新型メルセデス・ベンツ Vクラスに試乗|Mercedes-Benz
Mercedes-Benz V Class|メルセデス・ベンツ Vクラス
新型メルセデス・ベンツ Vクラスに試乗
ワンボックス スタイル リムジンとしての資質が大幅アップ
2015年にフルモデルチェンジを受け、3代目へと進化したメルセデス・ベンツのミニバン「Vクラス」。日本への導入がスタートしたばかりの同モデルに、モータージャーナリストの大谷達也氏がさっそく試乗した。
Text by OTANI TatsuyaPhotographs by ARAKAWA Masayuki
克服された弱点
国際試乗会で海外を訪れた際、かなりの確率で私たちを空港まで出迎えにきてくれるのがメルセデス・ベンツ「Vクラス」。背の高い大型ワンボックスカーゆえに3列シートでも車内は広々。ラゲッジスペースの奥行きはやや短めながら4人分のスーツケース(ただし機内持ち込みサイズ)をラクラク呑み込むスペースユーティリティの高さは実に心強く、このカテゴリーでは日本未導入のフォルクスワーゲン「トランスポーター」と並ぶ“最強ジャーマン・ミニバン”として知られている。
もっとも、弱点がないわけではなかった。大きいボディに大きな開口部と不利な条件が揃っているのでボディ剛性はやや心許なく、これが乗り心地に悪影響を与えていたのは紛れもない事実。端的にいえば路面から鋭い衝撃が加わったときの、いわゆるハーシュネスの処理が苦手で、ドシンというショックのあとに短いながらも軽い振動が尾を引くケースが少なくなかった。
また、ゴードン・ワーグナーがチーフデザイナーに就任して以降のメルセデスは内外装のクォリティ感が大幅に向上したけれど、つい先日まで現役だった従来型はこの面でも最新の水準には達しておらず、「メルセデスにしては高級感が物足りない」という傾向がなきにしもあらずだった。
そのVクラスが本国ドイツで3代目に生まれ変わったのは2014年のこと。以来、ヨーロッパで何度かお世話になったが、2列目ないし3列目に腰掛けただけでもボディ剛性が大幅にアップしたことは明らかで、おかげで乗り心地もぐんと向上。デザインとクォリティ感もワーグナー路線に一新されているのが印象的で、日本導入が心待ちにされる1台だった。
Mercedes-Benz V Class|メルセデス・ベンツ Vクラス
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ワンボックス スタイル リムジンとしての資質が大幅アップ (2)
「C220d」よりも静か
その新型Vクラスへの試乗がようやくかなった。OPENERSのために用意されたのはシリーズ中もっとも豪華なV220dアヴァンギャルド・エクストラロング。ちなみに新型Vクラスのボディには標準、ロング、エクストラロングの3タイプが用意されていて、ロングは標準よりもリアオーバーハングが245mm延長され、エクストラロングはロングよりも230mmホイールベースが伸ばされている。つまり、エクストラロングの全長は標準より475mmも長いことになる。「Sクラス」でいえば、ロングホイールベース仕様をさらにストレッチしたマイバッハのようなものだ。
モデル名から察せられる通り、エンジンは2.2リッターのターボディーゼル。本国では同じ排気量から136ps、163ps、190psという3種類のバリエーションが用意されるものの、日本仕様はすべて163psとなる。「それで2.5トン(正確には2490kg)のボディを本当に走らせられるの?」と心配になるのは当然かもしれないけれど、これが思いのほかよく走る。
試乗は1名乗車だったが、発進の際の身のこなしも軽快なら、10パーセント以上の上り勾配をかなりのペースで加速していく力強さも備えている。しかも、ディーゼル特有のガラガラ音がほとんど耳に届かないことにも驚かされた。なにしろ、同じエンジンを積むC220dよりも静かなんじゃないかと思わせるほど静粛性が高いのだ。本来、エンジンとドライバーの位置関係が近いキャブオーバータイプはエンジン騒音の面でセダンより不利とされているから、Vクラスの遮音がいかに優れているかが分かるだろう。
乗り心地については、パッセンジャーとしてヨーロッパで体験したことを追認する格好となった。ボディが頑丈になったおかげで足回りを自由に、かつしなやかに動かすことが可能となり、これが快適性を大きく向上させるのに役立っているようだ。それでも、路面の目地段差よりもう少し大きなギャップを勢いよく通過したときにはボディ全体が軽く微振動するものの、ホイールベースが3.4メートル(!)を越すミニバンであることを考えれば、これは致し方ないことかもしれない。
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ワンボックス スタイル リムジンとしての資質が大幅アップ (3)
ワインディングロードでも腰高な印象がない
ボディ剛性の向上はハンドリング面にも好影響を与えていた。高速走行時でもステアリングにそっと手を触れているだけで一直線に進んでいく。とりわけステアリングの中立付近にあいまいな部分が認められない点は高く評価したい。そのいっぽうで、ワインディングロードを結構なペースで飛ばしても、腰高な印象がまるで感じられなかったことも驚きのひとつだった。
超ロングホイールベースが後席のパッセンジャーにゆったりとしたスペースをもたらすことはいうまでもない。しかも、2列目や3列目のシートにも、1列目と同じしっかりとしたシートが用意されていることは、日本車にあまりにないヨーロッパ車ならではの美点。真面目に作られたシートは単に掛け心地がいいというだけでなく、クラッシュ時の安全性にも好ましい影響を及ぼすはず。こうした姿勢は日本車メーカーにも見習ってほしいと思う。
さらに、リアオーバーハングが245mm延長された恩恵で、小型のスーツケースだけでなく中型のものでさえ縦に並べて積めるくらいラゲッジスペースは拡大された。空港への送迎用として考えた場合、このスペースユーティリティは大きな意味を持っている。
内外装のクォリティが改善されたのは、デザインが変わったことに加えて、これまでと同じ商用車用のリトアニア工場での生産ながら、ラインを商用車とは別立てにした影響もあるらしい。ワンボックス・スタイル・リムジンとしての資質が大幅に向上した新型Vクラス、最上級版のV220dアヴァンギャルド・エクストラロングでさえ730万円と価格がお手頃な点も大きな魅力のひとつといえそうだ。
Mercedes-Benz V 220 d AVANTGARDE Extra-long
メルセデス・ベンツ V 220 d アヴァンギャルド・エクストラロング
ボディサイズ|全長 5,380 × 全幅 1,930 × 全高1,480 mm
ホイールベース|3,430 mm
トレッド 前/後|1,665 / 1,645 mm
重量|2,490 kg
最低地上高|105 mm
エンジン|2,142 cc 直列4気筒 直噴DOHC ターボ付ディーゼル
ボア×ストローク|83.0 × 99.0 mm
最高出力| 120 kW(163 ps)/ 3,800 rpm
最大トルク|380 Nm(38.7kgm)/ 1,400-2,400 rpm
トランスミッション|7段AT(7Gトロニック プラス)
駆動方式|FR
ブレーキ 前/後|ベンチレーテッドディスク / ディスク
タイヤ 前/後|245/45R18
最小回転半径|6.0 m
燃費(JC08モード)|15.3 km/ℓ
トランク容量|1,410-5,500 ℓ
ハンドル位置|右
価格|730万円
メルセデスコール
0120-190-610
http://www.mercedes-benz.co.jp/