PATEK PHILIPPE|パテック フィリップ|5130 ワールドタイム
PATEK PHILIPPE|パテック フィリップ
5130 ワールドタイム
Text by OPENERS
かつて史上最高額で取り引きされた時計をご存知だろうか? 2002年のとある海外オークションにおいて約5億円で落札された腕時計なのだが、それはパテック フィリップの1939年製「ワールドタイム」。当時の「ワールドタイム」は回転ベゼルに都市名を刻み、文字盤外周の24時間表記ディスクが反時計まわりに回転することで、世界各都市の時間を表示するものだった。地球儀を意識したというリング状の短針を採用し、世界地図を模したエナメル文字盤を採用。クラシカルなフェイスの希少なマスターピースである。
「5130 ワールドタイム」はその希少なマスターピースの末裔である。先代の「5111 ワールドタイム」の後を継いで、2006年に登場。現在、もっとも操作性の高いワールドタイマーと評価されることもしばしばだ。その操作性の高さは、1959年に特許を取得した機構のおかげである。現在、東京は6時、パリは22時だと仮定しよう。主文字盤の時針は6時を表示し、文字盤外周の都市名リングは東京が12時位置にあり、その内側の24時間表記リングは東京の表記の下に6がある。パリの現地時間に調整しなおす場合はじつに簡単で、11時位置のリューズを押すだけ。
「5130」は、このワンタッチですべての時刻表示調整が行えるワールドタイム機能はそのまま継承し、先代「5111」より若干ケースを大型化させて、視認性を高めた。
そして、約5億円で落札された30年代のマスターピースと同様、リング状の時針を装備し、往時を偲ばせるデザインとした。セミコンプリ系の時計にも関わらず10mmを切るスリムなケースサイドも特筆もの。いかにもパテック フィリップらしい、伝統を重視しながらも常に進化を心がける、そんな素晴らしい作品に仕上がっている。
自動巻き。毎時2万1600振動。48時間パワーリザーブ。ケース径39.5mm。ケース厚9.4mm。アリゲーターベルト。3気圧防水。375万9000円(18KWGないしRGケース)、522万9000円(Ptケース)。
BRAND HISTORY
19世紀半ばより常に時計界のトップに君臨し続ける別格ブランド、パテック フィリップ。時計フリークが最後に行き着く高みと、崇敬の念を込めて呼ばれるこの世界最高峰のウオッチブランドは、時計に情熱を注いだ2人の人物によって創設された。
最初に礎を築いたのはボーランドからの亡命貴族、アントワーヌ・ド・パテック。彼は、帝政ロシアの圧制下にあった祖国ポーランドから、スイス時計産業の中心地であるジュネーブへと逃れる。そこで遭遇した地場産業の時計に興味を持ち、また時計師のフランソワ・チャペックとの出会いをきっかけにして、1839年に時計会社を設立する。
同社は順調に業績を伸ばしていくのだが、アントワーヌ・ド・パテックは、時計製造に対してさらなる可能性を求めていた。ちょうどその頃、フランスのパリで開かれていた万国博覧会を訪れた彼は、世界初のリューズ巻き式懐中時計を見つけて、大きな衝撃を受ける。
この時計を製作した人物こそ、時計師のジャン-アドレアン・フィリップ。アントワーヌ・ド・パテックは、フランソワ・チャペックの後任に彼を迎え入れる。この2人の出会いこそが、’46年の独立分針、’48年のフリーゼンマイなどの新機構開発に繋がっていくのだった。そして、ロンドン万博で金メダル受賞した1851年、現在の「パテック フィリップ」へと社名を変更したのである。
その後、パテック フィリップ社は、’89年に初の永久カレンダー機構を開発してから、複雑機構にも積極的に取り組み、なかでも1927年の「グレーブス・ウォッチ」は、24もの複雑機構を搭載する歴史的なコンプリケーションウォッチとして高い評価を得る。さらに、1932年には現代もなお「ドレスウオッチのお手本」と称される、カラトラバを発表。腕時計の分野においても、確固たる地位を築き上げた。
こうして時計界を牽引する立場に立ったパテック フィリップは、21世紀に入ってからもシンプルウォッチからコンプリケーションまで数多くの佳作を手掛け続ける。スイス時計界の遺産を後世に伝えるべく伝統技術を継承するほか、さらに新たな可能性を自ら切り開くべく新技術・新素材の開発にも積極的にチェレンジしている。
【創業年】1839年
【創業地】スイス、ジュネーブ
【主なシリーズ名】カラトラバ、ゴンドーロ、グランド・コンプリケーション、ノーチラス
【問い合わせ先】パテック フィリップ ジャパン・インフォメーションセンター 03-3255-8109
公式サイト:http://www.patek.com/