フルモデルチェンジした「Sクラス」の実力(前編)|Mercedes-Benz
Mercedes-Benz S 400 Hybrid|メルセデス・ベンツ S 400 ハイブリッド
Mercedes-Benz S 550 long|メルセデス・ベンツ S 550 ロング
現時点における最高の安全性と環境性能を装備
フルモデルチェンジした「Sクラス」の実力(前編)
「現状でできうる最高の技術をすべて採用し尽くした」とメルセデス・ベンツが謳う、新型フラッグシップセダン「Sクラス」。8年ぶりのフルモデルチェンジで、新時代のプレステージカーはどのような進化を遂げ、また生まれ変わったのか。日本上陸まもない「S400ハイブリッド」「S550 ロング」の2モデルを櫻井健一氏が試乗した。今回はその前編。
Text by SAKURAI KenichiPhorographs by TSUKAHARA Takaaki
「最善か無か」を体現したモデル
ここで改めて言うまでもなく、「Sクラス」は、メルセデス・ベンツのフラッグシップモデルであると同時に、これまでつねに世界の高級車の代名詞的存在であった。これは1972年の初代モデル登場以来、21世紀のいまになっても変わっていない。それどころか、安全性や環境性能、そしてパフォーマンスや製品クオリティにおいても、“自動車”そのものをリードする存在でありつづける世界最高峰の量産乗用車だ。
Sクラスの上を行くクルマはもちろん存在するが、それはごく一部の富裕層向けのための、極めて限られたモデル。金額さえクリアできれば、誰もがディーラーで、ある意味気軽に購入可能なクルマのトップレンジに位置するのが、このSクラスというモデルである。
日本では、既報のように8年ぶりとなるフルモデルチェンジした6代目を、8月に発表。11月からデリバリーを開始する。ラインナップと価格(税込)は、エントリーモデルから順に、「S400ハイブリッド(1,090万円)」「S400ハイブリッド エクスクルーシブ(1,270万円)」「S550 ロング(1,545万円)」 、そしてメルセデスのスポーティブランドである、AMGの手になる「S63 AMGロング(2,340万円)」と「S63 AMG 4マチックロング(2,340万円)」という5バリエーション展開。
AMGのトップレンジに位置するV12ツインターボを搭載した「S65 AMG」もまもなく発表予定で、東京モーターショーがその記念すべきワールドプレミアの会場となる。
日本仕様の概要は、発表時のレポートに明るいので割愛するが、メルセデスが開発した安全装備や、環境への対応、そしてプレステージカーとして求められる内外装のクオリティや、走りの実力など、どれをとってもメルセデス・ベンツがいま、市販車に装備可能な技術を惜しみなく投入。
フラッグシップモデルとして「現状でできうる最高の技術をすべて採用し尽くした」というのが、このSクラスである。まさに、メルセデス・ベンツの企業哲学である「最善か無か」を体現したモデルなのだ。
Mercedes-Benz S 400 Hybrid|メルセデス・ベンツ S 400 ハイブリッド
Mercedes-Benz S 550 long|メルセデス・ベンツ S 550 ロング
現時点における最高の安全性と環境性能を装備
フルモデルチェンジした「Sクラス」の実力(前編) (2)
手加減無用のハイテク満載プレステージカー
そうSクラスはつねにトップでありつづけなくてはならない。近年ライバルといわれるBMWの「7シリーズ」やアウディの「A8」も、Sクラスの牙城を崩そうと本気でチャレンジしてきているが、メルセデス・ベンツとてそう易々とそのポジションを明け渡すことはできないのだ。
全世界的な販売でいえば、総量でメルセデス・ベンツはBMWの後塵を拝し、新興国の代名詞である中国では、小型車の好調に支えられ、アウディがトップブランドになっている。量なのか、質なのかの議論はあるだろうが、イメージも大切な高級車ブランド場合は、トップであることは重要だ。スーパーコンピューターの世界同様、2位では駄目なのだ。そうした背景からも、フラッグシップとしてのSクラスは、絶対に失敗が許されないモデルなのである。
あくまでも想像の範囲を超えるものではないが、メルセデス・ベンツが置かれた現状をみれば、このSクラスにしても、今後フルモデルチェンジを控えている「Cクラス」にしても、乗る前からできはまちがいないとおもえてしまう。そう、絶対に負けられない勝負に挑むためにはどうしたらよいのか。考えれば誰でもすぐにわかることだからだ。
いささか前置きが長くなってしまったが、6代目Sクラスが、なぜ、安全面でも環境面でも、そして快適性でも動力性能でも、まるで技術のデパートよろしく手加減無用のハイテク満載プレステージカーになったのか、理由はおそらくそのあたりにあるはずだ。
実車は、はじめて見た誰もが「立派なメルセデス・ベンツ」だと感想を述べるであろう、実に堂々とした佇まいだ。全長5,250×全幅1,900×全高1,495mmという体躯は伊達ではない。5メートル越えの高級車がもつオーラ全開である。
大型のグリルを前面に置いた、「メルセデス・ベンツ」の顔は、威風堂々という言葉がやはりふさわしい。
ヘッドライトはフルLED化され、Sクラスは世界で初めて電球を1個も使用しないクルマにもなっている。使用されるLEDの数は、大小合わせて500個にものぼるという。もちろん、省電力効果を高めるためだ。空力特性を最大限に考慮した、厚みはあるが流れるようなボディラインは、ドアやボンネットのチリ(隙間)なども配慮され、文字通り隙がない。
Mercedes-Benz S 400 Hybrid|メルセデス・ベンツ S 400 ハイブリッド
Mercedes-Benz S 550 long|メルセデス・ベンツ S 550 ロング
現時点における最高の安全性と環境性能を装備
フルモデルチェンジした「Sクラス」の実力(前編) (3)
ファーストクラスの快適性を後席にも
重厚なドアを開けて運転席を見まわすと、高級車とはかくあるべき、といいたくなるインテリアが広がる。これまでのモデルであれば、どうしても既存車からの流用パーツが目にとまるものだったが、そうした印象は皆無だ。もちろん、詳細に探せば、流用パーツは発見できるだろうが、すべてがSクラスのためにしつらえられたような感覚に終始する。
高級自動車ブランドであっても、他モデルのパーツを流用するのが当たり前のいま、Sクラスには、「コストダウンのため」という言い訳は見受けられない。もちろん、しかるべき箇所でコストを削減する、製造会社としての当然の努力はあるはずだが、それをにじませないのには感心するしかない。
メーターナセルに備わる、12.3インチの大型ワイド液晶画面を2面横並びに繋げたパネルデザインは斬新で、そこにはスピードメーターやタコメーター以外に、カーナビの画面やオーディオ、エアコンといった車両設定画面などが表示される。視認性も良く、画像による擬似的なメーター表示から想像できる違和感はほとんどない。各種コントロールは、この画面を見ながら、お馴染みのダイヤル式コントローラーで直感的におこなえる。
しかし、こうしたダイヤル式の操作が苦手な向きには、集中コントロール系統とは別に個別のショートカットスイッチも用意されているので、操作に迷う心配はないだろう。実際にコクピットドリルを受けないまま乗り込んでも、メルセデスのオーナーであれば、運転に必要な操作は簡単におこなうことができるはずだ。
シートは質感が高く、まさにラグジュリーのひとこと。このシートひとつとっても、Sクラスのレベルが理解できる。ほぼどんな体型のドライバーであっても、適切なドライビングポジションに調整可能だ。このシートには、14個のエアクッションを内蔵したマッサージ機能も標準装備される。
マッサージには、6つのパターンが設定されており、うち2つのモードは、一部分が熱くなる世界初のホットストーン機構を持つ。
こうしてドライバー目線でシートの機能に感心するいっぽう、Sクラスの使われ方として、多くの需要があるショーファードリブンカーとして見た場合は、43.5度までリクライニング可能なエグゼクティブシートを助手席側後席に装備するショーファーパッケージを用意。
レッグレストとフットレストの組み合わせで、まさにファーストクラスの快適性を、後席のVIPにもたらしてくれる。
Mercedes-Benz S 400 Hybrid|メルセデス・ベンツ S 400 ハイブリッド
ボディサイズ|全長 5,116 × 全幅 1,899 × 全高 1,493 mm
ホイールベース|3,035 mm
トレッド 前/後|1,624 / 1,637 mm
最低地上高|124 mm
トランク容量(VDA値)|510 リットル
重量|- kg
エンジン|3,497 cc V型6気筒 直噴DOHC + 電気モーター
最高出力| 225 kW(306 ps)/ 6,500 rpm
最大トルク|370 Nm(37.7 kgm)/ 3,500-5,250 rpm
モーター出力|20 kW(27 ps)
モータートルク|250 Nm(25.5 kgm)
トランスミッション|7段オートマチック
駆動方式|FR
タイヤ 前/後|245/50R18
0-100km/h加速|6.8 秒(本国値)
燃費(NEDC値)|6.3 L/100km(≒15.9km/L)(本国値)
ハンドル位置|右
価格|1,090 万円(エクスクルーシブは1,270 万円)
Mercedes-Benz S 550 long|メルセデス・ベンツ S 550 ロング
ボディサイズ|全長 5,250 × 全幅 1,900 × 全高 1,495 mm
<全長 5,280 × 全幅 1,915 × 全高 1,495 mm>
ホイールベース|3,165 mm
トレッド 前/後|1,625 / 1,635 mm<1,630 / 1,645 mm>
最低地上高|130 mm
トランク容量(VDA値)|530 リットル
重量|2,180 kg<2,190 kg>
エンジン|4,663 cc V型8気筒 直噴DOHC ツインターボチャージャー付き
最高出力| 335 kW(455 ps)/ 5,250-5,500 rpm
最大トルク|700 Nm(71.3 kgm)/ 1,800-3,500 rpm
トランスミッション|7段オートマチック
駆動方式|FR
タイヤ 前/後|245/50R18
0-100km/h加速|4.8 秒(本国値)
燃費(NEDC値)|8.6 L/100km(≒11.6km/L)(本国値)
ハンドル位置|左 / 右
価格|1,545 万円
※<>内はAMGスポーツパッケージ装着時の値
Mercedes-Benz S 63 AMG long|メルセデス・ベンツ S 63 AMG ロング
ボディサイズ|全長 5,287 × 全幅 1,915 × 全高 1,499 mm
ホイールベース|3,165 mm
トレッド 前/後|1,630 / 1,644 mm
最低地上高|141 mm
トランク容量(VDA値)|510 リットル
重量|- kg
エンジン|5,461 cc V型8気筒 直噴DOHC ツインターボチャージャー付き
最高出力| 430 kW(585 ps)/ 5,500 rpm
最大トルク|900 Nm(91.7 kgm)/ 2,250-3,750 rpm
トランスミッション|7段オートマチック
駆動方式|FR
タイヤ 前/後|255/45R19 / 285/40R19
0-100km/h加速|4.4 秒(本国値)
燃費(NEDC値)|10.1 L/100km(≒9.9km/L)(本国値)
ハンドル位置|右
価格|2,340 万円
Mercedes-Benz S 63 AMG 4MATIC long|メルセデス・ベンツ S 63 AMG 4マチック ロング
ボディサイズ|全長 5,287 × 全幅 1,915 × 全高 1,499 mm
ホイールベース|3,165 mm
トレッド 前/後|1,643 / 1,644 mm
最低地上高|135 mm
トランク容量(VDA値)|510 リットル
重量|- kg
エンジン|5,461 cc V型8気筒 直噴DOHC ツインターボチャージャー付き
最高出力| 430 kW(585 ps)/ 5,500 rpm
最大トルク|900 Nm(91.7 kgm)/ 2,250-3,750 rpm
トランスミッション|7段オートマチック
駆動方式|4WD
タイヤ 前/後|255/45R19 / 285/40R19
0-100km/h加速|4.0 秒(本国値)
燃費(NEDC値)|10.3 L/100km(≒9.7km/L)(本国値)
ハンドル位置|左
価格|2,340 万円
メルセデスコール
0120-190-610