新型アウディ Q7に試乗|Audi
CAR / IMPRESSION
2015年12月28日

新型アウディ Q7に試乗|Audi

Audi Q7|アウディ Q7

新型アウディ Q7に試乗

疲れ知らずの長距離ツアラー

2016年の春に日本への導入が予定されている新型アウディ「Q7」。それに先立ち、2015年10月ドイツで開催された国際試乗会に参加したモータージャーナリスト小川フミオ氏が、いち早く同モデルの真価をリポートする。

Text by OGAWA Fumio

300kgのダイエットに成功

プレミアムSUVであるアウディ「Q7」が新しくなった。シャシーは全面的に再設計。ボディは従来型より300kg軽量に。エンジンは効率向上。さらに豊富なドライバー支援システムが特徴だ。余裕あるサイズの車体と組み合わされたクワトロシステムも、ファンに強くアピールする内容だ。

アウディのSUVレンジは、読者のかたがたは先刻ご承知のように、Qと名づけられている。Q7はその頂点に位置づけられるモデルだ。全長は5.05メートル、全幅は1.97メートル、全高は1.74メートル。威風堂々とした存在感を評価するユーザーは、日本でも多かった。日本で発売後、「歩行者保護法」なるものが施行されて、輸入中止となっていた。新型で満を持しての“再”登場だ。

Audi Q7|アウディ Q7

Audi Q7|アウディ Q7

新型Q7は、2015年の東京モーターショーに参考出品され、注目を集めていたクルマである。欧州ではすでに路上を走り出している。本国ではディーゼルが中心となる模様で、ディーゼルにもプラグインハイブリッドが設定されている。対する日本は、まず、3リッターV型6気筒のQ7 3.0TFSIクワトロと、2リッター4気筒エンジン搭載のQ7 2.0TFSIクワトロが導入されるという。時期は2016年上半期と、輸入元のアウディジャパンではする。そのあと、2リッターガソリンエンジンのプラグインハイブリッドモデル導入が計画されている。

新型Q7で注目すべきはパッケージだ。従来型と比べて全高はほぼ同一ながら、全長は 35mm短くなり、全幅も15mm狭くなっている。それでいて、前席と後席の感覚は21mm拡大しているのだ。ヘッドルームも前席で41mm、後席で23mm空間に余裕が生まれているのだ。ホイールベースは2.99メートルである。

Audi Q7|アウディ Q7

Audi Q7|アウディ Q7

スタイルは、従来型の特徴をうまく残したものだ。それでいて新しい。新型Q7をショーで観た時は、四角さが強調された印象だった。グリルも、ヘッドランプとつながった新世代の意匠だし、アウディデザインはこんなふうに新しい時代に入ったのかと思ったものだ。しかし実物は、ボディ各所に抑揚がしっかりつけられていて、面の張りや繊細なキャラクターラインによる上質感がしっかりある。往年のアウディ「クワトロ」とのつながりも意識したという。

ドライブトレインは(もちろん)クワトロシステムを搭載。このフルタイム4WDシステムに、8段オートマチック変速機が組み合わせられる。駆動力配分は通常、前輪40パーセント、後輪60パーセント。路面状況によっては、最大で前に70パーセントから、後ろに85パーセントのあいだでトルク配分が変化する。ブレーキを使った前後輪の駆動力制御でコーナリング性能を上げるトルクベクタリングも備わる。メカニカルセンターデフと組み合わされて、通常路面ではスポーティな走りを実現するとアウディでは謳う。

大幅な軽量化と、効率にすぐれる新世代のエンジン。では走りは?

Audi Q7|アウディ Q7

新型アウディ Q7に試乗

疲れ知らずの長距離ツアラー (2)

“秘密兵器”が満載

日本での発売が予定されている2モデルのうち、今回ドイツで試乗したのは、Q7 3.0TFSIクワトロだ。245kW(335ps)の最高出力と、444Nmの最大トルクを持つ。ちなみに、2リッター4気筒エンジンでも、最高出力185kW(252ps)、最大トルク370Nm。2リッターとは思えない数値を特徴とする。3リッターモデルに乗った瞬間(といっていいほどすぐに)、驚くほどパワフルなのに驚いた。

444Nmのトルクは体感的にもかなりの力強さを感じさせ、ぐいぐいと加速する。アクセルペダルを軽く踏んだだけで、全長5メートル超、全高1.7メートルの巨体を押し出していく。そして加速感は息つぎなしに、高速まで続く。アウディはつねにドライバーズカーを作ることを旨としている、と思うのだが、それが確信に変わるような出来だ。

コーナリングも、曲がっていく時の感覚は、軽快で気持ちいい。ステアリングホイールの切り込みに対して、車体の質量をいっさい感じさせないほどだ。車体の反応は鋭い。アウディが重心高を下げたことを強調するとおり。きちんと成果が上がっている。

Audi Q7|アウディ Q7

Audi Q7|アウディ Q7

試乗したのは、ミュンヘン空港から、アウディ本社があるインゴルシュタットまで。約100kmほどアウトバーンを走った。日本でもアウディ「TT」に採用されているバーチャルコクピットにはその区間の制限速度が表示される、ありがたい機能が備わる。「100」になったり「120」になったり、そして時どき「白丸に車線」。速度無制限の区間に入ったことを意味する。

Q7 3.0TFSIクワトロは、SUVとは思えない中間加速の瞬発力と、高速での伸びのよい加速と、驚くほどの静粛性を、すべて同時に味わわせてくれた。新世代のSUVとして“秘密兵器”が満載されている。ひとつは、「アダプティブ エア サスペンション」。金属スプリングとダンパーの代わりに、電磁ポンプによる圧搾ガスが使われるサスペンションシステムだ。メリットは、路面変化に対応する、演算処理能力の高さ。

操舵はつねに安定。足回りはつねにしなやかに動いてくれる。疲れ知らずの長距離ツアラーで、ゴルフ場も雪山も最適な目的地になるだろう。高速道路でも山道でもオフロードでも、脚回りの伸び縮み、それに加えてショックの吸収にすぐれる。ただし、日本仕様での採用は「未定」(輸入元のアウディジャパン)とのことだ。

Audi Q7|アウディ Q7

Audi Q7|アウディ Q7

コーナリングは、ステアリングホイールの切り込みに対しての反応はするどい。しかも、レールに乗ったように正確なラインをとれる。車体のロール制御も効いていて、ドライブ感覚をひとことで言うと、スポーティだ。これにはもうひとつの“秘密兵器”が効果を発揮している。

その、新型Q7の注目すべき技術は、「4輪ステアリング」(標準装備)だ。ステアリングホイールを切った時に、走行状態に応じて、後輪も操舵するシステム。高速では前輪と同じ方向に角度をつけることで素早いコーナリングを実現。低速時は、前輪と逆の方向を向けることで、取り回し性の向上を狙っている。操舵角は最大5度もあるそうだ。

標準装備の「アウディ ドライブセレクト」も、ドライバーズカーとしてのQ7のキャラクターをより明確にするのに役立っている。コントローラーの意匠が変わって、従来より使いやすくなっているのが、まず印象的だった。内容はさらに濃い。コンフォートやスポーツ、さらにオフロードなど、7つもの走行モードを備えるのだ。

アダプティブ エア サスペンションには、ドライブセレクトが組み合わされる。それによって、ステアリング、サスペンション、エンジントルクが統合制御される。結果、ファミリーカーとしても、スポーティSUVとしても、すぐれた性能を発揮してくれるのは嬉しい。

室内は最新のアウディのデザインテーマが用いられている。

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新型アウディ Q7に試乗

疲れ知らずの長距離ツアラー (3)

小さくなったボディと拡大された室内空間

新型Q7の室内は、クラス最高の静粛性が謳われる。車体の空気抵抗を表すCd値は、0.32。かなり低い。ディテールへの気配りはぬかりない。たとえば、サイドミラー取り付け位置も入念に検討されたという。形状もさることながら、ボディのショルダー部分に設置したことで、空力的な効果が上がっていると、アウディでは説明する。

パッケージングは、先に触れたように、このクルマにおける大きな注目点だ。全長は従来型より短くなっている一方、室内のスペースは拡大している。第一列と第二列の間隔は広がり、乗員のヘッドルームも拡大している。二列目は3つのシートが個々にバックレスト角度調節機能を備えているうえ、前後に最大110mmのスライドが可能。ファミリーカーとして強力な装備だ。第三列にもシートを備えていて、これを立てた状態でも荷室容量は295リッター確保されている。通常は770リッターと広大だ。

Audi Q7|アウディ Q7

Audi Q7|アウディ Q7

コクピットの居心地のよさも特筆したい。まもなく日本での発売が開始される新型「A4」にも通じる、新世代の意匠が採用されている。水平基調のレイヤーが重ねられたようなダッシュボードに加え、高めのセンターコンソール。それによって、ドライバーは囲まれた安心感を得ることが出来る。

コントロール類は一新された。最大の眼目は、画面表示を目的に応じて切り替えられるバーチャル コクピットである。インフォメーションもすべてここでチェックできるので、ドライバーの視線の移動がかなり少なくてすむ。ひとつの安全装備といってよい。

MMI(マルチ メディア インターフェイス)の操作も新しい。新世代のものは「オールインタッチ」と呼ばれ、音と触感(クリック感)によるフィードバックでブラインドタッチを可能にしている。操作手順も簡略化の方向という。馴れればパッドへの書き込みや二本の指で、地図画面のズームインおよびズームアウトが出来る。願わくば、右ハンドル仕様では、右手用のパッドが欲しい。ダッシュボードの右の片隅でもいいから、右手で文字が書ける位置にパッドを設置してくれると、使い勝手がよりあがりそうだ。無理かな。

Audi Q7|アウディ Q7

Audi Q7|アウディ Q7

ギアセレクターもデザインが新しくなった。ニブといって握りがより立体的に。加えて機能面でも新しさがつけ加えられている。親指の位置にパーキングポジションのセレクターボタンが配されたのだ。これはかなり使い勝手がいい。右ハンドルの日本仕様では左右逆の意匠になるとアウディジャパンでは説明してくれた。

質感の高い雰囲気と、実際の機能性の高さ。それに居心地のよい室内が加わり、より強力になった新型Q7。日本への導入が楽しみだ。

           
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