既存ダイバーズのネガティブ要素を全払拭。だからGPHGに選ばれた! 「ペラゴス FXD」徹底考察|TUDOR
WATCH & JEWELRY / FEATURES
2022年12月28日

既存ダイバーズのネガティブ要素を全払拭。だからGPHGに選ばれた! 「ペラゴス FXD」徹底考察|TUDOR

TUDOR|チューダー

腕時計界の祭典GPHG「ジュネーブウオッチグランプリ」において、またもやランクインしたチューダーの新作「ペラゴス FXD」(※このモデルは2021年後半にリリースされたモデル)。2022年は、ダイバーズウオッチ賞として選ばれました。このモデルに、なぜ焦点が当たったのか。そしてチューダーというブランドが持つ小気味よさを、オウプナーズ時計担当の土田貴史が超勝手に読み解きました。

Text by TSUCHIDA Takashi

“軽い”は正義。快適スタイルで、なおかつオンリーワンの個性がある

毎年の優秀モデルを選び抜く、腕時計界最大の授賞式典ジュネーブウオッチグランプリ(https://www.gphg.org/horlogerie/en)。今年は11月10日に、すべての受賞モデルが披露されました。
その結果一覧がこちらのページにあります。マニアを唸らすニッチモデルのオンパレードですね。腕時計の世界はこんなにも進化・趣向の細分化が進んだというのが一目瞭然。1970年代に吹き荒れたクオーツショックから立ち直り、機械式時計の付加価値をコツコツと積み上げていった最新結果というわけですが、私、若干の違和感アリです。
家宝にするならいいけれど、普段、身に着けるため”じゃない”ものばかり……。
ワインで言うなら、ボルドー、オー・メドックの1級シャトー。いま買ってもすぐに飲めない……そんなスタンスに似ていると思います。貴重すぎて、ふだん気軽に身に着けられない。ま、そもそも高額すぎて、フツーの会社員にはとても買えません。時計界が2極化するのは反対しませんが、私が知りたいのは、いますぐ飲んで美味しいワイン。いますぐ使って楽しめる時計です。
その観点から、もう一度受賞モデルを見ていくと、私の目に俄然輝いて見えているのはTUDOR「ペラゴス FXD」でした(2022年ダイバーズウオッチ部門受賞)。
特徴的なのが、ラグ形状。バネ棒が固定(fixed)されているから、FXDの名称が与えられています。ここにストラップを通すという潔い構造です。
フランス海軍の刻印“M.N.のイニシャルと製造年”があるバックケース。このエピソードは、先のリンク記事を参照してください。この画像で見てほしいのが、ケース脇に若干はみ出ているベゼルの太さ。両回転ベゼルを操作しやすいようにベゼル枠が太いのです。第一印象が強めに見えるのは、このベゼルの太さにあること、気づいてました?
そもそもチューダーとは、ロレックスの創設者が1926年に立ち上げたブランド。ロレックスと同等の堅牢性を信条としています。かつては共通部品も存在していました。今でこそ別ブランドとして独り立ちしていますが、ロレックスのモノづくりがバックボーンゆえ、モノとしての信頼性が高いのも特徴です。しかもコスパが圧倒的。2015年から自社ムーブメントを持ち、クロノメーターを取得する高精度を誇ります。
そういう納得できる確かなモノづくりが背景にありますが、なかでも「ペラゴス FXD」の出来がいい! まず腕に装着して、ものすごく軽いのです。ダイバーズウオッチは堅牢な作りですから、ケースが厚く、ケース径も大きくなります。したがってステンレススチールだと腕にズシンっとくるんです。ブレスレットまでステンレススチールだと重さは倍増。ちょっとした手首の鍛えになります。
もちろん、それがダイバーズウオッチらしさですから、NGではないのですが、オシャレは我慢と言われた時代は過ぎ去りました。やっぱり身に着けて快適なほうがいい。ゆえにチタン製のダイバーズはじつは使い勝手がとてもいいんです。あっ、チタン製のダイバーズなんていくらでもあるって思ってます? いえいえ、プレミアムブランドでは、意外とまだ少ないんです。
ペラゴスのファブリックストラップは、ネイビーにグレーのラインが1本入っています。スポーティですが、美しい光沢によりカジュアルすぎない品格があります。
ベルクロで留めるので、装着もカンタン。
こちら、同梱のラバーストラップ。表面にテクスチャーがあり、まるで織地のような風合いです。尾錠にはロゴマークが付いています。※実際の色はもっとブルー寄りです。
しかも、「ペラゴス FXD」のストラップは、ファブリック製。だから、余計軽いです。加えて、レザーストラップよりもかしこまらない雰囲気は、かえって今どき感があります。金属ブレスレットより軽く、レザーよりもこなれて見えて、ラバーよりも品格がある。きっと編み込まれた織り生地表面のテクスチャーの光沢が、ずば抜けてキレイだからでしょう。スポーティですが、カジュアルすぎません。じつはこのモデル、金属ブレスレットが付けられませんが、それもまた潔し。
かつては相手に失礼のないように、ビジネスでは少しでも品格の高いものを身につけるべきと私は教わってきましたが、今はむしろ、相手よりも失礼のない程度にへりくだったほうが、相手を立てることにつながると感じています。尊敬語使いではなく、謙譲語。そんな、ちょうどいい塩梅である、チューダーのファブリックストラップ。デフォルトで付属するネイビーカラーは、あらゆる場面で対応可能ではないでしょうか。
ルミノバ付きのインデックスはクッキリとしたホワイト。そしてチューダーの通常ダイバーズ「ブラックベイ」シリーズでは丸形インデックスですが、ペラゴスは角型。タクティクスウオッチらしい、機能優先のディテールです。
ベゼルは円錐状に傾斜しているから、操作時に上から指を載せた時に収まりがいい。カウントダウン計測を瞬時に行えるのが便利です。
ネイビーブルー文字盤というのもスッキリとして好感触です。ビジネススタイルでネイビーの鞄を持つのは、黒と茶色どちらの靴にも合わせられるからですが、その方程式がこの腕時計にも当てはまります。しかもペラゴスのネイビーブルーは発色が鮮やか。クッキリと白いスクエア型のインデックスが映え、目立ちます。
そのうえで、時計マニアも納得するフランス海軍のストーリーがあり(※詳細は先のリンク記事を参照)、ムーブメントもクロノメーター取得の自社製機械。そう、チューダーは現代のニーズに満額回答しているのです。
チタンケースですが、ステンレススチールシリーズと同様にシャープなエッジに仕上がっています。しかし、リューズガードのトップや、ラグの角などはしっかり面取りしてケガのないように磨かれています。
クラシックすぎず、スポーティすぎない。印象も硬すぎず、砕けすぎない。優等生で、なおかつ控えめ。クラシックウオッチの文脈に沿いつつ、独自のストーリーを持っている。ロレックスとは異なるキラリと輝く個性は、スマートに映ります。ゆえに大人気であり、事実、店頭には品薄状態が続いているのですが……。
脱・威張り時計が好きな私には、とってもいいアイテムだと思っています。
ぺラゴス FXD
Ref.|25707B/21
ムーブメント|自動巻き(マニュファクチュール キャリバー MT5602、両方向回転ローター搭載)
パワーリザーブ|約70時間
ケース素材|Ti(サテン仕上げ)
ケース径|42mm
ストラップ素材|ファブリック(付け替え用のラバーストラップ付属)
防水|200メートル
価格|47万4100円(税込)※掲載価格は、2022年12月現在のもの。
問い合わせ先

日本ロレックス / チューダー
Tel.03-3216-5671
https://www.tudorwatch.com/ja

                      
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