新しい京都。「ザ・ホテル青龍 京都清水」という大人の楽園へ|TRAVEL
LOUNGE / TRAVEL
2022年4月20日

新しい京都。「ザ・ホテル青龍 京都清水」という大人の楽園へ|TRAVEL

TRAVEL|ザ・ホテル青龍 京都清水

ルーフトップバー、ブノワを携えた、京都文化の新たなる震源地。いま京都に行くなら、「ザ・ホテル青龍 京都清水」は外せない

このところ続々と新ホテル、新名所がオープンしている京都だが、ここ1、2年で、もっとも話題になったスポットのひとつは、やはり「K36 The Bar&Rooftop」ではないだろうか。

Text by HASEGAWA Aya

夕暮れの都を眼下にする新たな古都の楽しみ

清水寺へ向かう清水坂に位置するホテルのルーフトップに、京都市街が一望できるパノラマビューのバーが誕生したのだ。Go Toトラベル真っただ中の2020年秋なぞ、3時間の待ち時間ができた。その時は、すごすごと退散したものだが、京都に来たからには、ぜひ足を運びたい、いや足を運ばないのはもったいなすぎると、熱弁をふるいたくなるようなバーなのだ。言ったらまず間違いなく、SNSにアップしたくなると思う……。
店名に堂々と謳っているように、京都市街が一望できるルーフトップは壮観のひとこと。そして見事なまでの法観寺「八坂の塔」ビューなのだ。京都には魅力的なバーがたくさんあるが、ルーフトップは意外と少なかったりする。このシチュエーションは唯一無二といっていい。
そして、どうしてもルーフトップがクローズアップされがちだが、室内の「K36 The Bar」もシック、かつセクシーであることも付け加えておこう。
バトラーの西田 稔氏が監修するカクテルの美味しさは言わずもがな、ウィスキーやフランス産を中心にセレクトしたワインの品揃えも秀逸だ。評判を聞きつけた観光客のみならず、西田氏が作る美酒を目当てに訪れる地元の人もこぞって足を運ぶため、いかんせん人気が高い。スムーズに入れるタイミングを計るのは難しいが、京都を訪れるたびに訪れたい店がまた増えてしまった(って、嬉しいんですけどね)。
と、いきなりバーの話からスタートしてしまったが、今回主に紹介したいのは、オープンラッシュの京都のホテル群のなかでも異彩を放っている「ザ・ホテル青龍 京都清水」なのだ。「K36 The Bar&Rooftop」は、その4階に位置する。
「ザ・ホテル青龍 京都清水」は、その成り立ちからして個性的だ。同ホテルは、2011年まで実際に使われていた、1933年竣工の京都市立清水小学校を保存・活用するかたちで、2020年3月22日に開業した(「K36 The Bar&Rooftop」も同時オープン)。京都屈指の観光名所「清水寺」までは徒歩8分ほどの好立地でもある。
観光客で賑わう清水坂沿いのエントランスをくぐると、地上4階建ての風格あふれる建物が目に入る。スパニッシュ瓦葺き屋根やスクラッチタイル、アーチ形の天井や窓枠、軒下の腕木装飾などの意匠が印象的だ。
すべて解体し新しく作り替えるほうが作業は容易だが、可能な限り、建物を保存し、未来への継承を試みていることは、素人の筆者にも見てとれた。
たとえば、フロントは元管理作業員室だという。彫刻刀で掘られた、階段の手すりの落書きにも心和む。元校舎として使われていた3棟の宿泊棟をコの字型に配し、中央の空間には大階段を据えた。その広場ともいうべき場所の隅には、さりげなく郵便ポストが置かれている。客室やパブリックスペースには、ところどころアートも展示されていた。あとで確認したところ、その数は280点に及ぶそうだ。
客室棟への入り口付近には、小学校として使われていた当時の写真や地域にまつわる資料などを展示したアーカイブコーナーがあり、また、客室には改装の記録としてビフォーアフターの写真をまとめた写真集が置かれている。ページをめくっていると、この小学校に縁などなかったはずなのに、不思議と愛着を感じている自分に気付くのだ。
ゲストルームは15タイプ48室。キングルーム30室とツインルーム18室の構成だ。もともとの校舎の構造を残した客室と、新築した増築部分にある客室とに分けられるが、どちらにも趣がある。広く深いバスタブもいい。
1階には、宿泊のゲストすべてに開かれたゲストラウンジがある。大きく取られた窓からは、前述の「八坂の塔」が迫る。リュクスなワーキングスペースとして利用してもいいし、アルコールをいただきながら本のページをめくるのもいい。簡単な抹茶体験もできる。滞在期間中は無料で利用できる。
なお、今回は利用しなかったがプライベートバスも完備している。かつて講堂として使われていた3メートル以上ある天井高を活かした、3室の個室(「清水」「山鳩」「桜」)を用意している(利用時間は、7:00~22:00。90分間の時間制で1室6000円、4名まで利用可能)。
レストランは2つ(バーをのぞく)。元講堂を活用した、「restaurant library the hotel seiryu」では宿泊のゲストに朝食を提供。テーブルを囲むように配された棚には、アート関連本や京都の歴史、日本の文化歴史、美術にまつわる書籍などが1100冊超! 気に入った本があれば部屋に持っていくこともできるとか。元文学少女の心がうずく。
今回はこちらで朝食をとった。図書館のような空間には、「Well-being(ウェルビーイング)」をテーマにした6種類のメニューがラインナップ。「ラタトゥイユと卵のそば粉ガレット」や「京の和朝食膳」など魅力的な選択肢の中から、筆者がセレクトしたのは「しば漬け入りリゾット 卵かけご飯風 京の銘柄鶏のそぼろ味噌風味」だ。いや、ほかの記事やブログをみてもほとんどの人がコレを選んでいることがわかる。わかります、やっぱりコレですね(笑)。京都産こしひかりの赤米と黒米、ブランド卵などが使用されている、まさに「京都御前」。半熟卵をくずし、味の変化を感じながらいただくのが、また楽しい。
レストランはもうひとつ、ホテル棟に隣接するかたちで、アラン・デュカスがプロデュースするフレンチレストラン「ブノワ 京都」がある。「ブノワって東京にもあるよね?」というなかれ。東京、京都ともに、フランス・パリで1912年に創業した、フランス料理店「ブノワ」のフィロソフィーを継承するレストランではあるが、それぞれ違った個性を持つ。「ブノワ 京都」のエグゼクティブ シェフを務めるのは、田中耕太氏。東京・青山の「ブノワ」で料理人としてのキャリアをスタートさせ、「ベージュ・アラン・デュカス東京」やフランスでも研鑽を積み、2021年11月、「ブノワ 京都」のシェフに就任した。
メニューは、「パテ・アン・クルート」をはじめ、「ブノワ」が誇るシグネチャーメニューのほか、京都ならではの食材を取り入れた、ブノワ京都ならではのエスプリを感じるアイテムも。たとえば、名物の「パテ・アン・クルート」には、京野菜のピクルスが添えられていた。
プリフィクスのランチは4800円から、ディナーは6800円からと、内容以上のコスパの良さもうれしい。真っ赤なベンチソファなど、パリのビストロを彷彿とさせるインテリアは、アラン・デュカス氏本人がセレクトしたという。
京都の趣に、建築、アート、美食、癒し──、そのすべてを有し、さらにノスタルジーを刺激する。東山の護り神として信じられてきた「青龍」の名を持つ「ザ・ホテル青龍 京都清水」は、重ねてきた歴史と、現代の叡智がつくりあげた、とっておきのディスティネーション。京都ステイの選択肢のひとつとして、ぜひアドレスに加えておきたい。

ザ・ホテル青龍 京都清水(The Hotel Seiryu Kyoto Kiyomizu)

K36 The Bar & Rooftop(ケーサーティーシックス ザ・バー アンド ルーフトップ)

ブノワ 京都

  • 住所|京都府京都市東山区清水二丁目204-2 ザ・ホテル青龍 京都清水 別棟
  • Tel|075-541-0208(予約専用)
  • 営業時間|ランチ 11:30 ~ 15:30(14:30L.O.)、ディナー 17:30 ~ 22:00(20:30L.O.)
  • 定休日|なし
  • Instagram|https://www.instagram.com/benoitkyoto_restaurant/
問い合わせ先

ザ・ホテル青龍 京都清水
Tel.075-532-1111
https://www.princehotels.co.jp/seiryu-kiyomizu/