ジャガー・ルクルトが“真のマニュファクチュール”と言われる理由|JAEGER-LECOULTRE

ジュウ渓谷に建つ、ジャガー・ルクルトのマニュファクチュール社屋。2019年に撮影。

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2019年12月6日

ジャガー・ルクルトが“真のマニュファクチュール”と言われる理由|JAEGER-LECOULTRE

JAEGER-LECOULTRE|ジャガー・ルクルト

ジャガー・ルクルトが格上ブランドと同等に扱われるのは、時計作りの本質をすべて持ち合わせているからだ(1)

日本ではいまだ「知る人ぞ知るブランド」という立ち位置でしょうか? 時計に対する造詣が深い人ほど、ジャガー・ルクルトを高く評価する傾向にあります。いわゆる世界3大時計ブランドに続くか、またはそれと同等レベルに扱われているのがジャガー・ルクルトなのです。では、その理由はなぜでしょうか。つまるところ、このブランドは「買い」なのでしょうか?

Text by TSUCHIDA Takashi

ジャガー・ルクルトこそが“マニュファクチュール”である

マニュファクチュールとは、ズバリ、自社一貫生産体制であることを指します。時計のデザインを決定づけるケースやダイアルに加え、ムーブメントも自前で作り、それらを自社内で組み上げる生産体制を“マニュファクチュール”と呼ぶのです。ところがこの言葉、少々注意が必要です。昨今、多くの時計メーカーが、“我こそはマニュファクチュール”とアピールしていますが、そのレッテルを少し剥がしてみると、実態はさまざまなのです。ごく一部の高額モデルだけを自社一貫体制で生産している場合が最も多いと私自身は感じていますが、それ以外でも、たった数本程度の制作本数で、わざわざマニュファクチュールと謳っている場合もあります。
マニュファクチュールという言葉が、さぞかし聞こえがいいのでしょう。それはこの体制に希少価値があるからです。スイス時計産業の本流はマニュファクチュールとは正反対の生産体制が占めています。エタブリスール。時計専門誌で学んだ人もいるかもしれません。スイス時計産業の本流は、エタブリスール(細分化された分業スタイル)です。
少しだけ脱線して、スイスという国の成り立ちにも触れさせてください。スイスは、1500年代における宗教革命によって、生きる場所を追われたユグノー(ピューリタン)たちが、フランス、ドイツ、イタリア3方面から険しい山々に逃げ込む形で作られていきました。そして厳しい冬の農閑期の内職仕事が、この地における時計作りへと発展した経緯があります。したがって無数の小さな組織が、それぞれ特化した工程で秀でた技術を発揮し、それらが集まって精密機器・時計産業を支えてきたのです。こうした背景に照らせば、エタブリスールこそが、この地の自然の姿であることが分かります。
創業者アントワーヌ・ルクルト氏(1803〜1881)
では、なぜマニュファクチュールが生まれたのか?
この生産体制が誕生したのは1800年代に入ってからです。そう、ジャガー・ルクルト(実際は、ジャガー社と合弁する前のルクルト社)がスイスではじめてマニュファクチュールを築いたのです。その契機に「ミリオノメーター」の存在があります。創業者アントワーヌ・ルクルト氏が発明した、長さをミクロン単位まで測定できる超精密な計測器「ミリオノメーター」は、それまでの時計製造の環境を一変させました。やがてルクルト社があったジュウ渓谷に集まった数々のユニットがまとまり、マニュファクチュールが形成されていきます。「ミリオノメーター」を駆使したルクルト社が、マニュファクチュールと謳うことで、抜群の品質の高さをアピールできたことは想像に難くありません。
1833年にアントワーヌ・ルクルト氏がルクルト社を創業した際の社屋。
もうひとつ、マニュファクチュールが脚光を浴びる理由に、製品の独自性という側面があります。その際たる例は、角型の時計ケースに、角型のムーブメントが入っていること。当たり前のように聞こえるかもしれませんが、これはマニュファクチュールでなければ実現しにくいことです。そして、エタブリスールのブランドによる角型時計のなかには、今もなお丸形ムーブメントが収められている場合が少なくないのです。
「レベルソ」だけでも、ジャガー・ルクルトはムーブメントのバリエーションをこんなにも多数持っています。
ジャガー・ルクルトはマニュファクチュールであるからこそ、製品コンセプトに合わせた設計、生産体制を貫くことができるのです。それは、独自性を発揮するポテンシャルの高さに繋がります。しかも量産モデルで、独自性を実現しているところがポイントです。ボリュームメリットを生かし、工業製品としてコストを抑えつつ、それでもなお独自性を追求できているのです。
ジャガー・ルクルトでは創業以来、1200個を超えるムーブメントを製造してきました。それはつまり新たな時計のデザインを生み出すごとに、ムーブメントから開発設計してきた証左です。ジャガー・ルクルトは、創業以来、ムーブメントの物理的制約を受けずに、クリエイティビティを発揮し続けてきたのです。
もうひとつ、ジャガー・ルクルトが確かな信頼を集める事実として、内部検査プログラム「1000時間コントロールテスト」に触れましょう。スイスを代表する検査機関、COSCよりも厳格な基準で行なわれてきたこのプログラムは、すなわちジャガー・ルクルトのすべての製品がCOSCを超える精度、品質基準を満たしていることを示しています。昨今、こうした独自チェックを高級ブランドはこぞって行ない始めていますが、ジャガー・ルクルトがこのテストを施行し始めたのは1992年から。いち早く、高水準の自社テストを実施した面でも、このブランドは先駆けです。
そしてこのページの最後に、ジャガー・ルクルトの並々ならぬ開発力の高さとして、超複雑時計の存在を指摘します。例えば、2軸トゥールビヨンに見られるように、ジャガー・ルクルトは今もなお時計技術への果敢なる挑戦を行なっているのです。それはマニュファクチュールとしての技術の研鑽を怠っていないことの証です。
2019年に発表された最新のジャイロトゥールビヨンモデル。6時位置のカゴに時計の精度をつかさどる脱進機があり、そのカゴごとX軸、Y軸で2軸回転。これにより重力の影響を相殺する仕組みだ。既存のジャイロトゥールビヨンよりも使いやすくするために、トゥールビヨンの部品デザインを変更し、サイズを縮小しているところがポイント。ウェストミンスターチャイム、ミニットリピーター、永久カレンダー、ジャイロトゥールビヨンを搭載。価格は問い合わせ。
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