富士宮ルートで登る日本の象徴。肌で体感する歴史。|TRAVEL
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2023年8月31日

富士宮ルートで登る日本の象徴。肌で体感する歴史。|TRAVEL

TRAVEL|富士宮ルートで登る日本の象徴。肌で体感する歴史。

登頂の歴史と信仰の背景

OPENERSでは過去2回に渡り、富士山とその麓の街・富士宮市の魅力をお伝えした。
第一回記事では5合目以下の隠れた魅力、自然の雄大さ。
第二回記事では富士宮市の持つ歴史的背景に迫った。

そして第三回である今回は、日本の象徴であり標高3,776mを誇る富士山を富士宮ルートにて登頂を目指す。

富士山本宮浅間大社

富士山の麓に本宮を構える浅間大社(せんげんたいしゃ)をご存じだろうか。
実は富士山の富士宮ルート、8合目以降の約120万坪は、富士山本宮浅間大社の奥宮境内地となっている。
全国約1300社ある浅間神社の総本山であり、富士山が世界文化遺産であることを証明する構成資産の一角。
富士山を鎮めるために建立されたことが起源であり、9世紀ごろからは多くの武将から信仰を集めた。
特に徳川家康からは厚い保護を受けており、現在の社殿を造営・寄進。それをきっかけに富士山8合目以降を御神体として祀ることを許可され、現在まで管理を行っている。

過去から現在まで引き継がれる富士信仰

富士山の登頂と信仰の歴史は古くから続いており、11世紀ごろまで富士山は登る対象ではなく、主に拝む対象として信仰されていた。
定かではないが聖徳太子が登頂したという伝説まで残っている。
平安時代末期より登拝が行われ始め、鎌倉時代には現在につながる4つの登山口が確立。
江戸時代ごろになると富士講と呼ばれる民衆信仰が庶民に浸透し、本格的な登頂による信仰が広まった。
今回の登頂ルートである富士宮ルートの6合目以降は「大宮・村山口登山道」と呼ばれており、富士山の構成資産として世界文化遺産に登録されている。
かつては修験道の修行として使用されており、その歴史から信仰の対象としてその価値が認められた。
絹本著色富士曼荼羅図
これは室町時代後期に絵師、二代目狩野元信が描いたとされる「絹本著色富士曼荼羅図」。
現存する絹本曼荼羅図としては日本最古のもので、昭和52年6月11日に国指定重要文化財に指定された。
室町当時の登拝の様子が描かれており、富士山頂で荘厳に佇む3体の仏様を目指す人の列が確認できる。
現在は富士山本宮浅間大社にて保管されている。

富士山の区切りについて

大半の人が富士山において○合目、という言葉を聞いたことがあるだろう。
ルートによって異なるが、今回の富士宮ルートにおいては下記のように区分されている。
【富士宮ルートでの区分】
・新5合目(2,400m)
・6合目(2,490m)
・新7合目(2,780m)
・元祖7合目(3,010m)
・8合目(3,250m)
・9合目(3,460m)
・9.5合目(3,590m)
・山頂(3,776m)
主に山小屋の位置で区切られており、宿泊や水分、補給食の購入が可能になっている。

いざ、富士山頂を目指して

今回は富士山の5合目から登頂を目指す。
まるで天国かと思うほど美しく広がる雲海を眼前に、1時間ほど高度に体を慣らしてから登頂開始。
登山道には富士山が2万年前に噴火した際に噴き出した溶岩がびっしりと敷き詰められており、とても安定した足場とは言えない。
また、登山道の途中には表面がなめらかな石や岩が見られ、これは先ほど紹介した溶岩とは違い、1万5000年前の噴火によって出現したものと言われている。
人間とは一線を画した年月を過ごす富士山に驚くと共に、常に日本人と寄り添い続けているという事実に感慨深さを感じた。

6合目の山小屋に到着

出発から約40分が経過。標高2,490mの6合目の山小屋に到着。
5合目との高低差はわずかで、景色の変化は少ない。
道中には富士山の噴火の歴史ともいえる地層が剥き出しになっていた。
地層が誕生する際の噴火時に水素爆発が発生し、土が粘土質になったため最下部が緑色に変化したという。

新7合目の山小屋に到着

標高2,780mの新7合目。
新7合目を超えると付近の風景が変化したことを感じる。
今まではかろうじて人の背丈程度の樹木が散見されていたが、7合目から上の環境に適応することができないため、ぱたっと見かけなくなる。
その代わり、ことわざで聞くことのある「蓼(たで)食う虫も好き好き」と同じ蓼科のオンタデが多く自生している。

元祖7合目の山小屋に到着

標高3,010mの元祖7合目に到着。
標高3,000mを超えると更に酸素が薄まり、高山病が発症しやすくなる。
ここからは呼吸法が大事といわれており、空気を吸うことよりも肺に入った空気を全て吐き出すように意識することで、体内に十分な酸素を取り込むことができる。
元祖7合目から8合目までの登山道は岩場が続いており、登山靴の靴底で岩の平面を捉えるように歩く必要がある。

8合目の山小屋に到着

標高3,250mの8合目に到着。
8合目ではご来光を拝観することができるため、前日に8合目の山小屋に宿泊。ご来光を拝観して下山する人も多いという。
8合目から9合目の道中には、以降が富士山本宮浅間大社の奥宮境内地となっていることを示す鳥居が設置されており、多くの硬貨が挟まれている。
中には風で飛ばされた石が当たり、ひしゃげてしまっているものも少なくない。
また、道中にはいつからか穴が掘られたような形跡があり、修行の一環として行われたのではないかと考えられている。

9合目の山小屋に到着

標高3,460mの9合目に到着。
残るは9.5合、山頂のみ。
ここでは万年雪(まんねんゆき)と呼ばれる溶け残った雪が観測できる。
融雪期にも関わらず、斜面や谷に溜まることで溶けきることなく越年する。
あたりに植物は自生しておらず、溶けない雪と溶岩だけの景色はまるで生命を拒んでいるかのようにも感じられた。

9.5合目の山小屋に到着

標高3,590mの9.5合目に到着。
頂上まで直線距離で180m。
非常に空気が薄く、登りながら会話するだけで息が上がってしまう。
また、ガイド曰く9.5合目から山頂までの道のりが一番勾配がきつく、辛い道でもあるとのこと。
心身ともに疲弊している登山者に対して最後の試練とでも言うように壁のような傾斜が続く。
滑落の危険もあるため、気を抜くことなく山頂を目指す。

そしてついに富士山に登頂。

出発から約7時間。標高3,776mの山頂付近に到着。
登り切った先に富士山本宮浅間大社の奥宮が姿を表す。
黄金に輝く社殿は登山中の景色とは真逆に、我々を迎え入れてくれているような温かさを感じた。
また、山頂からは富士山の火口を見渡すことができる。ご存じの通り、富士山は活火山であり、地下20kmにマグマだまりが存在している。
肉眼で見た際の火口の大きさや、富士山の雄大さは登頂した者だけが感じることができ、言葉や文字のみで伝えきることはできないだろう。
富士山頂には8つの峰が存在しており、八神峰と呼ばれている。
これらの「山頂の信仰遺跡」は、「富士山-信仰の対象と芸術の源泉」の構成要素の一つとして世界文化遺産に登録されている。
そして、最も標高が高いのが剣ヶ峰だ。
標高3,776m、日本で一番空に近い場所。
日本が世界に誇る霊峰、富士山の山頂や火口、八神峰を一望することができる。
登山中、常に見上げ続けていた目標が目の前にあることが、どこか不思議に感じると同時に段々と達成感が湧き上がってくる。
これまで地道に一歩一歩進み続けた努力を、富士山に認められたような気がし、諦めないという大切さを改めて思い知った。
富士山の持つ歴史や壮大さは、普段私たちが仕事や人間関係で悩んでいることがちっぽけに思えてくるほどの衝撃を与えてきた。
太古から登頂しきった人々へ、悩みはもちろん、ひいては人生の考え方を変えうるほどの感動を与え続けてきたのだと実感する。
富士山と日本人が紡いできた物語、歴史を追体験するような感覚は、登頂以外では味わうことのできない魅力だろう。

富士の麓、富士宮へ

これまで3回に渡って紹介した富士山、富士宮は皆様の目にどう映っただろうか。
富士山はもちろん、それを取り巻く壮大な自然。
文化的な建造物に、歴史的背景と物語。
そして、その全ての中心として鎮座し続ける富士山。
そんな富士山は1年間で7月上旬から9月上旬の2カ月間しか登頂することができない。
日本が誇る霊峰は、いつでもあなたのことを待ち続けているだろう。
富士山の偉大さを体感してみてはいかがだろうか?
提供:富士宮市富士山世界遺産課
問い合わせ先

富士宮市富士山世界遺産課
Tel.0544-22-1111
http://www.city.fujinomiya.lg.jp/

                      
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