連載|美しきBoutique city、アデレードへ Vol.1
オーストラリア・アデレード
美しきBoutique city、アデレードへ
日本の約20倍の国土を有するオーストラリア。広大な土地、豊かな自然、そして固有の資源により、各都市が実にさまざまな個性を輝かせている。オーストラリア大陸の中央南部に位置する南オーストラリア州は、葡萄の生産に適した気候からワインカントリーとして世界の愛好家から注目を集めている。自然も豊かで、野生動物と触れ合うことができるのも魅力だ。州都アデレードでは多民族国家の恩恵をたっぷり受けた文化性豊かなシティライフを満喫しつつ、リラクシングな雰囲気に心がほどけていくように感じられるのも、この国らしいところ。南オーストラリア州は、オーストラリアの魅力がぎゅっと凝縮された州なのだ。
Composition & Text by MAKIGUCHI June
Vol.1 Accessible city
南オーストラリア州は、日本の約3倍の面積である98万4000㎢に約170万人が暮らしている。州都アデレードは、139万人が暮らすオーストラリア第5の都市。地中海性気候で一年中過ごしやすい。
19世紀に理想郷を目指して英国から移住してきた開拓者たちによって築かれ、今も当時の名残であるコロニアルスタイルの建築が多く存在し、ヨーロッパの風情が色濃い美しい街だ。
ここはユートピアを求めた自由移民たちが建設した街。
卓越した設計による人と緑が調和した美しい街並みが実現し、最近では個性的な近代建築も増えユニークなハーモニーを奏でている。
名前の由来は、街誕生当時、英国君主であったウィリアム4世のお妃「アデレード」から。ドイツ語で貴婦人を意味する言葉でもある。近代化が進む今も、その名の通り、優雅な佇まいを見せている。
その魅力を人々に聞くと、聞こえてくるのは“boutique & accessible”という表現だ。州都アデレードからは、旅人にとって魅力的な州内の注目スポットほぼすべてが簡単にアクセス可能。豊かな移民文化を反映した各国の味を提供するレストラン、リラクシングなカフェ、文化色豊かな店が軒を連ね、街全体がまるでスタイリッシュなセレクトショップのようだ。
欧州の面影を残し、気のきいた店や文化施設、自然が見事に溶け合う。メルボルンと比較されることも多いが、魅力がよりコンパクトに集まっているという印象だ。これこそまさに“boutique city”として愛されている所以なのだろう。
到着したら、まず街の東西に流れるトレンズ川へ散策にでかけたい。
川を挟んで街をシティとノース・アデレードに分けているこの川の土手には、芝生が広がり市民たちの憩いの場になっている。
周囲にはオーストラリアらしいブッシュや花をつけた木々も立ち並び、飛行機での長距離移動後の身体を、思い切りリフレッシュさせてくれるはずだ。
ここまで来たらぜひ訪れたいのが、ノーステラスという川沿いの通りに並ぶ美術館や博物館が集まるエリア。1856年設立の南オーストラリア博物館は、この大陸にかつて生息していた生き物の展示や、先住民であるアボリジニに関する世界一のコレクションを有するオーストラリアン・アボリジニアル・カルチャーズ・ギャラリーを持つ。
現代アートとしても世界的人気を誇るアボリジニ・アートを知るには格好の場所。ミュージアム・ショップには、固有の文化をポップなテイストと融合させたアイテムが多く、お土産探しにもぴったりだ。
このエリアは、南オーストラリア美術館、アデレード大学が並ぶ文化の中心。緑が多く静かだが、徒歩10分ほどでシティ中心部へと戻ることができる。
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オーストラリア・アデレード
美しきBoutique city、アデレードへ (2)
アデレードの賑わいを感じたいなら、ランドール・モールへ。500mにわたってレンガのプロムナードが続く。
穏やかな天候が多いアデレードらしい、いわば屋外ショッピングモールだ。オーストラリアを代表する自然派コスメ・ジュリークや、地元ならではの日用品が見つかるウールワース、カフェやレストランが集まっている。
ぜひ立ち寄りたいのが、この街生まれのヘイグス・チョコレート。
1915年創業で、200種類にも及ぶすべての商品が丁寧に手作りされている。
味にうるさい日本人でも虜になる上質な美味しさ。カエルを象ったチョコレートが有名だが、期間限定で店頭に並ぶシーズナルスイーツにも注目だ。
建築好きには、この通りにあるアデレード・アーケードも興味深いだろう。街で最古のアーケードで、ヴィクトリア風のクラシカルなインテリア&エクステリアは、一見の価値ありだ。
素顔のアデレードを覗きに行くなら、セントラル・マーケットへ。140年以上にもわたって市民の胃袋を満たしてきた。生鮮品、スイーツ、乳製品、ワインなどあらゆる食材の店が、80軒以上もが並んでいて、時間が経つのも忘れてしまう。
フレッシュフルーツを絞ってくれるジュース店、好みのナッツをその場ですりつぶしバターにしてくれる店、自然派のローフードを扱う店など、食に関するあらゆる興味を満たしてくれる。歩き疲れたらカフェでひと休み。
市内の移動は、シティを巡回する無料バス、トラムが便利だが、散歩感覚でどこへでも行ける距離なのがブティック・シティの魅力のひとつ。
そんな街でステイするなら、ぜひ選びたいのが個性光るブティック・ホテルだ。
ランドール・モールの入り口に立つメイフェア・ホテルは、ノーステラスまでも徒歩5分ほどという好ロケーション。
1934年に建設が始まったクラシカルな面影を持つホテルは、ロマネスクスタイルをベースに、人工石であるベネディクト・ストーンをあしらったり、タイルを使った屋根を付けたりするなど遊び心も加えられている。
現在も、当時の建築を最大限に生かし、エレガントなアデレード滞在を演出してくれる。
屋上には、建築家の名前をとったヘネシーというルーフトップバーがあり、専用エレベーターでのみ入場可能。仕事帰りの市民たちがグラス片手におしゃべりに興じる社交の場ともなっている。
このバーを訪れたらぜひ味わいたのが、HONEY TRAPというウォッカベースのシグネチャー・カクテル。ホテルの屋上で育てられた蜜蜂がつくったハチミツを使う、ここでしか味わえないお酒だ。
ハニーの甘味とジンジャーの辛さ、レモンの酸味が程よく混ざり合い、爽やかな飲み口で食前酒にもぴったり。以前は、会員のみに許されていたというプライベート感たっぷりのバーで、旅の疲れをゆっくり癒してからベッドに入るのもいいだろう。
日本からアデレードへは、直行便でまずシドニーやメルボルンに入り、国内線で約2~1.5時間。この街を拠点に、ワイナリー巡りやネイチャーツアーに出かけるのがおすすめだ。
次回は、カンガルー島へご案内。
オーストラリア政府観光局 : http://australia.jp
南オーストラリア州政府観光局 : http://tourism.sa.gov.au/
南オーストラリア博物館 : http://samuseum.sa.gov.au/
ランドール・モール : http://rundlemall.com/
ヘイグス・チョコレート : https://www.haighschocolates.com.au/
セントラル・マーケット : https://adelaidecentralmarket.com.au/
メイフェア・ホテル : https://www.mayfairhotel.com.au/