レクサスLS 2013年モデルに試乗|Lexus
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2014年12月9日

レクサスLS 2013年モデルに試乗|Lexus

LEXUS LS|レクサス LS

ドライバーズカーへと進化した

レクサス LS 2013年モデルに試乗

先日、サンフランシスコにて公開されたばかりの「レクサス LS」2013年モデル。マイナーチェンジではあるものの、スピンドルグリルの獲得によるキャラクターイメージの明確化、インテリアのアップデート、そして、F SPORTの設定と、見所は多い。この、あらたなレクサスのフラッグシップに、島下泰久氏がさっそく試乗する機会を得た! 果たして、LSの実力やいかに?

Text by SHIMASHITA Yasuhisa

LSは立ち止まれない

「このセグメントでは、立ち止まることは許されません。なかにはコンサバな意見もありましたが、これまでのお客様に買い替えてもらえるものにしようと、大胆に提案しました」

新型レクサスLSの開発を指揮したチーフエンジニアの渡辺秀樹氏は、デビュー6年目でのモデルチェンジの意義について、そう説明してくれた。括りで言えば、基本骨格は変えない、いわゆるマイナーチェンジということになるが、渡辺氏は敢えてメジャーチェンジという言葉を使う。実際、車両全体を構成するパーツの半数近い、3千箇所が変更されたというから、決して“マイナー”ではないだろう。

そもそも見た目から、印象は大きくちがっている。すぐに目に入るのは、最新のレクサスに共通のスピンドルグリルを採用したフロントマスクだ。写真だと、やや強調され過ぎるきらいがあるが、実際には絶妙な三次元形状のグリルはボディラインにすんなりと溶け込み、存在感を増しつつも案外、品のある表情をつくり出している。

LEXUS LS|レクサス LS

LEXUS LS|レクサス LS

リアビューは、ピラーからトランクリッドにかけての面構成にスピンドル形状が反復されているのが、なかなか大胆だ。これまたアイデンティティと言える、発光時にL型に光るLEDテールランプも、強い印象をもたらすモチーフである。

これらの変更でオーバーハングはフロントが20mm、リアが10mmそれぞれ延長されている。全長はノーマルボディで5,090mm、ロングホイールベースのLモデルで5,210mmとなった。

LEXUS LS|レクサス LS

ドライバーズカーへと進化した

レクサス LS 2013年モデルに試乗(2)

インテリアの心配り

外観以上に大きく変更されたのがインテリアだ。そびえたつセンタークラスターがいかにも日本車的で、デビュー時から好評とは言えなかったインストゥルメントパネルが一新され、「CT」、「GS」に近い雰囲気の水平基調のデザインが採用されたのである。

ダッシュボード中央に鎮座するのは世界最大級12.3インチの大画面ディスプレイ。マウスのような操作感のリモートタッチの採用もあり、全体にスイッチの数が減っているのも注目と言える。見た目も一気にモダナイズされているが、それ以上に使い勝手が大いに進化しているのだ。

LEXUS LS|レクサス LS

LEXUS LS|レクサス LS

今回はあまり“おもてなし”という言葉は強調されていないが、機能装備の充実ぶりを見る限り、その精神に変わりはなさそうである。

たとえば4席独立温度調整式のエアコンとシートヒーター、ステアリングヒーターを統合制御する「レクサス クライメイト コンシェルジュ」や、ドアを開けて走り出すまで、あるいはキーをオフにして降りるまでの時間を、室内各部に仕込まれたシャンパンホワイトの照明で演出する「アドバンスド イルミネーション システム」などは、いかにもレクサスらしい、あるいは日本のブランドらしい、細やかな配慮を感じさせる装備と言える。特に後者には、ただのギミックじゃないのか……なんておもっていたのに、ちょっとくすぐられてしまった。

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レクサス LS 2013年モデルに試乗(3)

走りにたいする考え方がちがう

ドライビングダイナミクスの改善も、大きなテーマだったという。結論から言えば、そのレベルは格段に向上している。というよりは、これまでとは走りにたいする考え方がちがう。そんな印象すら受けた。

まず新型LSは、土台となるボディを鍛え直した。レーザースクリュー溶接や接着剤の採用など、あらたな生産技術の導入を進めたほか、スポット溶接箇所の拡大、各部の接合強化等々によって、ボディ剛性を向上。2006年のデビュー時点でCd値0.26を実現していたエアロダイナミクス性能にも磨きがかけられ、空力による操縦安定性の向上にさらに留意されている。

そしてシャシーには、電子制御式エアサスペンションと連動する「AVS(アダプティブバリアブルサスペンショ)」の制御を各輪独立から4輪連携に変更したほか、ギア比可変ステアリングシステムであるVGRSの制御変更、ブレーキのファインチューニングなどを実施。そもそもLS専用という奢ったスペックのシャシーのポテンシャルを、さらに高いレベルで引き出すべく、あらゆる箇所が見直されているのである。

いっぽう、「LS460」のV型8気筒4.6リッターエンジン、「LS600h」のV型8気筒5リッターエンジン+電気モーターというパワートレインには大きな変化はない。とは言え、細部のリファインによって出力と燃費はともに若干向上。CO2排出量は前者が5パーセント減の249g/km、後者では9パーセント減の199g/kmを達成している。

ドライブモードセレクトもあらたに標準装備とされた。ECO/COMFORT/NORMAL/SPORT S/SPORT S+の5つのモードをセットすることで、パワートレインやシャシー、エアコンの制御をいっぺんに切り換えることが可能になる。

LEXUS LS|レクサス LS

F SPORTも設定

走りのイメージを牽引する存在として、F SPORTが設定されたのもトピックと言えるだろう。従来も走りを磨いたグレードとしてSZが用意されていたが、F SPORTは見た目も含めて、よりストレートにスポーティさを追求している。

外装はメッシュパターンとされたブラック仕上げのスピンドルグリル、10mm低い車高と19インチホイール、そして内装はホールド性を高めたスポーツシートにディンプル加工本革巻きのステアリングホイールなどによって俄然、精悍に。そしてシャシーには、リアサスペンションのメンバーブレースを追加。ブレンボ製6ポットフロントキャリパーを採用した強化ブレーキも奢られている。また、LS460 F SPORTにはトルセンLSDが、LS600h F SPORTにはアクティブスタビライザーがそれぞれ備わる。

LEXUS LS|レクサス LS

LEXUS LS|レクサス LS

パワートレインに変更はないが、LS460 F SPORTにはインテークサウンドクリエーターが装備される。エンジンサウンドをよりスポーティに演出するアイテムである。

安全装備もアップデート

その優れた走りを支える安全性の面でも、様々な新機軸が採り入れられた。

まず目玉となるのが衝突回避支援型プリクラッシュセーフティ。昼間だけでなく夜間にも、車両前方の歩行者や車両の存在を検知し、自動ブレーキによって相対速度が40km/h以下の場合には衝突回避を可能にする。

ほかにもロー/ハイビームを切り換えるのみならず、ヘッドランプ内のシャッターによる遮光をおこなうことで、照射範囲を極力狭めることなく対向車の眩惑を防ぐ新アダプティブハイビームシステム。さらには改良版のレーンキープアシストやブラインドスポットモニターが設定されるなど、ほぼすべての先進安全装備にアップデートがくわえられている。

先進安全技術はレクサスがお家芸としてきた分野。他社のシステムに肩をならべ、そして凌駕するものが用意されたと言っていい。

LEXUS LS|レクサス LS

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ドライバーズカーへと進化した

レクサス LS 2013年モデルに試乗(4)

ロングホイールベースの「LS460L」からテスト

アメリカはサンフランシスコ、シリコンバレーにて開催された今回の国際試乗会。まずステアリングを握ったのは、ホイールベース3,090mmのロングボディにV型8気筒4.6リッターエンジンを積む「LS460L」である。

新型LSは、紛うかたなきドライバーズカーへと進化した……そう確信するのに、大した距離は要らなかった。おそらく、引き締まったステアリングフィールがそうおもわせたのだろう。コラム剛性を20パーセント引き上げたステアリング、路面感覚がにわかに豊かになり、低速域でもクルマと対話して走らせるよろこびを味わわせてくれる。無論、快適性の犠牲はなしで、だ。

ハイウェイで速度を上げていくと、今度はその車両姿勢のフラットぶりに驚かされることに。路面の細かな凹凸やうねり、ざらつきを巧みに吸収する乗り心地の良さは受け継ぎながら、その際に車体が煽られる余計な動きだけがきれいに消えているのだ。

ボディ剛性の向上、そして4輪連携制御となった「AVS(アダプティブ バリアブル サスペンション システム)」が効いているにちがいないが、それにしても、よくぞここまで! というぐらいの進化である。

LEXUS LS|レクサス LS

LEXUS LS|レクサス LS

それも含めて快適性も全般に底上げされている。特に定評の遮音性はさらに向上していて、100km/h前後で巡航しながら、ロングボディの前後席間でも普通の声で会話できてしまうほど。実際、車体の遮音、吸音については完全に見直されているという。また、18インチタイヤ装着車が履く新開発のノイズリダクションホイールも、効果は想像以上に大きいということだ。

動力性能には、新旧のちがいは見出せなかったが、音環境が良くなって、エンジンの吹け上がりがよりスムーズに感じられるのが嬉しい。じつは元々スポーティな息吹きをもつエンジンだけに、回すよろこびが確実に増している。ただし、今の周囲の状況からするとアイドリングストップシステムが備わらず、停車中もエンジンがかかったままなのは、いささか古めかしい気もした。

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レクサス LS 2013年モデルに試乗(5)

つづいては「LS600h F SPORT」

つづいてはLS600h F SPORTに乗る。走り出すと、こちらのステアリングフィールはさらに饒舌で、それこそ指一本分の操舵にもしっかり反応してくれる小気味良さに嬉しくなった。乗り心地は、こちらも十分に快適。ハードではなく、ちょっと引き締まったフィーリングと言える。

もっとも、LS460に較べると車重が200kg以上も重いだけに、大きめの入力にたいしては弱いところもあるのだが、それとて角は丸められているから不快と感じることはない。乗り較べれば、確かに重いなと感じる程度である。

F SPORTの旨味がもっとも活きるのは言うまでもなくコーナリングだ。ステアリングを切り込むと、ノーズが鋭過ぎも鈍過ぎもしないジャストなタイミングでインを向きはじめ、次の刹那にはクルマ全体がきれいに旋回姿勢に入っていく。自分を中心に、クルマ全体が一体となって向きが変わっていく感覚は、まさにスポーティと言う以外にない。

LEXUS LS|レクサス LS

LEXUS LS|レクサス LS

こちらもパワートレインに大きな変更はないが、ドライブモードセレクトをSPORT SあるいはSPORT S+にセットすれば、電気モーターの特性を活かしたピックアップの良さを存分に楽しめる。いっぽうでNORMALモードでは、どこまでも途切れることを知らない至極滑らかな加速を満喫することもできる。特にLS600hの場合、燃費だけではないハイブリッドのさまざまな旨味を引き出せるドライブモードセレクトの搭載は、得るものが大きいと感じた。

「LS460 F SPORT」も少しだけ試すことができた。こちらは低音の効いたサウンドを伴った爽快な吹け上がりのV型8気筒エンジンと、より軽い車体に引き締まったサスペンションのおかげで、期待にたがわず、もっとも走りを楽しめる1台に仕上がっていた。これまでのレクサスLSのイメージを、良い意味で覆す1台になりそうだ。

LEXUS LS|レクサス LS

ドライバーズカーへと進化した

レクサス LS 2013年モデルに試乗(6)

想像以上だった

総じてこの新型LS、出来映えは想像以上だったと言っていい。特に、これだけドライバーズカーとしての完成度、洗練度を高めてきたことには大いに唸らされた。

決して突然変異ではない。これまでのLSも、走りのそれぞれの要素には光るところが沢山あったのだが、1台のクルマとしてのまとまりが、このレベルに至っていなかったのだ。新型LSでは、それがいよいよ噛み合ってきたという感じ。これは熟成型のモデルチェンジだからこそ可能になったと見てもいいのかもしれない。

内外装にかんしても、個人的には見れば見るほど印象が良くなってきている。最初は面喰らったとしても、きっとすぐに誰もが受け入れられるようになるはず。そう確信している。

LEXUS LS|レクサス LS

LEXUS LS|レクサス LS

冒頭に記した通り、いわゆるマイナーチェンジとは括れないぐらい、進化は急である。渡辺チーフエンジニアによれば、開発に際しては若いエンジニアを積極的に投入し、彼らがやりたいと手をあげたことは、ほぼ全面的に採り入れたのだという。そうしたエネルギーのみなぎりを、そこかしこから感じるのである。

唯一惜しいのは、パワートレインがほとんど進化していないという点だ。世はダウンサイジング指向。小型ハイブリッドも含めて、ライバル達はアグレッシヴに攻めてきている。環境志向のプレミアムカーという意味では、先駆者にあたるLSなのだ。もっと、この分野でも輝く存在感を発揮してほしい。

ともあれLSが、新型の登場で、上質であり高級だけれども、どこか退屈という存在感から抜け出せる可能性を得たことは確かだ。まず見た目もそうだし、実際にステアリングを握れば、それを多くの人が実感することになるにちがいない。

この新型LS、日本の我々の前には10月に入った頃にお披露目される予定である。早く日本の景色の中で、そのデザインを、その走りを味わってみたいところだ。

spec

LEXUS LS460 L|レクサスLS460 L
ボディ|
(FR/コイルサス)|全長 5,207 × 全幅 1,875 × 全高 1,476 mm
(FR/エアサス)|全長 5,207 × 全幅 1,875 × 全高 1,466 mm
(AWD)|全長 5,207 × 全幅 1,875 × 全高 1,481 mm
(F-SPORT)|全長 5,207 × 全幅 1,875 × 全高 1,455 mm
ホイールベース|3,091 mm
車両重量|
(FR/コイルサス)|1,940 kg
(FR/エアサス)|1,960 kg
(AWD)|2,130 kg
エンジン|4.6リッター V型8気筒DOHC 32バルブ
ボア×ストローク|94.0×83.0 mm
最高出力|(FR)386 ps / 6,400 rpm / (AWD)360 ps / 6,400 rpm
最大トルク|(FR)50.8 kgf-m/ 4,100 rpm / (AWD)48.0 kgf-m / 4,100 rpm
駆動輪|後輪駆動、4輪駆動
トランスミッション|8段オートマチック
タイヤサイズ|235/50 R18
0-60マイル/h(約96km/h)加速|(FR)5.4 秒/(AWD)5.9 秒

LEXUS LS600h L|レクサスLS600h L
ボディ|全長 5,207 × 全幅 1,875 × 全高 1,481 mm
ホイールベース|3,091 mm
車両重量|2,320 kg
エンジン|5.0リッター V型8気筒DOHC 32バルブ
ボア×ストローク|94.0×89.5 mm
最高出力|389 ps / 6,400 rpm
最大トルク|53.2 kgm-f / 4,000 rpm
モーター最高出力|221 ps
モーター最大トルク|165 kW
バッテリー|ニッケル水素(240セル)
駆動輪|4輪駆動
トランスミッション|CVT
タイヤサイズ|245/45 R19
0-60マイル/h加速|5.5 秒
上記数値はすべて米国仕様。数値は換算値。

           
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