フォルクスワーゲン ゴルフ GTEに試乗|Volkswagen
CAR / IMPRESSION
2016年3月23日

フォルクスワーゲン ゴルフ GTEに試乗|Volkswagen

Volkswagen Golf GTE|フォルクスワーゲン ゴルフ GTE

フォルクスワーゲン ゴルフ GTEに試乗

環境問題に対する意識の高い人には魅力的なエコカー

フォルクスワーゲン初となるハイブリッドモデル「ゴルフ GTE」。GTを車名に冠した同モデルはどのような走りをみせるのか。モータージャーナリストの大谷達也氏が試乗した。

Text by OTANI TatsuyaPhotographs by ARAKAWA Masayuki

プラグインハイブリッドの価値

いささか乱暴な言い方をすると、プラグインハイブリッドが売れるか売れないかは、そのクルマが持つ価値をどう説明するかによって決まるような気がする。

「短い距離だけですが電気自動車のようにも使えて、バッテリーが切れたらエンジンでも走れますが、値段はちょっと高いですよ ――

私も何度かこんな説明をしたような気がするが、これではプラグインハイブリッドのメリットがどこにあるかが分かりにくい。ユーザーが振り向いてくれなかったとしても仕方ないだろう。

Volkswagen Golf GTE|フォルクスワーゲン ゴルフ GTE

Volkswagen Golf GTE|フォルクスワーゲン ゴルフ GTE

その点、ポルシェやメルセデス・ベンツの戦略はうまい。彼らはプラグインハイブリッドモデルを、同等のパフォーマンスを持つガソリンエンジンモデルと変わらない価格で販売。ただし、カタログ燃費はプラグインハイブリッドのほうが良好なので「ほら、性能と値段は同じで燃費だけいいんだから、こっちのほうがお得でしょ?」と訴えかけているのだ。

ガソリンエンジンモデルには必要のないバッテリーやモーターを積まなければいけないのに、なぜプラグインハイブリッドモデルの値段を安く抑えられるかといえば、エンジン排気量をガソリンエンジンモデルよりひとまわりかふたまわりほど小さくしているからだ。この場合、エンジン単体の性能はガソリンエンジンモデルに劣るが、エンジンと電気モーターの性能を合算した“システム出力”で見れば、ガソリンエンジンモデルに匹敵する性能を獲得できる。それでもガソリンエンジンモデルと同等の価格とするにはかなりの努力が必要だろうが、ポルシェやメルセデスはそうした課題に取り組むことでプラグインハイブリッドのセールス拡大に挑んでいるのだ。

Volkswagen Golf GTE|フォルクスワーゲン ゴルフ GTE

フォルクスワーゲン ゴルフ GTEに試乗

環境問題に対する意識の高い人には魅力的なエコカー (2)

燃費はゴルフ ハイラインの19.9km/ℓを20パーセントほど凌ぐ23.8km/ℓ

いっぽうのフォルクスワーゲン「ゴルフGTE」は、プラグインハイブリッドのメリットを“スポーティ”という観点から打ち出している。そもそもモデル名からして、ゴルフのスポーティグレードである“GTI”とよく似た“GTE”である。この名を聞いただけで、VWファンであればどんな性格のクルマかが、たちどころにして理解できるだろう。

さらにフォルクスワーゲンはボタン操作ひとつで選択できる“GTE”というドライブモードを設定。エンジンと電気モーターのパフォーマンスをフルに引き出すことで、GTIに匹敵する加速性能を達成するとともに、エンジンサウンドの面でも独自のチューニングを施し、スポーティな雰囲気を満喫できるように工夫している。

Volkswagen Golf GTE|フォルクスワーゲン ゴルフ GTE

Volkswagen Golf GTE|フォルクスワーゲン ゴルフ GTE

実際に試乗してみると、ゴルフGTEの第一印象は意外にも穏やか。乗り心地もGTIとは異なり、普通のゴルフ ハイラインなどと変わらないソフトで快適なもの。普通に走っている範囲でいえば、他のゴルフ同様、エンジン音はほとんど聞こえないし、エンジンのパワー感もハイラインと同等。なにしろ、勇ましい名前は与えられていても、GTEのエンジンはそれこそハイラインと基本が同じ1.4リッター TSI。電気モーターの力でも借りなければ加速性能だってそうそう大きく変わるはずはないのだ。

しかも、ドライブモードの“E”を選択すれば電気自動車として走行できるので、エンジンは停止してさらに静かなドライビングが楽しめる。おまけに走行時のCO2排出量はゼロだから“エコ心”だって満足させられる。別にGTEなんて名前をつけなくても、これで十分といえなくもない。

そのうえゴルフGTEの燃費は外部充電に頼らなくても良好で、JC08モードのハイブリッド燃費は23.8km/ℓ。ゴルフ ハイラインの19.9km/ℓを20パーセントほど凌ぐ経済性を実現しているのだ。

これで値段がゴルフGTIと変わらなかったら、GTEは爆発的な人気を博していたかもしれない。けれども、GTEの価格はGTIをちょうど100万円上回る499万円。クリーンエネルギー自動車に与えられる補助金は約38万円で、そのほかにもエコカー減税などが上乗せされて57万円ほどの優遇が受けられるけれど、それでもGTIにはまだ届かない。ちょっぴり微妙な立ち位置だ。

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フォルクスワーゲン ゴルフ GTEに試乗

環境問題に対する意識の高い人には魅力的なエコカー (3)

価格と商品性のバランスに改善の余地

フォルクスワーゲンはスポーティをキーワードとしてプラグインハイブリッドのメリットを打ち出そうとした。けれども、「他の性能や価格はガソリンエンジンモデルと同等だけれど、燃費だけは突出していい」とか「パフォーマンスは断然こっちのほうが上」というところにはいたっていない。「ここに少しメリットがあって、あそこにもちょっと利点があるけれど、価格はちょっぴり高い」のレベルにとどまっているのだ。

Volkswagen Golf GTE|フォルクスワーゲン ゴルフ GTE

Volkswagen Golf GTE|フォルクスワーゲン ゴルフ GTE

「だからゴルフGTEに魅力はない」と切り捨てるつもりもない。こまめに充電しながら走行すれば、全走行距離に占めるEV走行の比率が高まってCO2削減に貢献できる。つまり、環境問題に対する意識の高い人にとっては、今のままでも十分に魅力的なエコカーと映ることだろう。

ただし、普通の人が何の躊躇もなくプラグインハイブリッドを選ぶようになるには、価格と商品性のバランスがもう少し改善される必要があるのではないか。もっとも、あと数年でバッテリーの性能は格段に進歩するとも言われているから、プラグインハイブリッドが当たり前になる時代もそれほど先のことではないかもしれない。

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Volkswagen Golf GTE|フォルクスワーゲン ゴルフ GTE
ボディサイズ│全長 4,265 × 全幅 1,800 × 全高 1,480 mm
ホイールベース│2,635 mm
トレッド 前/後|1,535/1,510 mm
車両重量|1,580 kg
エンジン│1,394 cc 直列4気筒 ターボ
エンジン最高出力│110 kW(150 ps)/ 5,000-6,000 rpm
エンジン最大トルク│250 Nm(25.5 kgm)/ 1,500-3,500 rpm
電気モーター最高出力|80 KW(109 ps)
電気モーター最大トルク|330 Nm(33.6 kgm)
トランスミッション│6段DSG(デュアルクラッチ)
駆動方式│FF
最小回転半径|5.2 m
サスペンション 前|マクファーソンストラット
サスペンション 後|4リンク
ブレーキ 前│ベンチレーテッドディスク
ブレーキ 後│ディスク
タイヤ 前/後|225/45 R17
ハイブリッド燃料消費率(JC08モード)|23.8 km/ℓ
充電電力使用時走行距離(プラグインレンジ)│ 53.1 km/ℓ
EV走行換算走行距離(等価EVレンジ)│ 53.1 km/ℓ
CO2排出量(JC08モード)|98 g/km
価格│499万円

問い合わせ先

フォルクスワーゲン カスタマーセンター

0120-993-199

http://www.volkswagen.co.jp

           
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