海外初試乗、C クラス ステーションワゴン|Mercedes-Benz
Mercedes-Benz C Class Estate|メルセデス・ベンツ C クラス ステーションワゴン
セダンもいいけれど、ワゴンも気になる
海外初試乗、メルセデス・ベンツ C クラス ステーションワゴン
7年ぶりのフルモデルチェンジを果たしたメルセデス・ベンツ「Cクラス」の派生モデルとして、今年5月に登場した「C クラス エステート(日本名:ステーションワゴン)」が、いよいよ走りはじめた。新型Cクラスのキーワード、「Agility(機敏さ)」と「Intelligence(知性)」は、ワゴンモデルにどう活かされたか。自動車ジャーナリストの飯田祐子氏がドイツで試乗した。
Text by IIDA Yuko
セダン以上のフレキシブルさ
日本でプレミアムブランドのワゴンを選ぶ場合、ラゲッジの実用性を求めるだけでなく、ワゴンスタイルを個性として購入の理由に考える方も少なくはないのではないか。都内を走るワゴンモデルのバックスタイルには行動的なイメージを抱くことができて、スポーツカーのアクティブさとはちがう落ち着きがあり、なおかつ腰高なSUVともまたちがう佇まいがある。
7年ぶりに登場した「Cクラス ステーションワゴン」は、そのボディに詰め込まれたテクノロジーとおなじくらい、あたらしいデザイン性が魅力的に映る。サイズ感もいい。ステーションワゴンのボディは先代比で全長が+96mm、全幅が+40mmと拡大されたが、全高はほぼおなじ。
新型ではホイールベースの延長が後席の足元スペースを広げ、さらにワゴンではテールゲートまでフラットに伸びるルーフのおかげで、セダンと比べ頭上まわりのクリアランスがわずかながら拡大した。また最大で1,510リッター(先代比+10リッター)、常時490リッター(+5リッター)に拡大されたラゲッジは、これまでの2分割から40:20:40の3分割可倒シートに変わっている。トノカバーの使い勝手も向上。セダン以上のフレキシブルさは期待通りと言えそうだ。
今回、新型Cクラス ステーションワゴンでフランクフルト空港からデューデスハイムまでの片道250kmを2日間で往復した。アウトバーンで高速を抜け、早々と郊外の街へ、そして青々とした葉をつけたブドウ畑の広がるカントリーサイドやライン川沿いを走った。
バカンスのはじまったドイツで、トレーラーハウスをけん引するクルマたちに混じり、Cクラスのワゴンを走らせていると、いっそうロードトリップ感が増す。日常から離れる行動をともにするなら、セダンよりワゴンのほうがやはり気分が盛り上がる。
Mercedes-Benz C Class Estate|メルセデス・ベンツ C クラス ステーションワゴン
セダンもいいけれど、ワゴンも気になる
海外初試乗、メルセデス・ベンツ C クラス ステーションワゴン (2)
メルセデスの“肝いり”ぶり
7年ぶりにフルモデルチェンジを果たしたCクラスは、先祖となる190/190Eから数えれば5代目となるが、ステーションワゴンについては2代目から導入されているので今回が4代目になる。
新型Cクラスのキーワードは「Agility(機敏さ)」と「Intelligence(知性)」。 ワゴンのボディ構造はセダンを踏襲していて、ボディの後半部分を除けばフロントマスクやエアロを含め、内外装のデザインも装備内容も共通だ。
もちろん、アルミニウムと高張力鋼板などを組み合わせ、メルセデスがあらたに開発した軽量ボディシェルもセダンとおなじ「アルミニウムハイブリッドボディ」を採用。その名のとおりアルミの採用率の高さが秀でている。
先代がわずか数パーセントだったアルミ採用率を約5割にまで高めており、なによりアルミと他のマテリアルを接合するという高度な技術を、この大量生産モデルに取り入れるメルセデスの“肝いり”ぶりには恐れ入るばかりだ。
この軽量かつ高剛性なボディによってハンドリング性能はもちろん、燃費についても最大で30パーセント以上向上するなど、さまざまな面でメリットを生んでいる。また「Sクラス」「Eクラス」の搭載でも注目される“レーダーセーフティパッケージ”を含む「インテリジェントドライブ」をこの新型Cクラスに導入した点も見逃せない。
インテリアのレザーのあしらいや、タッチパッド付COMANDコントローラーの採用など、シンプル&モダンな室内では機能を引き立て、それでいてメルセデスらしい優雅さやCクラスらしいアクティブさも感じられる。
生産から完成車の装備類に至るまでのハイテクぶりが、これまでのCクラス価値基準を大きく引き上げているのは、まちがいない。
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ワゴンであっても静粛性は高い
試乗モデルは「C 200」と「C 250」のアヴァンギャルド、そして「C 250 スポーツライン」だった。C200とC250に搭載される2リッター直4直噴ターボエンジンは同型ながら、チューニングによってC 200が184ps/300Nm、C 250が211ps/350Nmと出力はことなる。
シャシーは3タイプのサスペンションの用意があり、モデルにより搭載タイプがことなるが、なかでも電子制御式のエアスプリングと連速可変ダンパーを採用する「AIRMATICサスペンション」をこのクラスに初採用しているのも特徴。そしてこのシャシーも含めステアリングやエンジン、トランスミッションの制御をする「アジリティセレクト」は4つの走行モードにから選ぶことができ、その万能ぶりを引き立てていた。
ワゴンであっても静粛性は高く、ボディの軽量ぶりは、たとえば重い荷物を降ろしたときの目に見えた物理的な身軽さというよりは、ドライバーのさまざまな動的操作に対する俊敏な応答や身のこなしといった軽快感で強く感じる。ハンドリングの繊細さが質の高さを生むキレの良さみたいな感覚は、先代とはちがう新鮮なものだった。
エンジンの動力性能は、C200とC250ともに頼もしさに申し分なし。確かにアクセルペダルを踏み込んだときの「まだ余力たっぷりあるよ」感は、C250が勝る。
アウトバーンで150km/hを越えたあたりからの加速の良さや伸びは、“余裕”という意味でC250の方が魅力的にうつったが、日本の交通環境を考えればC200の追い越し加速に不満はまったくない。むしろ軽やかさはこちらが勝る。ハイスピードで走行中のレーンチェンジでは安定感が高く、最新のボディの恩恵を実感できた。
Mercedes-Benz C Class Estate|メルセデス・ベンツ C クラス ステーションワゴン
セダンもいいけれど、ワゴンも気になる
海外初試乗、メルセデス・ベンツ C クラス ステーションワゴン (4)
ディーゼル搭載モデルの投入も予定
ディナーの席で開発責任者のオリバー・ウインクラー氏にCクラスの立ち位置についてうかがってみた。すると「モデルの若返りを進めるいっぽうで、メルセデスがこだわるリヤ駆動のエントリーモデルであるという自負も多分にある」と言う。
つまり、ますますのユーザーボリューム拡大を上のクラスからも下のクラスからも、そして今度のCクラスからも図りたいのだろう。ふだんなら「なんと欲張りな……」と心のなかで呟きたくなるかもしれない。
が、今回は氏の言葉のおかげで新型Cクラスのアグレッシブなまでの変化と進化、そして上質さへのこだわりが腑に落ちたのだった。
日本には早くて年内の導入を予定しているというCクラス ステーションワゴン。さらに来年後半にはディーゼル搭載モデルの投入予定もあるのだとか。「セダンもいいけれど、ワゴンも気になる。ディーゼルもいいかも?」と言う方には、微妙なシンキングタイムになるのかもしれない。
Mercedes-Benz C 250 Estate|メルセデス・ベンツ C 250 ステーションワゴン
ボディサイズ|全長 4,702 × 全幅 1,810× 全高1,457 mm
ホイールベース|2,840 mm
トレッド前/後│1,584 / 1,566 mm
エンジン|1,991cc 直列4気筒 ターボ
最高出力| 155 kW(211 ps)/ 1,200-4,000 rpm
最大トルク|350 Nm / 1,200-4,000 rpm
トランスミッション|7段AT
駆動方式|FR
サスペンション 前|4リンク(エアマチック)
サスペンション 後|5リンク(エアマチック)
タイヤ 前/後|205/60R16
ブレーキ 前/後|ベンチレーテッドディスク / ディスク
燃費(NEDC)|6.0-5.6 ℓ/100km
最高速度|250 km(リミッター制御)
CO2排出量|140-130 g/km
Mercedes-Benz C 250 BlueTEC|メルセデス・ベンツ C 250 ブルーテック
ボディサイズ|全長 4,702 × 全幅 1,810× 全高1,457 mm
ホイールベース|2,840 mm
トレッド前/後│1,584 / 1,566 mm
エンジン|1,991cc 直列4気筒 ターボ
最高出力| 135 kW(184 ps)/ 5,500 rpm
最大トルク|300 Nm / 1,200-4,000 rpm
トランスミッション|7段AT
駆動方式|FR
サスペンション 前|4リンク
サスペンション 後|5リンク
タイヤ 前/後|205/60R16
ブレーキ 前/後|ベンチレーテッドディスク / ディスク
燃費(NEDC)|6.0-5.6 ℓ/100km
最高速度|250 km(リミッター制御)
CO2排出量|140-130 g/km