MOVIE|カンヌで「ある視点」部門グランプリを受賞した『父の秘密』
MOVIE|カンヌ国際映画祭で「ある視点」部門グランプリを受賞
メキシコが誇る新鋭マイケル・フランコ監督による『父の秘密』
第65回カンヌ国際映画祭の「ある視点」部門のグランプリを受賞したメキシコ映画『父の秘密』。事故で母を亡くした後の父と娘について描いた話題作が11月2日(土)、ついに日本でも公開される。
Text by YANAKA Tomomi
クラスメイトを演じたのは、主演テッサ・イアの実際の友人
近年、話題作を続々と世に送り出しているメキシコから、また心を深く捉える作品が誕生した。家族を喪失したその後を淡々と描きながらも、父と娘を襲うあらたな悲劇と苦悩する父親、という表現がカンヌ国際映画祭でも大きな話題にのぼったという。
監督を務めたのは、メキシコ映画界きっての有望新人監督であり、本作が長編2作目となる1979年生まれのマイケル・フランコ。そして主演はデビュー作の『あの日、欲望の大地で』(2009年)で才能溢れる演技を見せたテッサ・イアだ。さらに彼女を取り巻くクラスメートは、ほとんどが演技経験のない、実際の友人たちが演じた。
ある日、突然姿を消した娘アレハンドラ
妻ルシアを亡くした喪失感から抜け出せないロベルトと娘のアレハンドラは、あたらしい土地でやり直そうとメキシコシティへと引っ越す。だが、それだけで悲しみが癒えるはずもなく、彼らは心の傷に向き合わないまま、他愛ない言葉を交わすだけの関係になっていた。
アレハンドラはあたらしい学校で友達もでき、楽しく過ごしはじめるが、酔った勢いで関係をもった男子生徒に行為を盗撮されたのをきっかけに、いじめの標的になってしまう。
しかし、喪失感で仕事もままならない父親に、いじめられていることを告げることができず、苦痛な日々をやり過ごすしかなかったのだ。そしてある日、彼女は突然姿を消した――。
父と娘が誤った選択をしつづけた末にあるものとは。水面に投げた石が起こす波紋のように、ひとの心をざわめかせる本作。マイケル・フランコ監督の才能である。
『父の秘密』
11月2日(土)より、ユーロスペースで公開
監督・脚本│マイケル・フランコ
出演│テッサ・イア、ヘルナン・メンドーサ、ゴンザロ・ヴェガJr
配給│彩プロ
2012年/フランス・メキシコ/103分/R15+
http://lucia.ayapro.ne.jp/
Despues de Lucia © 2012