Patek Philippe|作曲の傍らで時を刻み、音を奏でたクォーター・リピーター搭載懐中時計
Pyotr Tchaikovsky
チャイコフスキーの懐中時計
チャイコフスキーが作曲の傍らに置いていたのが、複雑機構として15分単位で時を知らせるクォーター・リピーターを搭載しながら、彼の音楽を想起させる優美なデザインが特徴の懐中時計。
Text by KOIZUMI Yoko
作曲の傍らで時を刻み、音を奏でたクォーター・リピーター搭載懐中時計
ロシアの偉大な作曲家ピョートル・チャイコフスキーは、交響曲のほか、多数のオペラや楽曲、そして三大バレエ音楽として知られる「白鳥の湖」「眠れる森の美女」「くるみ割り人形」を残している。
彼が愛用していたのが、懐中時計に搭載されたクォーター・リピーターは、ケースサイドに装備されたスライドピースでゴングを起動させる仕組みを持つ。これは1877年ごろに製作されたもので、天才時計師ジャン‐アンドリアン・フィリップが発明した『竜頭によるゼンマイの巻上げと時刻合わせ式機構』も装備。まさにパテック フィリップの技術力を見せるモデルとなっている。
文字盤のデザインでユニークなのが、黒のローマ数字、赤のアラビア数字、青のアラビア数字が混在しているところだろう。現在の腕時計で、こうした組み合わせは珍しくないため、現代的な雰囲気を湛えた表情を見せているが、19世紀後半の懐中時計で24時間表示(内側の赤字)までを記載している懐中時計は稀少な存在だ。
こうした斬新なデザイン力もパテック フィリップの魅力といえよう。また注目すべきは繊細なカーブを組み合わせてつくられているレースを思わせるルイ15世様式の針。柔らかなラインを組み合わせて完成した意匠は、見る者に軽やかな印象を与え、一方でチャイコフスキーがつくる音楽を連想させる。
ムーブメントを囲むように装着されるワイヤによって、ゴングが鳴る仕組み。ケース左側(表面では右側)にスライド式のゴング起動装置が装備されている。ローズゴールド・ケース、本白七宝文字盤。
高さ71.7mm、直径49.9mm、厚さ13.5mm