MOVIE|奴隷として12年生きた“自由黒人”の運命『それでも夜は明ける』
MOVIE|“奴隷”として12年生きた黒人男性の実話をもとにした衝撃作
スティーヴ・マックイーン監督が描く人間ドラマ『それでも夜は明ける』
奴隷制度が残っていたアメリカを舞台に、拉致され、12年間もの間、奴隷生活を強いられた“自由黒人”の実話を、スティーヴ・マックイーン監督が映画化した『それでも夜は明ける』。アカデミー賞の前哨戦ともいわれる、今年のゴールデングローブ賞の「映画作品賞ドラマ部門」を受賞した注目作品だ。3月7日(金)より、TOHOシネマズみゆき座ほか全国順次ロードショーされる。
Text by YANAKA Tomomi
ブラット・ピットもプロデューサーとして参加
2008年の長編デビュー作『HUNGER/ハンガー』以来、真実をえぐるような衝撃作を発表しつづけてきたスティーヴ・マックイーン監督。待望の3作目『それでも夜は明ける』でも、その期待を裏切らない、衝撃と感動の物語が描かれた。
スティーヴ・マックイーン監督は、彫刻家、写真家として、イギリスが誇る芸術賞ターナー賞などを受賞するなど、アーティストとしても名を知られる存在だ。『HUNGER/ハンガー』では牢獄でハンガー・ストライキをおこなった活動家が、死にいたるまでの苦痛の数カ月を描き、2作目の『SHAME-シェイム-』(2011年)では、セックス依存症の男性をテーマに描くなど、これまで「依存」と「闇」を大胆に切り取ってきた。
そんな彼が3作目の題材として選んだのが、1853年に出版されベストセラーとなったアフリカ系アメリカ人、ソロモン・ノーサップの回顧録だった。本作にはマックイーン監督とのタッグを熱望していた、ブラット・ピットがプロデューサーとして参加。スクリーンでも、奴隷制度撤廃を唱えるカナダ人労働者というキーパーソン役として、出演を果たしている。
主人公のソロモンは、キウェテル・イジョフォーが熱演。ソロモンがもつ高潔さ、誠実さ、慎み深さを見事に表現している。また、マックイーン監督作品への出演を熱望したベネディクト・カンバーバッチや、ポール・ダノ、マイケル・ファスベンダーといった、いまもっとも“旬”といわれる俳優陣の出演も実現。女奴隷パッツィーに抜擢された、モデルのルピタ・ニョンゴの存在感にも注目したい。
だまされ、奴隷として売られた先に待ち受けていたものとは
バイオリストのソロモン・ノーサップは、生まれながらに自由証明書で認められた“自由黒人”として、家族とともにニューヨーク州で幸せな暮らしを送っていた。
ある日、知人からの頼みで、ワシントンのショーに出演することになったソロモン。2週間の契約期間を終え、興行主と祝杯をあげたソロモンは、いつになく酔いつぶれてしまう。翌朝、手と足を重い鎖に繋がれた状態で目が覚めた彼は、興行主にだまされ、奴隷として売られることになってしまったのだ。
そこからニューオリンズの地へ売られ、白人たちの容赦ない差別と暴力に苦しめられながらも、決して尊厳を失わないソロモン。やがて12年の歳月が流れたある日、ソロモンは奴隷制度撤廃を唱えるカナダ人労働者バスと出会い――。
世界を挑発しつづけ、“恐れ知らずの映画監督”と称えられたスティーヴ・マックイーン監督が、豪華キャストで突きつける『それでも夜は明ける』。立ち尽くすような衝撃と感動から見える“真実”に、私たちは目を背けてはならない。
『それでも夜は明ける』
3月7日(金)より、TOHOシネマズみゆき座ほか全国順次ロードショー
監督│スティーヴ・マックイーン
出演│キウェテル・イジョフォー、マイケル・ファスベンダー、ベネディクト・カンバーバッチ、ポール・ダノ、ギャレット・ディラハント
配給│ギャガ
2013年/アメリカ・イギリス/134分/PG12
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