レンジローバーデザイナー、ジェリー・マクガバン氏にインタビュー|Range Rover
Range Rover|レンジローバー
レンジローバーデザイナー、ジェリー・マクガバンにインタビュー
スタイリッシュなSUV「レンジローバー イヴォーク」を手掛け一躍注目をあびたデザイナー、ジェリー・マクガバン。先頃発表された、4世代目となるレンジローバーの代表車種、「レンジローバー ヴォーグ」も彼の手によるものだ。レンジローバーの現在のイメージを担う、マクガバン氏に、九島辰也氏が話をきいた。
Text by KUSHIMA Tatsuya
保守と革新に果敢に挑む
ジェリー・マクガバン。現在アストンマーティンのデザインを一手に担うマレック・ライヒマンが、いまもっとも注目しているカーデザイナーのひとりに挙げている男だ。自身がデザインしたという自宅をiPadで見せてもらったが、それはまるでハリウッド映画にでてくるようなモダンな建造物だった。
そんな彼が近年手がけて話題をさらったのが「レンジローバー イヴォーク」。このクルマにかんして多くを語るまでもないが、今年の北京モーターショーではビクトリア・ベッカムとのコラボモデルで再び注目をあびたのも記憶にあたらしい。
そして今回パリサロンでは4世代目となる「レンジローバー ヴォーグ」を送り込んだ。いったい彼はどんなテーマでデッサンを起こし、完成へと導いたのだろう。
──新型レンジローバー ヴォーグのデザインのポイントは?
とても注意深くデザインしなければならないクルマです。
マーケットは保守的ですが、あたらしいものもしっかり取り入れなくてはなりません。これまでのDNAをどのくらい取り入れ、引き継いでいくのか、注意が必要です。DNAも一般的すぎると、DNAとしての効果がなくなりますからね。また、やりすぎないというのも重要。プログレッシブではなくアンダーステイトメント(控えめ)なデザインが要求されます。
──イヴォークとのちがいは?
まさにそこですね。マーケットがちがいます。イヴォークはあたらしいマーケットに向けてつくられたクルマですが、ヴォーグはそうではありません。既存のマーケットがどう反応するかがカギとなります。そこで、42年の歴史が、ひとめでわからなくてはならない部分が必要となります。イヴォークとは役割がちがいます。その意味からすると、次の「レンジローバー スポーツ」はもっとプログレッシブになるとおもいます。
──新型のデザインはいつはじまったのですか?
いきなりプロジェクトが発生してデザインを起こしたわけではありません。長期のビジョンのなかで、スケジュールは決まっていますし、いつでも考えています。
──控えめな変更のなかのあたらしさは?
ルーフは従来型より低く、プロポーションは流れるようになりました。これはクルマを小さく見せる効果があります。それからホイールベースが長くなっています。これはファミリーユースを意識したからです。エアロダイナミクスを考えながら実用性を兼ね備えます。ルーフは低くなってもヘッドクリアランスが減らないようにシート構造自体をかえました。従来より20mm、コマンドポジションは下がっています。
──今回アルミニウムボディになりましたが、それはデザインにも関係しますか?
表面に滑らかさがでたとおもいます。
生産のプロセスでもそれは大事で、うつくしいデザインを具現化するのに重要なポイントとなります。柔らかい素材ですから、接合の滑らかさも特徴ですね。段差のないパノラミックルーフも、こうした全体の滑らかさのひとつとお考えください。
──最後にこのクルマをデザインするにあたってインスパイアされたものはありますか?
細かなディテールは高級時計やスーツ、宝飾品などと、いろいろあります。つまり、身のまわりにある“いいもの”、“優れたもの”といわれる商品です。
それはこのクルマを買うお客様も見ているものなので、とてもわかりやすいとおもいます。ラグジュアリーな世界がそこにあります。すでに現行オーナーからも好評価をいただいていますから発売後が楽しみですね。