Patek Philippe|完全自社開発・製造のムーブメントを搭載する傑作
Patek Philippe|パテック フィリップ
Split-seconds Chronograph with Perpetual Calendar
永久カレンダー搭載スプリット秒針クロノグラフ
マニュファクチュールの矜持が生み出したのは、永久カレンダーとスプリット秒針クロノグラフ機構を搭載した腕時計の最高峰。
Text by KOIZUMI Yoko
完全自社開発・製造のムーブメントを搭載する傑作
10回の連載を締めくくる時計は「永久カレンダー搭載スプリット秒針クロノグラフ」だ。9回目の「カラトラバ」で、パテック フィリップを世界最高峰のウォッチメーカーたらしめている理由のひとつを美意識の継承としたが、やはり最大の理由は、伝統を継承しながらも技術革新を続け、つねに先端技術を開発し続けていることにある。
同社が本格的に腕時計開発に取り組み始めたのは1910年代のこと。1922年とその翌年にはスプリット秒針クロノグラフ搭載の腕時計を、1925年には永久カレンダーを搭載した腕時計を発表している。どちらも懐中時計には搭載されていた機構だが、これを腕時計サイズに小型化することは高い技術力のみならず、想像力も要求される作業だ。
ただし地力に勝るパテック フィリップは、数々の困難をクリアし、1927年にはシンプル・クロノグラフおよびスプリット秒針クロノグラフを搭載した腕時計のシリーズ生産をスタート。1941年には永久カレンダー搭載の腕時計シリーズの生産を始めている。
第6回のレグラ公の懐中時計の回でも述べた通り、クロノグラフ、ムーンフェイズは複雑時計(コンプリケーション・ウォッチ)、永久カレンダーは超複雑時計(グランド・コンプリケーション・ウォッチ)である。
これまで、パテック フィリップは懐中時計において、さまざまな複雑機構、超複雑機構を組み合わせたハイレベルなモデルを製作してきた。そのチャレンジ精神は腕時計にも発揮され、1955年に発表されたのが、永久カレンダーとスプリット秒針クロノグラフのふたつの機構を搭載したこのモデルなのである。
ただし、一度完成を見た機構であっても、進化を続けるのがパテック フィリップという存在。この機構においても歩みを止めることはなく、ムーブメントの見直しと改良が重ねられ、2012年に完全自社開発、製造の新キャリバー「CHR 29-535 PS Q」を搭載した「Ref.5204P」を発表するに至る。
カレンダーやインダイヤルの構成は57年前のモデルと同じだが、この間の技術の蓄積は、心臓部であるムーブメントを格段に進歩させ、マニュファクチュールとしての実力と矜持を世界に知らしめたのである。