ミニ ジョン・クーパー・ワークス クロスオーバーに試乗|MINI
MINI John Cooper Works Crossover|ミニ ジョン・クーパー・ワークス クロスオーバー
ミニファミリーにくわわった、あらたなスペシャルモデル
ミニ ジョン・クーパー・ワークス クロスオーバーに試乗
これまで、ジョン・クーパー・ワークスの設定がなかった、5ドア、SUV仕立てのミニ、「ミニ クロスオーバー」にも、ついにジョン・クーパー・ワークスの名を冠するモデルが登場した。もっともスポーティなミニ クロスオーバーとなるのはもちろんだが、早速試乗した渡辺敏史氏は、これまでの、ジョン・クーパー・ワークスとはまたちがった性格だという。はたして、その乗り味とは?
Text by WATANABE Toshifumi
満を持して登場のワケ
いまや6つのバリエーションを持つ大所帯となったミニブランド。その各々には「ジョン・クーパー・ワークス」(以下JCW)というスポーツモデルが設定されている。
ジョン・クーパーは往年のF1やインディに参戦するレーシングカーを手掛けたイギリスの名エンジニアで、チューニングを施したオリジナルミニをラリーフィールドでの驚異的な活躍へと導いた人物としても知られている。
多くの人が知る「ミニ クーパー」というグレード名そのものが彼の名からとられたものといえば、ミニにとって欠くことのできないキーパーソンであることがおわかりだろう。
そのリスペクトを名前に込めて設定されたJCWシリーズは、ベースモデルである「クーパーS」からさらにパワーが盛られたエンジンと、固められたサスペンションや、強化されたブレーキをもって、ミニ特有のゴーカートフィールを高めながらサーキット走行をも楽しくまかなえるモデルとなっている。
そんなコンセプトゆえ、6つのボディバリエーションを並べるミニの中で唯一、JCWの設定がなかったのが、マルチパーパス性を高めた「ミニ クロスオーバー」だった。
このたび、満を持してクロスオーバーにJCWが設定された背景のひとつは、あたらしいパワー&ドライブトレインの開発にあわせたところもあるだろう。
搭載されるエンジンは可変バルブ機構、バルブトロニック化された1.6リッター直噴ツインスクロールターボ。
ベースモデルのミニは、すでにすべてのエンジンがバルブトロニック化されているが、JCWモデルとしては、じつはこのクロスオーバーが初採用となる。
MINI John Cooper Works Crossover|ミニ ジョン・クーパー・ワークス クロスオーバー
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ミニ ジョン・クーパー・ワークス クロスオーバーに試乗 (2)
ジョンクーパーワークスもオートマチック化
もちろんベースモデルに搭載されるスタート&ストップや減速エネルギー回生システムなどの省燃費技術は継承しつつも、そのパワーは218psと強力なもの。トルクはスポーツモードでの最大時で300Nmを発揮する。このエンジンでミニというには大柄なボディを0-100km/h加速で7秒フラット、最高速度で225km/hまで引っ張り上げるというから、数字的には充分にホットハッチであることを証明しているといえるだろう。
いっぽうでミニ クロスオーバーJCWのCO2排出量はEU計測値で172g/kmと、車格やパフォーマンスを考えれば立派なところにあるといえる。
くわえてのトピックは、あたらしいエンジンの採用にあわせて、JCWモデルとしてははじめてオートマチックトランスミッションが用意されたことだ。ミニ最速のブランドもこれによりイージードライブが可能となった。
ちなみにこの新型エンジン、ビー・エム・ダブリューによるとクロスオーバーJCWの発売が予定される来春には、他のJCWモデルにも搭載され、すべてのJCWモデルで6段MTと6段ATの選択が可能となる見込みだという。
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洗練された乗り心地
ちなみにクロスオーバーJCWにはFFモデルの設定はなく、ベースモデルの「オール4」システムを受け継ぐ4WD専用モデルとして開発された。油圧式の電制デフをもちいた仕組みや、その制御はベースモデルと変わらず、通常は50:50のフルタイムで、スリップ率に応じて前後輪にほぼ100パーセントの駆動力が配分される。
前ストラット、後マルチリンクの足まわりもベースモデルと同様ながらサスペンションやブレーキのセットアップはもちろん専用で、車高はベースモデル比で10mm低い設定。それでも最低地上高は137mmが確保されており、砂利道や雪道などでも不自由のないロードクリアランスが確保出来ているところがJCWらしからぬところといえよう。
そんなミニ JCW クロスオーバー、実際に乗ってみると驚かされるのは乗り心地の洗練ぶりだ。常速域でも目立った硬さは感じられず、大きな凹凸や目地段差での突き上げも充分許容できるまるさを備えているうえ、速度域が上がると車体の上下動はしっかりと抑え込まれ……と、そのしなやかさやフラット感はベースモデルよりむしろ優れているとおもわせるほどだ。
常速域でも目立った硬さは感じられず、大きな凹凸や目地段差での突き上げも充分許容できるまるさを備えているうえ、速度域が上がると車体の上下動はしっかりと抑え込まれ……と、そのしなやかさやフラット感はベースモデルよりむしろ優れているとおもわせるほどだ。
装着するタイヤは2クラス上のスポーツモデルが履いていても不自然ではないほどの大径で重量もかさむとあらば、足を固めるほどにバタツキなどが出ても当然という感じだが、そういった不快要素がJCWモデルにして、割り切られずしっかり払拭できているあたりは見事だとおもう。
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JCWブランドのあらたな魅力
少なくとも他のJCWよりはコンフォートには考慮されている、そんなシャシーのキャラクターはコーナリングのマナーにもみてとれた。
そのロール感は他のJCWモデルにくらべると明確に大きめだが、そのぶん乗員への横Gの負担は軽減されており、曲がりにおいても上質感はしっかり高められている。
若干和らいだゴーカートフィールをカバーするのはオンロードでも意外なほどアクティブにはたらく4輪駆動システムで、後輪側にしっかりと駆動をかけながらクルリと曲がっていくサマは、FFの特性を利して曲がる他のJCWモデルとは一線を画したものだった。
確かに痛快感は他のモデルにかなわない。が、充分にスポーティでありながら、かつ上質感においては他のJCWモデルを寄せつけない。クロスオーバーという、多様性が求められる元ネタがあってこそできたこの味付けには、JCWというブランドをスポーツに留まらせず、スペシャリティ的な方向へも膨らませていこうという思惑もみてとれる。
ファミリー向けのファーストカーとしても充分供せる柔軟性や、ユーザーを選ばない乗りやすさは、JCWブランドへのあらたなエントリーを誘引するに充分な説得力をもっていた。
MINI John Cooper Works Crossover|
ミニ ジョン・クーパー・ワークス クロスオーバー
ボディサイズ|全長4,133×全高1,789×全幅1,549mm
ホイールベース|2,596mm
トレッド 前/後|1,527/1,554mm
重量|1,430kg(MTモデルは1,405kg)
エンジン|1,598cc直列4気筒ターボ
最高出力|160kW(218ps)/6,000rpm
最大トルク|280Nm/1,900-5,000rpm(オーバーブースト時 300Nm/2,100-4,500rpm)
0-100km/h加速|7.0秒
最高速度|225km/h(ATモデルは223km/h)
タイヤサイズ|225/45 R18
燃費|7.4ℓ/100km
CO2排出量|172g/km