Patek Philippe|生涯を研究に費やしたキュリー夫人とともに過ごした時計
Patek Philippe|パテック フィリップ
Marie Curie
キュリー夫人のペンダント・ウォッチ
ポーランド出身の物理学者、化学者であるマリー・キュリーに贈られたのは、美しい花園をモチーフにしたペンダント・ウォッチであった。
Text by KOIZUMI Yoko
生涯を研究に費やしたキュリー夫人とともに過ごした時計
1903年にノーベル物理学賞を、1911年にノーベル化学賞を受賞した現在のポーランド出身の物理学者、化学者のマリー・キュリー(旧姓スクロドウスカ 1867年11月7日~1934年7月4日)。女性初のノーベル受賞者であるだけでなく、初の二度の受賞者であり、また物理学、化学という異なる分野で授与された最初の人物である。
彼女が手にしたパテック フィリップが、ジュネーブ芸術協会が購入し、同協会からキュリー夫人に贈呈したとされるペンダント・ウォッチである。これは1893年頃に製作されたもので、1894年2月24日に協会が購入したという記録が残っている。裏蓋のみならず、ベゼルにもさまざまな花が咲き乱れる様子が色合いも豊かに描かれた細密七宝画が特徴で、別名『花園』と呼ばれている名作だ。
手前に立体的に描かれたパンジーや百合、バラといった花々を配し、奥に山並みやレマン湖と思しき湖畔、台座に乗った彫像と東屋が遠近法を用いて描かれるという凝った構図になっており、その絵がわずか直径34mmというスペースに描かれたことは感嘆に値する。まさに、当時の七宝細密画の技術力と芸術性の高さが見て取れる。
本白七宝の文字盤はブルーのローマ数字による時間インデックスと、その外側にゴールドのアラビア数字で分表示を配し、針のデザインはルイ15世様式を採用。この当時、パテック フィリップのペンダント・ウォッチに良くみられるスタイルとなっている。
ケースに描かれた小さな花園を眺めることで、自らの研究や後進の指導などで多忙を極める日々のなかに、休息の時間を過ごしていたかもしれない。
イエローゴールド・ケース、竜頭巻上げ・時刻合わせ式
高さ47mm、直径34mm、厚さ10.4mm