新型フォルクスワーゲン ゴルフ トゥーランに試乗|Volkswagen
Volkswagen Golf Touran|フォルクスワーゲン ゴルフ トゥーラン
新型フォルクスワーゲン ゴルフ トゥーランに試乗
道具として使い倒したくなるクルマ
11年ぶりにフルモデルチェンジを受けた、フォルクスワーゲンのコンパクトミニバン「ゴルフ トゥーラン」。同社が誇る最新の生産方式「MQB」を採用し、最新の安全装備も満載した同モデルにさっそく試乗した。
Text by OGAWA FumioPhotographs by ARAKAWA Masayuki
コンパクトな外寸と機能性の高いインテリア
フォルクスワーゲン「ゴルフ トゥーラン」は、使い勝手のいいサイズのミニバンだ。全長4,535mm。4,265mmのゴルフとそう変わらないサイズでありながら、7人乗車と機能性は高い。
9年ぶりのフルモデルチェンジを受けたゴルフ トゥーランは、観た目の印象も好ましい。新型パサートにも通じる、水平基調のラインでシャープになったフロントマスクが魅力的だ。ファミリーから趣味用途まで、広い層にアピールするシャープなルックスだと感じられる。
エンジンは1.4リッター4気筒。従来型より出力で10ps増えて150ps(110kW)。トルクも30Nm増えて250Nmとなっている。それに対して重量は20kg軽減。「コンパクトMPV(注:マルチパーパスビークル)ではトップクラスのパフォーマンス」(フォルクスワーゲングループジャパン)と謳われる。変速機は7段ツインクラッチの2ペダル式で、前輪駆動だ。
トゥーランの最大の特徴は、コンパクトな外寸と、機能性の高いインテリアの組み合わせだろう。従来型より130mm長くなり、35mm幅広くなり、30mm低くなったボディに対して、ホイールベースは110mm延長。2列目には3つとも独立して前後スライドするシートが、3列目にはワンタッチでたためる2つのシートが備わる。
前席以外の5つのシートは折りたたむと、段差のないラゲッジフロアを作れる。3列目のシートをたたんだときの荷室容積は917リッターと大きい。さらに、2列目もたたむと1,857リッター。助手席のバックレストも折りたためる。コンパクトな外寸に対して驚くほどの収納力だ。サーフボードだろうが自転車だろうが、物理的に収納は可能である。なお3列目シートは足元のフロアはくぼんでいないため、大人が長時間はつらい。チャイルドシートにはぴったりだ。
モデルは3つ設定されている。エントリーモデルがTSIトレンドライン(284万7,000円)。その上がTSIコンフォートライン(317万円)。トップモデルがTSIハイライン(376万9,000円)。パワートレインは共通。受注生産のトレンドラインは装備が簡略化されていて、レーンキープアシストやアダプティブクルーズコントロールなどはオプションでも装着できない。
操縦性がけっこういいのは、驚くべき点だった。
Volkswagen Golf Touran|フォルクスワーゲン ゴルフ トゥーラン
新型フォルクスワーゲン ゴルフ トゥーランに試乗
道具として使い倒したくなるクルマ (2)
かつてのフランス車を連想させるシート
ゴルフ トゥーランは、道具としてクルマを“使い倒す”という目的にぴったりだ。まるでアウトドアの道具や、レザージャケットや、ひょっとした料理鍋のように、毎日使って、どんどん“体なじみ”をよくしていく。そんな感覚で乗りたくなる。
TSIハイラインは、装備が豊富な上級モデル。シートはマイクロフリースを使った、新しい触感が新鮮だ。じつは座ってすぐ感心するのがこのシートだ。座面クッションに厚み感があり、ソフトに体がじわっと沈む感覚である。ほかのクルマにはない、いい感じで、1980年代までのフランス車を連想した。振動吸収性にもホールド性にも優れ、おそらく長距離も疲労度は少ないだろう。これだけでもTSIハイラインが欲しくなったほどだ。
走りは、1.4リッターエンジンで十分だと感じた。最大トルクが1,500rpmから出る設定のため、発進加速といい中間加速といい、かったるさは感じられない。驚くほどの加速性はないにしても、安定性と安心感を求められるこのクルマのキャラクターに合っている。好ましさがある。
TSIハイラインには、エコやスポーツなども選べる「ドライビングプロファイル機能」が備わっている。高速道路ではエコや、ワインディンルロードではスポーツなど、選ぶ楽しみがある。しかしいっぽうで、それを持たないTSIコンフォートラインでも、けっして悪くない走りが楽しめる。ゴルフ トゥーラン自体、もともとの出来がいいのだろう。
ハンドリングは、ひとことで言うと安定。中立付近での遊びもそれなりに設けられているし、スポーティとはいえないが、疲れない運転を可能にしている。ライン取りは正確で、クルマがドライバーをリードするところがあるのがスポーツカーだとしたら、ゴルフ トゥーランは、ドライバーの意思に忠実。乗っていると、どんどんなじんでいく。これもいい感じのドライブフィールだ。
静粛性は、無音とはいかないが、時速100kmの巡航で音に疲れることはない。ウィンドシールドまわりと路面からの擦過音が聞こえるが、けっして過大ではない。従来型よりウィンドシールドを寝かして空気抵抗値を下げるなどしているそうで、それも奏功しているのだろう。
運転していて感心したのは、レーンキープアシストなどのナチュラルさだ。
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新型フォルクスワーゲン ゴルフ トゥーランに試乗
道具として使い倒したくなるクルマ (3)
充実の安全装備
新型ゴルフ トゥーランは、安全装備を充実させているところにも特徴を持つ。フォルクスワーゲングループジャパンでは「オールインセーフティ」の名で、予防安全、衝突安全、二次被害防止という3つのステージで安全技術の強化を謳う。
予防安全は「アダプティブ クルーズコントロール」「レーンキープ アシスト」「ドライバー疲労検知システム」「プロアクティブ オキュパント プロテクション」「プリクラッシュ ブレーキシステム」からなる(一部はオプション)。
衝突安全は「9エアバッグ」「ボディ剛性」、後席一体型の「インテグレーテッドチャイルドシート」、それに歩行者保護のための「アクティブ ボンネット」。二次被害防止は「ポスト コリジョン ブレーキシステム」。追突された際に先行車への玉突き追突で事故が拡大するのを防ぐためのシステムである。
衝突実験のビデオを見せられると、いかにゴルフ トゥーランのボディが、乗員保護のためによく設計されているか印象ぶかい。そしてもうひとつ、ドライブしていて感心するのが、ナチュラルさなのだ。
ナチュラルな感覚として感心したのは、レーンキープ アシストだ。コンピューター制御のモーターによってレーン逸脱を防止し、直進性を保つためのデバイスである。このシステムが作動するとき、従来はぐぐっと力強くステアリングホイールが動いたが、ゴルフ トゥーランではその“不自然さ”が払拭されている。機械が介入する感覚がほぼ皆無といってよい。
聞けば、ゴルフ トゥーランのレーンキープアシストは最新世代だという。安全装備の未来は、機械との接点を感覚的にシームレスにするということなのだと感じられた。安全性を含めて、より近いところに存在するクルマとなった。そのことがなにより印象的なのだ。
Volkswagen Golf Touran|フォルクスワーゲン ゴルフ トゥーラン
ボディサイズ|
(TSIトレンドライン)全長 4,535 × 全幅 1,830 × 全高 1,640 mm
(TSIコンフォートライン)全長 4,535 × 全幅 1,830 × 全高 1,660 mm
(TSIハイライン)全長 4,535 × 全幅 1,830 × 全高 1,660 mm
ホイールベース|2,785 mm
車両重量|1,560 kg
エンジン|1,394cc 直列4気筒DOHCターボ
最高出力|110 kW(150 ps)/5,000-6,000 rpm
最大トルク|250 Nm(25.5 kgm)/1,500-3,500 rpm
トランスミッション|7段DSG
駆動方式|FF
サスペンション 前|マクファーソンストラット
サスペンション 後|4リンク
定員|7人
燃費(JC08モード)|18.5 km/ℓ
タイヤ|205/60R16(TSIハイラインは215/55R17)
価格|(TSIトレンドライン)284万7,000円、(TSIコンフォートライン)317万円、(TSIハイライン)376万9,000円
フォルクスワーゲン カスタマーセンター
フリーダイヤル0120-993-199
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