松浦俊夫｜優しくて力強い傑作。猪野秀史新作。

松浦俊夫｜from TOKYO MOON 5月5日オンエア

優しくて力強い傑作。猪野秀史新作。

DJ松浦俊夫による、大人のための音楽番組『TOKYO MOON』。日曜の夜23:30から、InterFM 76.1MHzにてオンエア中です。世界中から選りすぐった“フレッシュ”な音楽や、大人の知的好奇心を刺激するトピックスをご紹介。ここではオンエアされたばかりの内容を振り返ります。アーティストについて深く掘り下げたり、関連した楽曲を紹介したり、さらにはその曲が購入できたりと、『TOKYO MOON』を目と耳で楽しむ連載です。今週は力強い“生命力”に溢れた新作を届けてくれた、猪野秀史にスポットを当ててお届けします。

Text by MATSUURA Toshio

未来への希望を込めて、闇からひかりへ

2000年代のなかば、渋谷の「Dance Music Records（現DMR）」で手にした、ローズ・ピアノ(Rhodes Piano)を演奏する姿が印象的なカバー・アートの7インチ。これに収録されたキューブリックの1960年の『スパルタカス』の愛のテーマは、サックス、フルートをメインとするマルチ奏者、作曲家のユセフ・ラティーフのカバーが音楽好きには知られた名曲だったこともあり、即購入したのをいまでも憶えています。

このときがINO hidefumiこと猪野秀史さんとの“出会い”だったのです。それから数年後、ロンドンにオープンする日本食レストラン兼ラウンジのオープニングで共演したことからおつき合いが始まり、これまでに何度かライブをお願いしてきました。依頼する機会がそれほど多くない理由は、彼自身の音楽が“生きる”シチュエーションでしかお願いしないからです。ご本人と同じくとても静かでありながら熱のこもった音楽は、同じように音楽を限りなく愛する人たちにこそ聴いて欲しいとおもってきました。

しかしながら新作『New Morning』は自ら一歩前に出て、より多くの人たちに想いを届けようとしているように感じました。

薫る緑のなか青く広がる空に両手を挙げながら光を浴びる──そんな心地よい楽曲がたくさん。それはご自身の言葉にも滲み出ています。

「僕が昔からいいと思える音楽は、何の変哲もない一日を歌っているような音楽。
壮大で大げさなものよりも、手のひらですくいたくなるような可愛らしいものに愛着を感じます」

「月に吠えたくなるような夜があったとしても、今日という日をスタートに。
今日という日が人生最後の日だとしたら、ごく当たり前のことがこんなにも光輝いた
奇跡だったんだなぁと、心から感謝したくなる。
毎日がみずみずしい希望の朝を迎えられますように。
未来への希望を込めて、闇からひかりへ」
（INO hidefumi Dairyより　http://blog.innocentrecord.net/blog/）

それはボーカルであり、日本語で歌うことであり、多重録音そしてバンドサウンドということにも繋がっているのでしょう。個人的にはなによりも“音に込められた想い”がストレートに伝わってきたことで、“ワクワク”した気持ちになりました。

最近届いたメールにも、「音楽を通して少しでも未来が明るく繋がればと思っています」とあるように、震災後のもやもやとした気持を音楽にさらに向き合うことで乗り越えてきた結果、とても優しくて力強い“生命力”に満ち溢れた傑作ができあがったのだと思います。

ぜひ聴いてほしい作品です。

6月に行われるライブにもいちファンとして参加しようとおもいます。

INO hidefumi GROUP
“NEW MORNING” INO hidefumi LIVE SET 東京 SPECIAL SHOW！
日程｜6月14日（金）
時間｜20:00開場 21:00開演
入場料｜当日券4000円(ドリンクチャージ別)
出演｜INO hidefumi GROUP
ゲスト｜鈴木茂 and more…
会場｜LIQUIDROOM
東京都渋谷区東3-16-6
Tel. 03-5464-0800
http://www.liquidroom.net

REVIEW｜TRACK LIST

★マークのついた楽曲をクリックすると、試聴・購入することができます。あらかじめ「iTunes」ソフトをインストールのうえ、お楽しみください。

01. Fatima / Visit You (Eglo)
02. Floating Points / Wires (Eglo)
03. Baths / Ironworks (Tugboat)
04. Bibio / Raincoat (Ninja Tune / Beat)★
05. Kenny Rankin / Sittin' on the Dock of the Bay (Mercury)★
06. Iron And Wine / Low Light Buddy Of Mine (Nonesuch)★
07. Matthew Larkin Cassell / Heaven (P-Vine)★
08. Kalabrese / Feeding Me With Sun (Rumpelmusig / Compost)★
09. Hannes Fischer / Mystic Mountain (Sonar Kollektiv)★
10. Mount Kimbie / Made To Stray (Warp / Beat)★
11. INO hidefumi / Cry Me A River (innocent)
12. 高橋幸宏 Yukihiro Takahashi / C'est Si Bon (King)