Chapter 7 ドン ペリニヨン|現在に受け継ぐインスピレーション
LOUNGE / EAT
2015年3月23日

Chapter 7 ドン ペリニヨン|現在に受け継ぐインスピレーション

Dom Pérignon|ドン ペリニヨン

現在に受け継ぐインスピレーション

17世紀末、シャンパーニュ地方では、マルヌ西方の丘に建つオーヴィレール大修道院で盲目の修道士ドン・ピエール・ペリニヨンがセラーマスターを務めていた。彼は、後にシャンパーニュのメソッドとして知られる、アッサンブラージュ(ブレンド)の技術を約47年かけて開発していくことになる。その年の作柄に左右されることなく、良質な発泡酒をつくるため、品種、栽培地区、収穫年を混ぜ合わせるというメソッドだ。当時通常のワイン造りの4倍もの時間をかけてつくられたこの美酒の噂はすぐにフランス王ルイ14世の耳に届き、そのテーブルにも上ることになったと言われている。彼が受けたインスピレーション、飽くなき情熱と研ぎすまされた感性は、今も、ドン ペリニヨンに受け継がれている。

Photo&Cooperation by Kenichi SaitoEdit&Text by Yumiko Akita

最高級シャンパーニュのあるべき姿

卓越した技術と圧倒的な情熱、豊かさをもってつくられているドン ペリニヨンは、まごうことなく当世随一の知名度を誇る。ドン ペリニヨンの初ヴィンテージは1921年。初リリースは1930年代となるが、作柄がよい年の優れた区画の優れたぶどうでつくるそのスタイルは長期熟成を旨としている。7年以上の瓶内熟成ののちにデゴルジュされて出荷されるため(瓶内では澱と触れ合わせて複雑な旨味を出す)、ぶどうの圧倒的な力強さもあって意外にもフレッシュな印象がある。
ヴィンテージによっては、白だけ、ロゼだけの年もある。シェフ・ド・カーブによって選ばれた貴重なヴィンテージは「エノテーク」として12年以上熟成される。

複雑さを増し、完璧なバランスで熟成を待つシャンパーニュが粛々と横たわるのは、約28kmにわたる世界一の地下カーヴの奥まった場所(一部非公開)。この迷路には圧倒されるし、運が良ければ、気圧のバランスで「パンッ」と瓶が破裂する音が聞けるかもしれない。長く熟成させる瓶を保存するスペースは十分にある。

「ドン ペリニヨンのすごさは、王道の真ん中を歩いていて、多くのひとがおいしいと思えるというところにあります。同時に、余韻の深さ、バランスの良さは卓越したものがある。デキャンタして飲めばよりいっそうの複雑さがあらわれます。2000年に比べて99年は酸が強いですね。2000年のほうがポテンシャルを感じます」と語るのはワインジャーナリストの斉藤氏。最高級シャンパーニュのあるべき姿がここにある。

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旅の記憶を呼び覚ます濃密さ

その複雑性はどこからくるのか? 一口飲む、また別の機会に飲む、レストランで、パーティで。いつでもおなじようにフレッシュで、口の中には、凝縮した味わいがうねっている。一度としておなじイメージはなく、あるときは南国のトロピカルな花や果物がぎゅっとつまっているようで、あるときはマラケシュのジャマ・エル・フナの混沌としたスパイシーさが、マダガスカルの黄色や白の花、デリーの空港を一歩出たときの街の空気、パリのギャラリーで炊かれたお香、大地の雰囲気もあり、ほのかにかすめるピート香。とてつもなく長い余韻。はっきりいって、めまぐるしく「濃い」のである。

ほとばしるような官能を感じて

雨が降りしきるなか、モエ・エ・シャンドン社でのデギュスタシオンをあとにし、盲目のドン・ピエール・ペリニヨン修道士がセラーマスターをしていたオーヴィレール大修道院へ向かう。その美しい庭園と配下に広がる景色を俯瞰することは叶わず、ただ感覚を頼りに、ぶどうの秘めたるポテンシャルを引き出すことに没頭し、神に祈りを捧げたドン・ピエール・ペリニヨン修道士。長い歳月をかけておなじ作業を繰り返す日々のなかで、彼は、ワインの味わいにほとばしるような官能を感じ、そこに神の存在を見ていたのではないだろうかと。ふと考えながらシャンパーニュ地方をあとにした。

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Dom Pérignon Vintage 2000ドン ペリニヨン ヴィンテージ 2000
ぶどう品種|シャルドネ、ピノ・ノワール(比率は非公開)
価格|2万1000円(箱入り)

味わいの深み、キメ細かさがあり、クリーミーでつるりとなめらかな飲み心地。フレッシュさがあり、口の中でアニスやドライフルーツ、フレッシュフルーツの香りが駆け巡り、ピートやかすかにスパイスものぞく。フレッシュ、男性的なボリューム感、複雑な風味の多重層が調和している。

取材協力|
Dom Pérignon
http://www.domperignon.com/

サロン・ド・ヴィノフル
Tel. 03-5795-2553

商品問い合わせ|
MHD モエ ヘネシー ディアジオ(ドン ペリニヨン)
Tel. 03-5217-9732

           
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