メルセデス・ベンツA 45 AMG 4MATICに試乗|Mercedes-Benz
Mercedes-Benz A 45 AMG 4MATIC
メルセデス・ベンツ A 45 AMG 4マティック
もっとも小さなAMG
メルセデス・ベンツA 45 AMG 4MATICに試乗
メルセデス・ベンツのモータースポーツ活動を支えると同時に、「S 65 AMG」や「E 63 AMG」をはじめとするハイパフォーマンスカーを生み出すAMG。最新のこれらのモデルではV12やV8エンジンに、FRもしくはFRをベースとした四輪駆動を定石としていたAMGが、横置きの2リッター直4エンジン、FFベース車両という未知の分野に挑み、生み出した作品が「A 45 AMG 4MATIC」だ。排気量1リッターあたり180psという高出力に可変トルク配分の4WDシステムを搭載する、メルセデスのあらたなるコンパクトスポーツハッチの世界を、河村康彦氏がリポート。
Text by KAWAMURA YasuhikoPhotographs by ARAKAWA Masayuki
AMGの哲学にのっとったハイパフォーマンスエンジン
世界一パワフルな量産4気筒ターボエンジンを搭載──そんなフレーズを“金看板”としたコンパクト メルセデスが、昨年7月に日本で発売された「A 45 AMG 4MATIC」だ。
AMG車としては史上もっとも小さく、同時に初めてFFレイアウトの持ち主をベースとして開発されたことも話題となったこのモデル。くわえればそれは、1,000万円超が当たり前だったこれまでの各AMG車にたいし、600万円台なかばという「価格もニュース」な1台でもある。
V8ユニットやV12ユニットとの場合と同様に、AMGの哲学とされる「ワンマン ワンエンジン」の手法で組み立てがおこなわれる冒頭紹介の強心臓は、すでに「A 250 シュポルト」に搭載されてきたものをベースに専用のチューニングが施された2リッターの4気筒ユニット。
ボア×ストローク値は同様であるものの、クランクケースは新設計。さらに、鍛造ピストンやクランクシャフトの採用などで強度を増した上で圧縮比を9.8から8.6へと落とし、逆に最大過給圧は1.8barまで高めるなどの方法によって最高360psという出力と450Nmという最大トルクを獲得している。
トランスミッションは“AMGスピードシフトDCT”と称する7段のDCTのみ。そもそも、AMGは古くから“2ペダル トランスミッション”を積極採用してきたブランドだが、このクラスのモデルでもMTの用意がされないという事実に、いまや時代は「スポーツモデルだからこそ2ペダル」という段階に踏み入れていることを実感させられる。
当然ながら、その動力性能は目覚しいデータが発表されている。
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AMG作品らしい排気サウンド
“カタパルト発進”を可能とする4WDシステムの働きも借りて、0-100km/h加速タイムはわずかに4.6秒。最高速も、リミッターが作動した時点で250km/hというから、その俊足ぶりはまさに「スーパースポーツカーのレベル」と表現しても過言ではないもの。
一方で、そのエクステリアは意外(?)にも控えめだ。
ただし、それでもインテーク部分が強調されたフロントビューや専用グリル、サイドスカートやリアのエアアウトレットなどから、見る人が見ればこれがベースモデルとは一線を画すハイパフォーマンス バージョンであることはすぐに見破れるはず。それでもちょっと物足りない、というユーザーには、フロントのスポイラーリップやサイドスカート、リアディフューザーなどをカーボンファイバー素材で仕上げた「AMGカーボンパッケージ」をチョイスして個性を強調するという手を選ぶこともできる。
いずれにしても、従来型にたいしてより長く、より低くというプロポーションの大胆なチェンジをおこなった今度のAクラスは、そのダイナミックなスタイリングから「まずは見た目で選んでもらえる」という可能性が大いに高くなったモデルであることはまちがいない。そして、そんな新型Aクラスを素材に、さらに「キラリと光るドレスアップ」をやってのけたのが、このAMGバージョンのエクステリアデザインという印象だ。
シートやダッシュボードなど各部に赤い“挿し色”がくわえられ、シフトセレクターやメーターにもAMG専用の意匠が取り入れられていることを確認しつつ、自慢のエンジンに火をいれる。
この段階で驚かされるのは、派手な排気のサウンドだ。
得意とするV8エンジンが発する迫力のサウンドを筆頭に、“音の演出”には何ともウルサイのがAMGの作品のひとつの特徴。そんな伝統は、初の4気筒エンジンの持ち主にもしっかり受け継がれたということだ。
ただし、アクセルペダルを踏み込むたびにテールパイプから吐き出されるそのサウンドは、ひとによっては「演出過多」と判断を下されそうな類のものであるのもまた確か。低周波ビートの効いたV8サウンドとはことなり、マフラーのみでつくり出されたようにも感じられる高音成分が強調されたこの音色は、好みがわかれそうでもある。
いっぽう、誰しもがまちがいなく納得するにちがいないのは、やはりその絶対的な速さだろう。
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ダイレクト感たっぷりの操作性
じつは、1リッターあたり180psを発するというハイチューン エンジンながら、2,000rpmを割り込んだ状態でもしっ かり太いトルクを発揮してくれるので、街乗りシーンでの乗りやすさも文句ナシ。が、本領を発揮するのはやはり3,000rpm付近を超えてからのゾーン。まさに、シートバックに背中が押し付けられるような加速感がつづき、その先は「6,200rpmのレッドラインまで一瞬にしてパワフルにまわりきる」という印象だ。
ところで、今回テストドライブをおこなったモデルは、専用チューニングが施された標準の仕様にたいして、さらにハードなスプリング/ダンパーからなる“AMGパフォーマンスサスペンション”をオプション装着していた。それもあり、そのフットワークのテイストは相当に“硬派”なもの。仮にそのままサーキットに乗り入れたとしても、そんなシチュエーションをさりげなく受け入れてくれそうに思えた。
路面とのコンタクト感は高く、ステアリング操作に対する応答もダイレクト感がたっぷり。このあたりは、なるほどいかにもスポーティモデルにふさわしいテイストと言ってよい。
ブレーキも、ペダルタッチや効きそのものが満足のゆく仕上がり。18インチホイールの隙間から赤いキャリパーを覗かせる専用の強化システムは、決して“見掛け倒し”などではないということだ。
ただし、ロール剛性が高く、ストローク感にも欠けるサスペンションの仕上がりは、一般公道上では「少々かた過ぎ」と思えるシーンが多かった。とくに、フロント側のかたさゆえかウエット路面では早いタイミングからアンダーステア傾向が強く、終始前輪のグリップ力の限界を注視する必要に迫られて、ハンドリングの自在度に今ひとつ欠けて感じられる場面も少なくなかった。
一般路主体でもちいるのであれば、標準の“AMGスポーツサスペンション”をチョイスした方が好適だろう。それは、このモデルが不得手とする直接的な突き上げ感など、日常シーンでの快適性面でも有利に働くはずだ。
昨今、メルセデス・ベンツの販売台数が大きく伸びている主因は、世界的にも“コンパクト メルセデス”と呼ばれるAクラスを代表とした各モデルの大幅な伸長にあるという。
それと同様の現象が、Aクラス、CLAクラス、そしてGLAクラスへの設定とつづいた「4気筒エンジンのAMG」にも波及する可能性は高そうだ。
Mercedes-Benz A 45 AMG 4MATIC|メルセデス・ベンツ A 45 AMG 4マティック
ボディサイズ│全長 4,355 × 全幅 1,780 × 全高1,420 mm
ホイールベース│2,700 mm
トレッド前/後│1,555 / 1,560 mm
車両重量|1,550 kg
エンジン│1,991cc 直列4気筒 DOHC 直噴ターボ
圧縮比│8.6:1
ボア×ストローク│83.0 × 92.0 mm
最高出力│265 kW(360 ps)/6,000 rpm
最大トルク│450 Nm(45.9 kgm)/2,250-5,000 rpm
トランスミッション│7段オートマチック(7G-DCT)
駆動方式│4WD
ブレーキ│ベンチレーテッドディスク
トランク容量|341-1,157 リットル
最小回転半径│5.1 メートル
燃費(JC08モード)|13.1km/ℓ
価格│658万2,000円
メルセデスコール
0120-190-610(9:30-12:00、13:00-17:30、年中無休、※会社の定める休日を除く)