新型スマートを発表|smart
Smart fortwo|スマート フォーツー
Smart forfour|スマート フォーフォー
新型スマートを発表
コンパクトカー「スマート」がフルモデルチェンジを果たした。ルノーと共同開発したという新型は、その基本をひと足先に登場した「トゥインゴ」と共有するが、堅牢なボディシェルをデザイン化した“トリディオンセーフティセル”をはじめ、ひと目でスマートと判別できるキャラクターは健在だ。
Text by HORIGUCHI Yoshihiro(OPENERS)
2シーターと4シーターを同時に用意
ダイムラーが製造するシティコミューター「スマート」が新型となった。今回は、従来からの2ドア2人乗りモデル「スマート フォーツー」にくわえ、4ドア4人乗りの「スマート フォーフォー」も復活した。
かつて日本でも販売されたいた「スマート フォーフォー」は三菱自動車との共同開発で生まれ、三菱「コルト」と共有するシャシーをもちいていたが、新型スマートでは、フォーツー、フォーフォーともにルノーとの協業で生まれた。ルノー側からは新型「トゥインゴ」としてひと足先に発表済みだ。
新型スマートのサイズは、フォーツーで全長2.69×1.66×1.55メートル、フォーフォーは3.49×4.66×1.55メートル。コンパクトなボディでありながらも、広い室内空間をかせぎ出し、フォーツーのフットペダルから荷室後端までの長さは2,011.6mm、荷室容量は350リットルを確保した。これがフォーフォーになると、その室内長は2,707.3mm、トランクは255リットルから後席を倒すことで最大975リットルのスペースをほこる。
さらにフォーフォーの後席には、“Ready Space”と名付けられたリバーシブルのシートをオプションで用意。これは、表面を通常のシートとして利用でき、荷物の積載時には裏返すことでクッション部分を隠し、120mm荷室を低めることできるというもの。
フォーツーのリアハッチは上下分割式で、非常に狭いスペースでも荷物の出し入れを可能とする。フォーフォーのリアハッチはオーソドックスな上ヒンジタイプだが、リアドアがほぼ90度まで展開でき、荷物の積載や乗降時の利便性が高められている。
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新型スマートを発表 (2)
軽自動車並の小さい回転半径
密集した都市の隘路や狭い駐車場での利用を重きにおいたシティコミューターとして、短いボディやRRレイアウトを活かした小回りも新型スマートに引き継がれている。
フォーツーで最大にハンドルを切った状態で前進し、タイヤの軌跡から計測する、最小回転直径は6.95メートル(日本のカタログで一般的な最小回転半径で、3.48メートル)。前後のオーバーハングを含めて、実際に車両のもっとも外側の部分で計測した場合でも、転回に必要な直径はわずかに7.30メートルとなっている。
これは、トヨタのシティコミューター「iQ」の最小回転半径3.9メートルを下まわり、小回りに有利なキャブオーバー型の軽トラック並みのスペックだ。4人乗りのフォーフォーでも最小回転直径は8.65メートル(最小回転半径4.3メートル)で、スズキ「アルト」やダイハツ「ミラ」といった、ベーシックな軽乗用車とほぼおなじ。
3種類の3気筒エンジン
現時点において、エンジンはいずれも直列3気筒の3機種が明らかにされている。11月のローンチ時には、最高出力52kW(71ps)を発生する999cc NAエンジンと、排気量898ccながらターボチャージャーを搭載し最高出力66kW(90ps)、最大トルク135Nmを発揮する2種類でスタート。数か月後には最高出力45kW(60ps)のベーシックモデルも追加される。
組み合わされるトランスミッションには、5段マニュアルか“twinamix”6段デュアルクラッチが用意される。
足回りのサスペンションは、フロントには新設計のマクファーソンストラット式、リアにはド・ディオン式を採用。オプションでスポーツサスペンションも選択が可能で、この場合には車高が10mm低められる。
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新型スマートを発表 (3)
メルセデスをも巻き込んだ安全への取り組み
新型スマートでは、すべてのモデルにおいて、LEDデイタイムランニングライト、リモコン付きセンタードアロック、イモビライザー付きのキーロックアンサー、速度リミッター付クルーズコントロール、路面凍結警告つきの外気温度計、モノクロLCD付きのインストパネル、フロントパワーウィンドウを標準で備える。
そのうえで、「パッション」「プライム」「プロクシー」の3つのラインが用意され、それぞれのコンセプトにあわせて、レザーステアリングやインパネのLCDのカラー化など装備がアップグレードされる。
マルチメディア端末はスマートフォンとの連携が強化された。オーディオにはスマート初となるJBLサウンドシステムを採用。フォーツーでは6チャンネル240WのDSPアンプに8個のスピーカー、フォーフォーには8チャンネル320WのDSPアンプと12個ものスピーカーがそなわる。
アクティブセーフティ機能ではABS、ASR、ESPにくわえてクロスウィンドアシストを標準で装備する。これは、高速走行中に横風で車両が流されると、ブレーキを自動的に制御し安定をはかる機能で、80km/h以上の速度で直線もしくはゆるいカーブでのみ有効となる。
また、オプションとなるが、中距離レーダーを利用した、前方衝突警告を取り付けることができる。7km/h以上の速度で有効となり、前走車との車間距離が縮まり衝突の危険を感知すると、まずはランプで警告、それでもドライバーがブレーキ等の回避行動をおこなわないと、警告音を発して回避行動を促す。
安全性能にかんしては、ダイムラーの至上命題として、最小のスマートだからこそ徹底した研究がおこなわれたという。これには、車両を共同で開発したルノーはもとより、メルセデス・ベンツの技術者まで巻き込む、大がかりなものとなった。
新型スマートでは、最大の特徴ともいえる堅牢なトリディオン セーフティセルが乗員を保護するケージとして働くいっぽうで、そのほかの部分はクラッシャブルゾーンの拡大と、衝突の力をどれだけ効率よく受け流すかという点に注力された。結果として、実際に「Cクラス」や「Sクラス」との正面衝突の試験においても、乗員の安全性において良好な結果を得たという。
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新型スマートを発表 (4)
“FUN.ctional”なエクステリアデザイン
あたらしいスマートは、従来の、フロントスクリーンからバンパーまでならだかにつづくワンボックススタイルから、明確なボンネットをもつツーボックスのシルエットに変更された。
ボディカラーにあわせて、ブラック、シルバー、ホワイトの3色が用意されるフロントグリルはハニカム状の穴がグラデーションであしらわれる。このハニカムモチーフは、バンパー開口部やヘッドライト、ウィンカー、リアコンビネーションライトなどにも反復している。
切れ上がった菱形のヘッドライトは、U字型のLEDデイタイムランニングライトを標準装備。また、ランプシェードにはスマートのロゴが刻まれ、レンズカバーの端にはハニカムがあしらわれるなど細かい部分に凝った意匠がほどされている。
初代スマートをオマージュしたというデザインのテールライトは、11個のランプが独立して点灯し、ユニークなリアの表情を生み出す。このライトはオプションでLED化も可能。コンビネーションランプの中央部分には、ハニカムの繰り返しがみられる。
この明確な2ボックススタイルやグラデーションのかかったハニカムメッシュグリル、台形の前後ライトなどのモチーフは、これまでコンセプトとして登場した「フォースターズ」「フォージョイ」の面影を強く残している。
ダイムラーでは、新型スマートのデザインコンセプトを“FUN.ctional”(Fun + Function)として、スマートらしいユニークなスタイリングとコンパクトななかに凝縮された高い機能性の両立を謳う。
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新型スマートを発表 (5)
現行とほぼ同等の価格
あたらしいスマートフォーツーは、1997年いらいスマートを製造している、ドイツとの国境近くにあるフランスのハンバッハ工場で引きつづき生産される。また、フォーフォーはルノーとの協業契約に基づき、スロベニアはノボメストにあるルノーの工場で生産される予定だ。こちらにも、ハンバッハからエキスパートが派遣され、スマートのクオリティは保たれるという。