストラット / ダブルウィッシュボーン
ブレーキ 前/後│ベンチレーテッドディスク / ディスク
使用燃料│無鉛レギュラーガソリン
燃費(JC08モード)│19.8km/ℓ(FFの標準もしくはIパッケージは21.0 km/ℓ)
定員│5人
価格│492-582万円

レクサスインフォメーションデスク
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