個性派ドレスウォッチ。ゴールデン・エリプス誕生50周年|PATEK PHILIPPE
PATEK PHILIPPE|パテック フィリップ
ラウンドとレクタンギュラー、双方の旨味を示す
黄金率から生まれた不朽のフォルム(1)
1968年に誕生した「ゴールデン・エリプス」は、今年、その誕生から50年を迎えることとなった。パテック フィリップではゴールデン・エリプスのアニバーサリーイヤーを祝すため、ふたつの新作を2018年のコレクションにラインナップ。なかでも注目は、レギュラーモデルとして登場した写真上のジャンボサイズモデルである。
Text by TSUCHIDA Takashi(OPENERS)
気になる丸み。シンプルなのに癖がある
そう、このモデル、非常にシンプルな形状をしているのに、なぜか気になるんですよ。
スペックリッチな饒舌さをひけらかさない佇まいが、かえって潔さを感じます。薄型で2針のドレスウォッチゆえに、スーツやジャケットスタイルは当たり前に合いますが、謎の丸みが個性となって、カジュアルにも合わせたくなります。
ちなみに“謎”とは最大の褒め言葉です。だって、そうじゃありませんか? ミステリアスとは魅力的なこと。謎があるからこそ、ヒトは惹かれていくんです。
ゴールデン・エリプスは、パテック フィリップ最大のアイコンである「カラトラバ」に次ぎ、2番目に長い歴史を持ちます。円と長方形を融合させた独特のフォルムは、ギリシア時代の数学者が発見した黄金分率(1:1.6181)からインスピレーションを得ていますが、そんな難しい話を抜きにしても“薄くて”“平たくて”“丸みを帯びている”特徴が、控えめながらも強烈な個性を放ちます。
しかも知っているヒトは知っているという位置づけも、ノーブルで、非常によろしいかと。
実際、このゴールデン・エリプスが、パテック フィリップの現行ラインナップでは最薄のシリーズとなります(ケース厚5.9mm)。
その薄さを視覚的に強調するのが、平面度合いが際立つジャンボサイズ。ゴールデン・エリプスのファミリー・ツリーのなかでは、右から2番目。2008年に登場したW34.5×H39.5mmサイズのモデルです。
今回の新作も、このジャンボサイズ。ローズゴールドの温かみのある発色に、エボニーブラックの文字盤がシックに決まっていますが、サイズがジャンボで味付けは強め。そのフォルム、カラーコントラストのバランス感覚が、ズバッと鋭角に攻め込んでいると感じました。ちなみに、同色のカフスも同時ラインナップです。
Page02. ジュネーブの伝統を駆使したアニバーサリー限定モデル
PATEK PHILIPPE|パテック フィリップ
ラウンドとレクタンギュラー、双方の旨味を示す
黄金率から生まれた不朽のフォルム(2)
ジュネーブの伝統を駆使したアニバーサリー限定モデル
そしてこちらが現在では担い手が少なくなってしまったジュネーブ伝統のハンドクラフト技術を駆使する100本のみの限定モデル。ホワイトゴールドの文字盤に渦巻模様を手彫りしたうえ、黒エナメルを流し込んでいます。針穴を中心に、カラトラバ十字が刻まれているのも見て取れます。
ケース素材はプラチナ。プレシャスな素材使いに、プレシャスな技巧を駆使した、稀有なモデルとなっています。またこちらも同様にカフリンクスが登場していますが、別売りではなく、時計の付属アイテムです。
このハンドクラフト技術は、パテック フィリップが技術の継承のために人材を育成している賜物。業界への貢献がこうして製品となり、実を結んでいます。
プラチナのソリッドなニュアンスもまた、ゴールデン・エリプスの独特のフォルムを表現するのに適しています。優美な曲線、そのボリューム感を適度に抑え、むしろシャープに見せているのは、この素材ならではと言えそうです。
こういうアーティスティックなゴールデン・エリプスも、素晴らしい味わいがあります。