国内導入されたゴルフ GTIに早速試乗|Volkswagen
Volkswagen Golf GTI|フォルクスワーゲン ゴルフ GTI
大人のちょい辛スポーツハッチ
フォルクスワーゲン ゴルフ GTIに試乗
7代目「ゴルフ」の導入から遅れること4ヶ月、待望の「GTI」が日本でも発表された。まったくあたらしいプラットフォームに、220psの2リッターターボエンジンを搭載し、ゴルフ伝統のスポーツモデルは、この新型でどう進化したのか。小川フミオが富士スピードウェイを舞台にテストドライブ。
Text by OGAWA FumioPhotographs by ABE Masaya
ナチュラルな操縦感覚
高性能ゴルフにとどまらず、自動車界のアイコンともいうべき「ゴルフ GTI(369万円)」が、2013年9月25日に日本で発表・発売された。あたらしいプラットフォームを与えられた「7代目ゴルフ」にやや遅れて、220psの2リッターターボエンジンを搭載しての登場だ。
新型ゴルフ GTIをして、フォルクスワーゲン(以下VW)は「操縦性は高性能スポーツカーの領域へ」と謳う。先代より出力は9psアップで220psに、トルクは70Nm増え350Nmになった。それが6段DSG(デュアルクラッチギアボックス)を介して前輪へと伝えられる。くわえて、XDS+、ESC Sport、プログレッシブステアリング、そしてDCCと、安定したスポーツ走行を実現する、数かずの装備が採用されているのも注目点だ(これらについては後述)。
同時に、エンジンは高効率化されて燃費が先代よりリッターあたり2.9km延びたのも、新型GTIの特徴だ。排気の質がよくなっていることも強調されている。現行のユーロ5より排ガス中のNOx(窒素化合物)の含有量の削減を定めたユーロ6の施行は2014年が予定されているが、新型GTIは基準をクリアした最初のクルマとVWは胸を張る。
そして、ゴルフ7で大いに注目されている、アダプティブクルーズコントロール、シティエマージェンシーブレーキ、さらにレーンキープアシストなど、クルマが走行安全性をサポートする多くの機能も用意される。
操縦感覚は、ナチュラル。ただしそのナチュラルさには、急なカーブや濡れた路面で、不安感なくハイスピードドライビングができる、じつはとてつもなく高いポテンシャルが含まれている。そんなすごさを垣間見せるクルマに仕上がっている。
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フォルクスワーゲン ゴルフ GTIに試乗 (2)
伝統のタータンチェック柄
新型ゴルフ GTIは、GTIでありながらGTIでない? そんな感想を抱くのが、フロントグリルのデザインだ。従来はトレードマークになっていた赤いラインが、グリルを取り囲むのでなく、ヘッドランプまで含むまっすぐな線になった。それによって、実際に先代にたいして10mm増えた全幅がよりワイドに見える視覚効果をもたらしている。
外観上の特徴は、ドライビングランプが埋め込まれた専用フロントバンパ-、赤いブレーキキャリパー、GTIバッジ(車体側面にも新設された)、独自のデザインのリアコンビネーションランプなど。すごみはなく、あくまでわかるひとはわかる、といった控えめな演出だ。
内装は伝統のタータンチェック柄のシート生地が引き継がれている。ただしチェック柄は微妙にデザインがことなっており、先代は「ジャッキー」と名づけられていたパターンが7代目ではアップデートされ「クラーク」と呼ばれるデザインに変更されている。座り心地はよく、立体的な造形のステアリングホイールとともに、気持ちのよいいインテリアになっている。速度計と回転計の針は、エンジン始動時に一度大きく時計まわりに触れてから戻るという演出がほどこされている。
MQBとよばれる新世代のエンジン横置き用プラットフォームの採用で、ホイールベースが60mmも延長されたことにともない、室内も広くなっている。恩恵のひとつは、後席のレッグルームが15mm拡大したことだ。これはスタンダードのゴルフと同様。後席のヒップポイントは下げられ、「より落ち着いて座っていられる」(輸入元のフォルクスワーゲン・グループ・ジャパン広報担当者)ようになっている。
タイヤはVWが「ブルックリン」と名付けたホイールと組み合わされる17インチが標準。オプションで「オースティン」ホイールと18インチ、および「サンチャゴ」ホイールと19インチという組み合わせも選択可能だ。
スポーツサスペンションの装着で10mm下がった車高とともに、外観に迫力が欲しい向きには大径ホイールの準備はうれしいにちがいない。
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フォルクスワーゲン ゴルフ GTIに試乗 (3)
コーナリング性能を高めるXDS+
新型ゴルフGTIのプレス向け試乗会は、正式発表前に富士スピードウェイでおこなわれた。ショートコースにパイロンを立ててのドライビング体験がひとつ。それに、さきに少し触れたXDS+やESC Sport、それにプログレッシブステアリングを体験できるスラローム走行がくわえられた。
ゴルフGTIはスポーツカーだとVWは謳うが、印象的にはたいへん大人っぽい。フランスやイタリアのGTのように、はじけるようなダッシュ力や、超がつくぐらいクイックなステアリングに幻惑されるということはない。どっしりしていて、それでいて、アクセルペダルの微妙な踏み加減へのレスポンスは速い。
並べて立てられたパイロンのあいだを縫って走るスラローム走行では、エンジントルクが1,500rpmから最大になるため力強い瞬発力はあるし、ハンドルの切り込み量はそれほど大きくなくても車体は軽快に向きを変える。
スポーツサスペンションはノーズをしっかり抑え、次の挙動へとそなえるのにじゅうぶんな働きをしめす。車体が先代より全長で65mm延び、車体も10kg軽くなったとはいえ1.4トンになんなんとするクルマとはおもえない軽やかさだ。
この理由のひとつが、プログレッシブレートを採用したステアリングシステムにある。ラックの歯の間隔を一定にせず、ハンドルの切り方によって前輪の角度が変わる。そのため急カーブなどでは、少ない切り込み量でも舵角が大きくつくため、車体のコントロールがやりやすくなる。別の言葉でいうと、気持ちよくスポーツ走行ができることになる。
XDS+は従来のXDS(電子制御式ディファレンシャルロック)の発展形で、特徴は、コーナリング性能を高めるところにある。具体的には、走行状況をみながら、車両の各輪のブレーキ制御をおこなう。カーブを曲がるときにクルマが外に膨らんでいこうとする、アンダーステアを抑え、それによってトルクが外側へと逃げるのを防ぎ、そのぶんパワーをタイヤに伝達する。これによって、より安全でより速いコーナリングを実現する。
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安全マージンの高さに感心
新型GTIは、さらにESCとDCCによるスポーツモードの設定もある。ESC(エレクトロニック・スタビリゼーションプログラム)は、カーブを曲がるさいのブレーキ介入や、エンジン出力を抑制するプログラムだが、GTIのESC Sportではシステムの介入速度を遅くするプログラムも選べるようになっている。それによってドライバーは自分で車両をコントロールする領域が広がり、腕がたつひとなら、より機敏にクルマを操縦できる。
DCC(アダプティブシャシーコントロール)は、新型ゴルフGTIで第2世代が採用されている。コンフォート、ノーマルにくわえスポーツモードが設定されており、車輪のポジションセンサーと加速度センサーにより、ダンパーのバルブを制御するもの。第2世代は4つのダンパーを独立制御するようになり、さらに応答性も高められている。スポーツモードでは、機敏なハンドリングが得られる。
このDCCとXDS+の効果は、ショートサーキットで速度を上げながらの走行でよくわかった。少々速度超過でカーブに入った場合に介入してきて、クルマのラインを修正するのを手伝ってくれる。あ、ふくらむ、とおもっても、GTIはなにごともなかったかのように、狙ったとおりのラインへと向かわせてくれるのだ。
気持ちよさを感じると同時に、安全マージンの高さに感心したというのが、いつわらざる感想だ。操縦していると、どんどんアドレナリンがわいてくるタイプのクルマではない。最近のライバル社の製品で似た例を探すと、メルセデス・ベンツ「A45 AMG」に通じる感覚とおもいだした。求められれば応えるが、クルマがドライバーを挑発したりはしない。ゴルフ GTIは新型になって、また少しおとなになった。そんな印象だ。
Volkswagen Golf GTI|フォルクスワーゲン ゴルフ GTI
ボディサイズ|全長4,275×全幅1,800×全高1,450 mm
重量|1,351 kg
エンジン|1,984cc 直列4気筒 直噴 ターボ
圧縮比|9.6 : 1
ボア×ストローク|82.5×92.8 mm
最高出力| 162 kW(220ps)/ 4,500-6,200 rpm
最大トルク|350 Nm/ 1,500-4,400 rpm
トランスミッション|6段オートマチック(6DSG)
駆動方式|FF
タイヤ 前/後|225/45R17
ブレーキ 前/後|ベンチレーテッドディスク(312x25mm) / ディスク(300x12mm)
最高速度|246 km/h
0-100km/h加速|6.5秒
燃費(JC08)|15.9/ℓ
CO2排出量|146 g/km
価格|369万円
フォルクスワーゲン カスタマーセンター
0120-993-199