あたらしいX5を国内で試乗|BMW
BMW X5|ビー・エム・ダブリュー X5
フルモデルチェンジした新型X5を国内で試乗
スポーツ性能を重視して後輪駆動や縦置き直列6気筒にこだわりつづけたBMWが、スポーツ アクティビティ ビークル(SAV)として「X5」を登場させたのは1999年。以降、X5をベースにクーペスタイルをまとった「X6」やよりコンパクトな「X3」「X1」、さらにパワフルな「X5 M」や「X6 M」とSUVモデルを拡充してきた。そんなBMWのSUVの元祖ともいえるX5も、2013年についに3代目となった。海外でも試乗したことがある九島辰也氏が、あらためて日本で試乗した。
Text by KUSHIMA Tatasuya
Photographs by ARAKAWA Masayuki
最後まで売れつづけた先代
「3シリーズ」に代表されるBMWだが、イメージとはちがいXシリーズの販売台数は多い。いまや全世界で販売されるBMWのおよそ1/3がそれにあたるというから驚かされる。
その先駆者となったのが今回モデルチェンジしたX5だ。1999年にリリースされた初代、2007年に進化した二代目ともビッグヒットとなった。昨年は新型がスパイフォトされても販売台数をのばしたそうだ──。
その新型だが、今回の国内試乗会でステアリングを握るのは2度目となる。昨年9月にバンクーバーでおこなわれた国際試乗会が最初だ。
そのときの印象はカナダの大自然のなかを走りまわるワイルドなものだった。もちろん、ドライブフィールや各種デバイスは精緻にコントロールされるが、走りはダイナミック。とくにV8モデルのドーンと加速するさまは迫力満点だったのを覚えている。
では、日本ではどうか。
今回のテストドライブに用意されたのは3リッター直6のディーゼルエンジンのみ。海外では30dだが、日本仕様は「xDrive35d」と呼ばれるものだ。
最高出力は258psで最大トルクは560Nmを発揮する。トルクカーブを見ればわかるが、最大トルクを1,500-3,000回転のあいだでフラットに提供するのが特徴だ。時速80キロは1,200-1,300回転で生み出す。ちなみに、従来型は245psの540Nm。およそ5パーセント分のパワーアップとなる。
BMW X5|ビー・エム・ダブリュー X5
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X5の特性を見極めたセッティング
そのパフォーマンスはというと、本来もつ、こいつのキャラクターにピッタリ合うとおもわれた。というのも、V8ほど派手さはなく、スムーズにかつときに力強さを感じさせるからだ。BMWが提供するディーゼルがスムーズという話はもう耳にタコだろうが、やはり語らずにいられない。というのも、新型はより遮音性が高まったのか、信号待ちでのガラガラ音もまったくしなかった。しかも、走り出してしばらくすると、アイドリングストップ機構が完全にそれを消去する。完璧だ。持論だが、ディーゼルエンジンこそ、アイドリングストップの恩恵を受けるユニットにほかならないとおもう。
さらに吹け上がりもそう。回転計のメーターは6,000回転までしかないが、フィーリングはどこまでもまわりそうなほど軽快で気持ちがいい。友人にディーゼルであることを言わないでステアリングを預ければ、最後まで気づかれないかもしれない。
このほかではパワステの設定が個性的に感じられた。言ってしまえば、BMWとしては重めとなる。じつは今回の試乗会はBMWのフルラインナップ用意されていたため、直後に「4シリーズ」に乗り換えた。するとあきらかにそちらの方が切りはじめからスッと軽かったのだ。
もちろん、この辺はモデルごとのセッティングによるとかんがえていい。車両重量2.2トンあるX5のパワステを軽くするのはリスクが生じる。4シリーズあたりとおなじにしてしまうと、クルマの挙動がクイック過ぎるはずだ。想像するに、それだとX5のリアシートに座ると酔ってしまうだろう。もっといえば、このクルマはサードシートも隠れている。身長1.5メートルまでのテンポラリーなシートサイズだが、そこでの乗り心地までをかんがえれば、“BMWらしさ”も、ほどほどがいいのかも知れない。
今回トランスミッションが8段になったのもおおきなニュースである。しかも、あまりにもナチュラルだったため言及することを忘れてしまう仕上がりだ。当然、急加速が必要なときは任意にシフト操作をする必要があるが、それ以外はトントントンとATモードでシフトアップがおこなわれても問題ない。それどころか、これまで以上の燃費を期待できるのだからうれしい限りだ。カタログのJC08モードは13.8km/ℓ。素直に期待したいところである。
BMW X5|ビー・エム・ダブリュー X5
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理想のプロポーションをキープ
そんな新型のエクステリアデザインは従来よりも主張が強くなった。おおきめのキドニーグリルとヘッドライトが存在感を発揮する。言ってしまえば、“新世代顔”だ。そして、このグリルを従来より起こすことで、ボンネットを長く見せる。全長も少し伸ばすことで、それを強調した。全高も低く抑え込んでいる。
だが、全体的なイメージは変えないというのが今回のコンセプト。X5は人気モデルだけに大きな変革は必要ないという結論だ。あらたな試みは「X6」に任せればいいといったところだろう。サイズがほぼほぼ従来型と変わらないのもそんな理由。エンジニアリング的に見ても、X5のディメンションはこのカテゴリーの理想型となるらしい。
新型X5には最新のBMWテクノロジーが搭載される。ナイトビジョンやパーキングアシスト、カメラシステム、ヘッドアップディスプレイ云々といったものだ。
カタログを読みはじめるとそのひとつひとつの技術力の高さがうかがえる。しかもどれもアクティブ セーフティ。まずはドライバーが安全にたのしんで走れるBMWらしさをかんじる。なるほど、お見事!である。
BMW X5 xDrive35d|ビー・エム・ダブリュー X5 xDrive35d
ボディサイズ|全長 4,910 × 全幅 1,940 × 全高 1,760 mm
ホイールベース|2,935 mm
トレッド 前/後|
(SE、標準)1,645 / 1,650 mm
(xLine)1,640 / 1,645 mm
(M Sport)1,660 / 1,700 mm
トランク容量|650-1,870 リットル(サードシート装着時は210-575リットル)
重量|
(SE、標準)2,175 kg
(xLine)2,200 kg
(M Sport)2,210 kg
エンジン|2,992 cc 直列6気筒 DOHC コモンレール直噴ターボ ディーゼル
最高出力| 190 kW(258 ps)/ 4,000 rpm
最大トルク|560 Nm / 1,500-3,000 rpm
圧縮比|16.5
トランスミッション|8段オートマチック
ブレーキ|ベンチレーテッドディスク
サスペンション形式(前)|ダブルウィッシュボーン式コイルスプリング
サスペンション形式(後)|
(SE、標準、xLine)インテグラル アーム式コイルスプリング
(M Sport)インテグラル アーム式電子制御エアスプリング
駆動方式|4WD
タイヤ|255/50R19
最小回転半径|5.9 m
燃費(JC08モード)|13.8 km/ℓ
価格|(SE)792万円 (標準)821万円 (xLine)864万円 (M Sport)880万円