Chapter 4 ルイ・ロデレール|エレガンスを極めた華やかさと気品
LOUNGE / EAT
2015年3月23日

Chapter 4 ルイ・ロデレール|エレガンスを極めた華やかさと気品

ルイ・ロデレール|Louis Roederer

エレガンスを極めた華やかさと気品

Photo&Cooperation by Kenichi SaitoEdit&Text by Yumiko Akita

ルイ・ロデレールに惹かれる理由

華やかさだけを追求するのは、それほど難しいことではない。しかし、そこに「気品」をくわえるとなると、一朝一夕では無理がある。生まれながらに備わったもの、経験を積み上げるなかで醸し出されるもの、逆に、時が与える試練や変化に耐えきれず、汚れ色褪せてしまうものもあって、生み出すのも維持するのも難しい。これは、ひとに限らずひとがかかわるすべてに共通することなのだ。ここ数年、失われつつある日本人の「品格」について語られることが多いので「品格」については考えさせられることもあるけれど、気品と言われても今イチピンとこない毎日を送っているのも事実で、じつのところよくわからない。だから余計に、「華やかさ」にくわえ「気品」を保っているルイ・ロデレールのシャンパーニュに惹かれてしまうのだ。

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女性の「憧れ」要素がつまったシャンパーニュ

「瓶の美しさもさることながら、品質の高さ、こだわり、洗練……。蔵全体としてそれを維持できるということはさすがだと思います。エレガンスの極みとはこういうことなのでしょう」とはワインジャーナリストの斉藤氏。氏によると「スタンダード・キュヴェのブリュット・プルミエの深みは、あの値段で買えるノン・ヴィンテージのシャンパーニュのなかでは際立っていますね」とのこと。細身よりややふくらみのあるシャンパーニュ・グラスで飲めば、ブリオッシュのような香りが鼻腔をかすめ、キメ細かな泡立ちも見逃せない。

また、飲みごたえのあるブリュット・プルミエとは異なり、優美なやわらかさを追求した最高級キュヴェ、クリスタルは、女性なら誰しも一度飲んだら忘れられない。シャンパーニュに関心のない女性でも「ドン・ペリ」の略称と並んで「クリスタル」の名前は覚えていることが多い。なぜなら女性は、その外見だけでなくはっきりとした味わいの方向性から、女性の「憧れ」要素である、華やかさと、気品が漂う、エレガンスを極めたシャンパーニュだと、直感で理解するからなのだ。

クリスタルの秘密

クリスタルは、ルイ・ロデレールのシャンパーニュを好んだロシア皇帝アレクサンダー二世の特別発注により1876年つくられた。「クオリティが高く独創的なワインとボトルを」というオーダーに応えてできたのがクリスタルボトルだが、一説には、透明で底が平らなのは皇帝を暗殺者から守るため爆薬を仕込まれても気がつくようにとも言われている。ラベルの裏には印字がされ、これが正真正銘のクリスタルであることを透明なボトルを通して確認できる。

以来、クリスタルの品質は向上をつづけ、現行2002年ヴィンテージは評価が高く、シェフ・ド・カーヴ(醸造責任者)のジャン・バティスト・ルカイヨン氏によると「クリスタルは、とくに良質なテロワールの25年以上の樹齢の樹になるぶどうを使うことで、力強さが与えられます。2002年は、糖度と芳香が濃厚な小さな粒のぶどうを収穫できました。ミネラリティ、力強さ、エネルギー、純粋さ、瓶に詰めてからもしっかりとしたスタイルを保っていて、強さとともに何ものをもよせつけない繊細さが生まれました」

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精密な機械式時計のように

1776年創業のルイ・ロデレールは、家族経営をおこなうメゾンのなかにあって、年間300~320万本の生産量(テタンジェ400万本、ボランジェ250万本、ポル・ロジェ150万本)、その35%が国内消費にあてられ、100カ国以上へ輸出するトップクラスの大メゾンである。しかしそのシャンパーニュづくりは、工業主義的ではなく、ルカイヨン氏曰く「精密な機械式時計のよう」である。

20年先を見越してつくられてきた、ブレンド用、門出のリキュールのために熟成、ストックされたさまざまなリザーブワイン。ぶどうの収穫は、ぶどうの粒の成分分析からではなく、かんで味わって最終決定をするという。そして、発酵中は1週間に1回のテイスティングで段階ごとに選別され、発酵後は5カ月かけて試飲、選別、ブレンディングがおこなわれる。ブレンドは、性別、年齢、立場の異なる熟練の6人のテイスティング感覚を取り入れたノンレシピの妙技だ。

そして、果実味豊かで酸味があって力強い理想のぶどうは、できるだけ人的介入をしないでシャンパーニュにする。10年前から土壌の改良に着手し、有機農法で使われる蛾や蝶の産卵抑制剤やビオディナミを取り入れ、現在は5ヘクタールの畑でビオディナミによる栽培がおこなわれているという。

ルイ・ロデレールは、家族経営の大メゾンだが、世界的な視野をもった企業としての顔も忘れてはならない。カリフォルニアのロデレール・エステート、ボルドーの特級シャトー、ポルトガルなどのワイナリーを傘下にし、それぞれの醸造責任者との連携もシャンパーニュづくりに生かされている。また、現代アートへのサポートも行い、2008年よりラベルデザインを新しくしてリリースを開始した。伝統の継承と革新の間になんの矛盾がないことは、以下にご紹介するキュヴェ・プレステージを飲めばわかる。

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デギュスタシオン記録

Brut Rose Vintage 2004 ブリュット・ロゼ・ヴィンテージ2004
ぶどう品種|ピノ・ノワール70%、シャルドネ30%
参考価格|9975円

セニエ方式で良年につくられるロゼ。セラーで澱とともに4年寝かされ、デゴルジュマン(澱抜き)後6カ月おくことで熟成の完成度が高まる。ぶどうの熟度が高いものを使っているため、マロラクティック発酵(風味をまろやかにするための乳酸発酵)はおこなわず、風味で、ドザージュもわずか。花やフレッシュフルーツのうっとりさせられるアロマとトースト香。ドライですっきりした料理や甘くないデザートに合わせたい。

Brut Vintage 2003 ブリュット・ヴィンテージ 2003
ぶどう品種|ピノ・ノワール70%、シャルドネ30%
参考価格|9975円

最初に購入したモンターニュ・ド・ランスの畑からなるピノ・ノワールを主体にした、力強さとストラクチャーのはっきりしたヴィンテージ。4年以上熟成させ、デゴルジュマン後 6カ月おかれて完璧な状態にする。フルーティでドライフルーツのような風味も。美しい酸とミネラル、スパイシーさが特徴的。クリーミーなパスタなどにも。

Cristal Brut Vintage 2002 クリスタル・ブリュット・ヴィンテージ 2002
ぶどう品種|ピノ・ノワール55%、シャルドネ45%
参考価格|2万5200円

もっとも素晴らしい畑のぶどうのみを使用、セラーで平均5年以上熟成させ、デゴルジュマン後8カ月で出荷される。醸造責任者のルカイヨン氏曰く「デゴルジュマン後は3回くらいのタイミングが訪れます。10年はフルーティでその後10~20年はロースティな風味がたち、20年を超えるとシガーの箱を開けたときのような、トリュフが香るような熟成を遂げるでしょう」。シルキーでバランスのとれた味わいと複雑な香り。力強さと繊細さ、純粋さ、エネルギーのハーモニーが見事。

取材協力|
Louis Roederer
http://www.louis-roederer.com
サロン・ド・ヴィノフル
Tel. 03-5795-2553

商品問い合わせ|
エノテカ株式会社
Tel. 03-3280-6258

           
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