ジビエの聖地は、富士にあり! アウトドアディナーで究極のグランピング体験を満喫|TRAVEL

狩猟歴40年以上のベテラン猟師・滝口雅博さん。北海道および長野に伝わる狩猟方法を会得、技術を磨いた。彼が提供するジビエ肉は、間違いなく日本最高峰! 圧倒的に美味い。しかも、部位を残さずいただく精神性も含めて、超リスペクト。

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2022年12月12日

ジビエの聖地は、富士にあり! アウトドアディナーで究極のグランピング体験を満喫|TRAVEL

「知る」は、おいしい!リターンズ 星のや富士編(2)

伝説の猟師が説く、命をいただくありがたさ

そして翌朝。私たちは、伝説の猟師と名高い、滝口さんとついに邂逅を果たすことになります。「星のや富士」では、2017年から毎年、秋から冬にかけて、「命と食を学ぶ狩猟体験ツアー」というアクティビティを実施しています。滝口さんと共に、滝口さんが猟場としている本栖湖エリアの森へ入り、狩猟や仕留めた獣の解体を間近で見学するという、ワイルドなアクティビティです。
聞けば、毎年、参加するリピーターもいるとか。「星のや富士」がジビエに力を入れているのは滝口さんとの出会いがあったから、なんて話を耳にしたこともあり、ジビエ好きの一人として、いつかは参加したいと思っていたのですが、ついにその日がやってきました!
古屋永輔さん。手にしているのは、出来たばかりの鹿肉の自家製スモーク。
「星のや富士」までは、滝口さんの一番弟子である古屋永輔さんが迎えに来てくれました。夏場はダイビングのインストラクターをしているという古屋さんが運転する車で、滝口さんが猟場としている本栖湖方面へと向かいます。
わな猟の道具。これを落ち葉などで隠して仕掛ける。
滝口さんらが行っているのはわな猟。獣道にわなを仕掛け、翌朝、獲物が掛かっていれば、その場で止めを刺して、放血。滝口さんが所長を務める「ジビエ食肉加工施設」へと運び、さらに細かく解体していくというのが一連の流れです。ランチには、滝口さんが経営する食堂「松風」のジビエ料理が振舞われます。まあ、要するに、ジビエ三昧のツアーというわけです。
※狩猟シーンの画像があります。ご注意ください。
「俺を食いに来た」(滝口さん)熊を仕留めた話など、のっけから先制パンチを受けまくったあとは、いざ、滝口さん、古屋さんの先導のもと、わなが仕掛けられている、青木ヶ原樹海に隣接する林の中へ──。
鹿ちゃん、掛かってるかな、掛かってないといいな、でもここまで来たからには狩猟の様子をぜひ見学したいぞと、さまざまな思いが交錯するなか、い、いたー! 早速、罠に掛かった鹿ちゃんに遭遇。「去年の春に生まれた、2歳の雌だな」と、滝口さんはすかさず断言します。
滝口さんは、まず鹿に挨拶をします。「鹿! お前の命をいただくけれど、ちゃんと美味しく食べるからな」。そして、鹿の頭をたたき、脳震盪を起こさせた後、止めを刺します(具体的には首にナイフを刺します)。その後、心臓マッサージを施して放血、さらに、腿からも血を抜きます。
ジビエの味は、個体差や仕留め方、解体技術はもちろん、血抜きによって大きく変わってくると言われています。うまく血抜きができないと、臭みが残ってしまうのだとか。今回は狩猟体験ツアーなので、特別に捌く所も間近で見学することができます。
「ここまでやれば、大丈夫」と滝口さん。艶やかなナイフ裁きで、ほんの数分前まで愛玩動物にしか見えなかった2歳(推定)の鹿は、瞬く間に肉塊へと姿を変えていきます。その様子を、私は口をあんぐりとあけて見ていることしかできず、「こうやって命をいただいているんだ」と実感するまでには少し時間を要しました。
背ロース、内ロース、前脚、後足とみるみるうちに解体作業は進みました。
「まだ肉が脈打っているでしょう? これが、きちんと処理ができている証拠であり、また、生きている肉をいただくということでもあります」
どくどくどく……と動き続けるその肉の塊は、カット面が黄金色に輝いていました。これが、「美味しい証拠!」(滝口さん)。正しく処理が施された内ロースは、肉自身、自分が死んだことに気付かず、7~10分、動き続けるのだとか。
「雪の上に肉塊を置くと、ヘビのように動いたりしますよ」
えー、それはさすがにジョークでしょ? と思ったのですが、これもどうやら本当のハナシらしいです。……失礼しました。
止めを刺される前に、命乞いした鹿の表情は今も脳裏に焼き付いています。それでも、私は、昼食に供された、鹿肉(この仔じゃないです!)や猪肉を美味しくいただきました(個人的には鹿カレーがおすすめ)。
私の生活は、なんら変わりません。これからも肉を食べ続けていきます。それは、ジビエに限ったことではなく。
それでもあの日、鹿が肉塊になる瞬間を間近で見てから、肉料理をいただくときに、せっかくいただいた命、美味しく、できるだけ余すところなくいただこうと、より強く思うようになりました。何より食いしん坊の私としては、「美味しいジビエの作り方」を、リアルに見学できたのはとても貴重な体験でした。
そもそも、大自然に育まれた餌を食べ、大自然を駆け巡って育ったジビエたちが、美味しくないわけないんです。それに、確かな腕を持つ猟師による、血抜きをはじめとする処理も完璧なのですから。
ああ、これ、ジビエが苦手という人に、ぜひ食べてもらいたい……。
その日、私は、ジビエの伝道師(自称)になりました。
星のや富士
住所|山梨県南都留郡富士河口湖町大石1408
アクセス|河口湖ICからクルマで約20分
客室数|40室
料金|1泊10万1000円〜(1室あたり、税・サービス料込、食事別)
※仕入れ状況により、食材・メニューが変更になる場合があります。
「命と食を学ぶ狩猟体験ツアー」概要
期間|2022年10月7日~12月16日の毎週金曜日限定
料金|1名 72,600円(税・サービス料込)*宿泊料別
定員|1日1組(2~4名) *中学生以上
時間|8:30~
予約|公式サイト(https://hoshinoya.com/fuji/)にて2週間前まで受付
服装/持ち物|動きやすい服装・靴
含まれるもの|狩猟への同行、鹿の解体作業の見学・体験、昼食、長靴レンタル、
夕食「狩猟肉ディナー」
備考|星のや富士の到着日と出発日を除いた日程での参加となります。
状況により、猟の方法は変更になる場合があります。
悪天候の場合は、内容を一部変更、中止する可能性があります。
仕入れ状況により、料理内容が変更になる場合があります。


スケジュール例
08:30 星のや富士を出発
09:00 本栖湖に到着、オリエンテーション
09:30 狩猟体験ツアーに出発
12:00 本栖湖畔の屋内にて昼食
13:30 鹿の解体作業の見学・体験
16:00 星のや富士に到着
18:30 夕食「狩猟肉ディナー」で狩猟肉を味わう
問い合わせ先

星のや総合予約
Tel.050-3134-8091
https://hoshinoya.com

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