アストンマーティン ヴァルカン、ついにその姿を現す|Aston Martin
Aston Martin Vulcan|アストンマーティン ヴァルカン
ジェントルマンのためのサーキット専用マシン
アストンマーティン ヴァルカン、ついにその姿を現す
車名だけを先行公開し、謎に包まれたスポーツモデルとして注目を集めていたアストンマーティンのニューモデルが、本日ついに公開された。製作台数は、わずか24台。「ヴァルカン(Vulcan)」とは一体何なのか。武田公実氏がレポートする。
Text by TAKEDA Hiromi
まったくあたらしいスタイリング
今年3月に開幕するジュネーブモーターショー2015。アストンマーティンのブースは、例年以上にモータースポーツのイメージが高いものとなることだろう。
先日オフィシャルフォトが公開された「ヴァンテージ」系をベースとするハードコア版ロードゴーイングカー「ヴァンテージGT3」とともに、サーキット走行専用モデル「ヴァルカン」の出品も決定。そして本日、その写真と概要、そして意欲的なトレーニングプログラムに関する情報がリリースされたのだ。
まず、もっとも注目すべきシャシー/ボディは、総カーボンファイバー製。ボディデザインは、今後のアストンマーティン量産モデルにも影響を与えることになるであろう、まったくあたらしいスタイリングを見せている。
ただしシャシーについては、これまでアストンマーティンが世界各国のGT選手権で獲得してきたノウハウとコネクションを最大限に活用。カーボンファイバーのスペシャリスト「マルチマティック」社の手によるモノコックおよびボディ、インテグラル リミテッド スリップ ディファレンシャル、マグネシウム製トルクチューブ&カーボンファイバー製プロペラシャフト、ブレンボ社製レーシングキャリパー、そしてカーボンセラミック レーシング ディスクブレーキ(フロントφ380mm、リアφ360mm)などを特徴としている。
また、モータースポーツの影響が色濃いプッシュロッド サスペンションには、アンチダイブ ジオメトリーが採用されるとともに、マルチマティック製ダイナミック サスペンション スプールバルブ(DSSV)可変ダンパー、フロント/リア アンチロールバー、ドライバーが任意で調整することのできるABSシステム、可変トラクション コントロールが組み合わされるという。
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真のスポーツカー愛好家のためのスポーツカー
いっぽう、フロントに搭載されるパワーユニットについては「7.0リッターV12ガソリンエンジン」とのみ公表されている。つまり「ONE-77」の7.3リッターより300ccほど小さいことになるが、アストンマーティン レーシング部門のチューニングにより、ONE-77の760psを少なくとも40ps上回る、800ps以上の最高出力を発生するという。
その結果、ヴァルカンのパワーウェイトレシオは、FIA世界耐久選手権(WEC)仕様のGTEマシンを凌駕するレベルに達しているとのこと。そしてこの強大なパワーは、リアにミドマウントされるXtrac製6段シーケンシャルシフト ギアボックスを介して、345/30x19リアホイール+ミシュラン レーシングタイヤに伝達されることになっているというのだ。
アストンマーティン社のアンディ・パーマーCEOは、ヴァルカンについて以下のように語っている。「アストンマーティン ヴァルカンは、その出自からもわかるとおり、類まれでスリリングなスーパースポーツカーです。ビスポーク ドライビング エクスペリエンスの提供を目指してデザイン、エンジニアリングされたヴァルカンは、アストンマーティンのヘリテージとも合致します。ドライバーの技量やサーキットの特性に合わせて、パワーとハンドリングをきめ細かくチューニングすることができます。
ヴァルカンは、真のスポーツカー愛好家のためのスポーツカーだと確信しています。独自性の高いオーナーシップ プログラムがその魅力をいっそう高めます。ウルトラハイ ラグジュアリー スーパーカークラスに、まったくあたらしい基準を打ち立てたと言ってもよいでしょう」
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ヴァルカンの製作台数は、わずか24台
ヴァルカンによるオーナー専用プログラムを指揮するスペシャルプロジェクト、およびモータースポーツ担当ディレクターのデヴィッド・キング氏は、プログラムについて次のように語ったという。「2016年から、世界有数のサーキットで専用サーキット イベントを開催します。その会場でオーナーの皆さまがテクニックを磨き、ヴァルカンのポテンシャルに触れていただきたいと考えています」
このオーナー専用プログラムでは、アストンマーティンとともにル・マン24時間レースのクラス優勝歴もあるレーシングドライバー、ダレン・ターナー選手らが実地指導するほか、ターナー選手が所有するベースパフォーマンス シミュレーターを使用したバーチャル トレーニングの機会も設けられるという、まさしく至れり尽くせりのサービスなのだ。
半世紀を遥かに超える積年のライバル、フェラーリが、“顧客テストドライバー”に「FXX」や「599XX」によるサーキット走行の機会を提供し、そのノウハウを市販スポーツカーに適用する「XXプログラム」を既に大成功させているのはご存じのとおりである。
フェラーリのビジネスモデルは、おそらくアストンマーティンにもインスピレーションを与えたにちがいない。そしてアストンマーティン ヴァルカンと新生プログラムが成功することも、おそらくまちがいいないとおもわれるのである。
現時点で約束されているヴァルカンの製作台数は、わずか24台。すべてFIA(国際自動車連盟)の定めたレース安全規則に準拠している。さらに、アストンマーティンが誇るビスポーク パーソナリゼーションサービス、「Q by Aston Martin」の専門知識が活かされたVIPセールスプログラムのもと、ヴァルカンには無限に近いカラーおよびトリムの選択肢が用意されるという。
パフォーマンスデータおよび技術的スペックなどの詳細は、本年中に予定されるサーキットデビューが近づいた際に、改めて発表されるとのことである。