アウディ RS7スポーツバックを試乗|Audi
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2014年12月29日

アウディ RS7スポーツバックを試乗|Audi

Audi RS7 Sportback|アウディ RS7 スポーツバック

マルチパーパス スポーツカー

アウディ RS7スポーツバックを試乗

流れるようなルーフラインと4ドアの利便性をあわせもつ「A7スポーツバック」をベースに、560psを発揮する4リッターV8ツインターボとアウディ自慢の4輪駆動“クワトロ”を備え、スポーツ性能を極めたRSを冠するのが「RS7スポーツバック」だ。優美な4ドアクーペと高い運動性能を同居させたこのクルマに試乗した大谷達也氏が、その成り立ちからRS7スポーツバックをひもとく。

Text by OTANI TatsuyaPhotographs by ARAKAWA Masayuki

スポーツモデルに注力するアウディ

近年、アウディが特に力を入れているのがRSモデルやSモデルなどスポーツ系シリーズの拡充だ。戦後に再興した直後のアウディ(というか当時はまだアウトウニオンと名乗っていた)は、どちらかといえば人々の暮らしに密着したコンパクトカーを中心に作っていたけれど、そこから次第に上級車へとラインナップを拡大。さらには1980年にアウディ「クワトロ」を発売し、スポーティなブランドとして認知されていったことは皆さんもご存知のとおりである。

こうして始まったアウディ スポーツモデルの系譜は徐々にアウディというブランド全体のスポーツイメージを押し上げる効果をもたらした。だから、アウディのスポーツイメージはもともとクワトロが生み出したものといってまちがいないし、アウディがクワトロを大切にしている理由もここにある。

さらにいえば、最近、ドイツのプレミアム御三家はいずこも収益性の高いスポーツモデルを熱心にプロモーションしている。であれば、アウディとしても負けているわけにはいかない。幸い、アウディにはRSモデルとSモデルという、クワトロを標準装備したスポーツラインが2系統もある。しかも、RSモデルとSモデルはいずれもクワトロの特徴を生かした独特の個性を備えている。そうしたモデルのラインナップを充実させ、より積極的に売り込んでいくのは、自動車メーカーの戦略として当然のことといえるだろう。

いっぽう、アウディRSモデルの企画と開発を担当するのは、アウディのなかでも特にハートの熱いエンスージャストが多く集まっているクワトロGmbHである。いちおう同社はアウディの子会社という位置づけだが、コンパクトな組織にRSモデルを任せることで、より個性的な製品、もう少し別な言い方をすれば“とんがった”製品を生み出そうとしているのかもしれない。

Audi RS7 Sportback|アウディ RS7 スポーツバック

マルチパーパス スポーツカー

アウディ RS7スポーツバックを試乗 (2)

成り立ちから再確認するRS7スポーツバック

そんなクワトロGmbHに与えられたミッションのひとつが「RSモデルのマーケットを拡大せよ」というもの。

もう少し詳しく説明すると、アウディが売れている地域を大まかにいえば、欧州、北米、そして中国を中心としたアジアとなるが、このうち中国ではサルーン系モデルの人気は高いものの、スポーツモデル系の認知度はいまひとつ。ここでアウディのスポーツイメージを定着できれば、RSモデルやSモデルも飛ぶように売れるようになるはず……。と、そんなことを考えた重役がどこかにいたのだろう。そこでクワトロGmbHとアウディ本社のスタッフが頭を絞った末に生み出したのが、この「RS7スポーツバック」だったのである。

とはいえ、中国で人気のモデルといえば、なんといっても独立したトランクルームを持つ4ドア セダンがいちばん。だから、5ドア スポーツクーペのRS7スポーツバックはちょっと売りにくいようにもおもうが、逆にRS7スポーツバックで成功すればほかのRSモデルはもっと売りやすくなるし、アウディのスポーツイメージもぐーんと加速するはず――。

そんな戦略があったかどうかはあくまでも推測の域をでないけれど、アウディがRS7スポーツバックでRSモデルの中国進出を図ろうとしたのは事実。そうした視点で眺めていくと、RS7スポーツバックのまた別の一面が見えてくるような気がして面白い。

Audi RS7 Sportback|アウディ RS7 スポーツバック

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アウディ RS7スポーツバックを試乗 (3)

オールラウンドに高い能力

とまあ、ずいぶんと長い書き出しになったけれど、RS7スポーツバックの成り立ちは比較的シンプルで、エンジンはV8 4.0リッター ツインターボエンジン(最高出力560ps、最大トルク700Nm)、ギアボックスはトルコン式の8段ATを搭載。フロント:ダブルウィッシュボーン、リア:トラペゾイダルリンクの足まわりに、ドイツ本国ではオプション扱いのDRC(ダイナミック ライド コントロール)付スホーツ サスペンション プラスを日本仕様では敢えて標準装備としてチョイスしている(ヨーロッパ仕様はよりソフトな設定のエアサスペンションが標準)。

それだけにスパルタンで、普段はガマンを強いられる乗り心地と想像されるかもしれないが、実際にはかなりしなやかで快適。これだったら家族と長距離ドライブに出かけても苦情はほとんど出ないだろう。

かといって、“ヤワな足回り”では断じてない。今回の国内試乗にくわえ、筆者は海外試乗会でアルプス越えを体験しているけれど、日常域を大幅に超えた速度域でコーナーに進入しても安定した姿勢を崩さず、どこまでも自分の思い通りに操れるシャシーだと評価できる。

唯一ともいえる弱点は、ターンインでごくわずかにアンダーステアを感じる瞬間があること。逆にコーナーの出口に向けて積極的にスロットルペダルを踏んでいくと、フロントより先にリアがアウト側に滑り出していくような錯覚を覚えるほど、軽快なハンドリングを備えている。

エンジンはパワフルのひとこと。圧縮比が9.3と比較的高いおかげもあって瞬発力は良好で、都内の渋滞を走るような低中速域でもいち早く分厚いトルクを生み出してくれる。そのいっぽうでバルブ休止機構を採り入れ、JC08モードではこのクラスとして驚異的な10.4km/!を記録するなど、環境性能にも配慮されている。

しかも、クーペ風のボディの内側には同クラスの4人乗りサルーンほどの居住空間が用意されていて、ラゲッジルームもワゴン並みに広い。さらには、どんな路面状況だろうとクワトロがしっかりしたトラクションとスタビリティを確保している。

「これだったらハードルの高い中国市場でも成功を収められるかも?」 アウディRS7スポーツバックは、そんな期待を抱かせてくれるマルチパーパス スポーツカーといえるだろう。

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Audi RS 7 Sprtback|アウディ RS7 スポーツバック
ボディサイズ|全長 5,010 × 全幅 1,910 × 全高 1,425 mm
ホイールベース|2,915 mm
トレッド 前/後|1,635 / 1,625 mm
重量|2,070 kg
エンジン|3,993 cc V型8気筒 ツインスクロール ツインターボ
最高出力|412 kw(560ps) / 5,700-6,600 rpm
最大トルク|700 Nm / 1,750-5,500 rpm
トランスミッション|8段オートマチック(ティプトロニック)
駆動方式|4WD
タイヤ|275/30R21
トランク容量|535リットル
0-100km/h加速|3.9 秒
燃費(JC08モード)|10.4 km/!
CO2排出量|223 g/km
価格|1,615 万円

アウディコミュニケーションセンター
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