連載|台湾の素顔を探しに台中へ(前編)
LOUNGE / TRAVEL
2017年7月31日

連載|台湾の素顔を探しに台中へ(前編)

気さくで懐かしさすら感じる台中でスローな台湾時間を満喫

台湾の素顔を探しに台中へ(前編)

成田から、台湾の玄関口である桃園空港まで直行便で約4時間。移動時間からしても、文化的親しみやすさからしても、とても身近な旅の目的地、それが台湾だ。2016年、台湾に旅した日本人の数は約190万人に及ぶ。その多くは台北を目指し、日本人旅行者のリピーターも増えている。首都・台北には中華料理の名店も多く、スイーツや夜市などB級グルメを食べ歩くという楽しみもある。さらに、マッサージやショッピングなども、フレンドリーな価格で楽しめるとあれば、一度訪れたらファンになるのもうなずける。そんな台湾を気に入ったのなら、ぜひ台北以外のエリアにも足を延ばしてみてほしい。例えば、台湾の中部に位置する台中市などいかがだろう。台北中心部からは、快適な新幹線の旅で1時間弱。平均温度23度と1年を通して温暖かつ穏やかな気候でも知られている、台湾人が最も住みたい都市ナンバー1だ。国際都市である首都よりも、もっと素朴な台中には、より気さくでどこか懐かしささえ覚える、素顔の台湾が見えてくる。

Text by MAKIGUCHI June

VOL.1「建物探訪」

台中には、建築好きにはたまらない魅力がある。台湾式の歴史的な風景を残すエリア、日本統治時代からのレトロな建物、現代的な建築物がそびえ立つ開発エリアなど、地域によってさまざまな表情を見せてくれる。なかでも、注目の新スポットといえば、世界を舞台に活躍する日本人建築家が手掛けた建物がみられるところ。

ひとつは、伊東豊雄氏が手掛けた台中国立歌劇院だ。2005年に行われたコンペティションを経て、10年以上もの歳月をかけて2016年9月30日に完成したばかり。無機質な現代建築が立ち並ぶ中、有機的な曲線とグリーンとの調和がとても印象的。オペラハウスという役割だけに音はもちろん、流れるような柱、カーテン、丸い窓といったモチーフが光や空気などを感じさせる。高い天井と壁との間に境界線はなく、まるで洞窟に足を踏み入れたかのような印象で、優しく包まれるような安心感を覚える。「建物全体が劇場」というコンセプトは、夜になるといっそう鮮明だ。コンクリートとガラスを使った建築からは、夜間内側からランダムな光を放つ。オペラやコンサートに行くのはもちろん、屋上には空中庭園、ショップやカフェ、レストランなどが入っているので、建築散歩がてら息抜きをするのにも最適だ。

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国家表演芸術センター
台中国立歌劇院
40756 台中市西屯区恵来路二段101号
開館時間:日曜日〜木曜日 11:30〜21:00
金曜、土曜、祝祭日 11:30〜22:00
電話:+886-4-2251-1777
http://www.npac-ntt.org/index

もうひとつは、安藤忠雄氏が設計した、亞州大学現代美術。三角形をモチーフにした斬新な建物は、外観だけでなく、天井や梁、開口部、階段など内側にもモチーフが繰り返し使われていて、建物そのものをアートとして楽しむことができる。2020年12月31日までは、安藤忠雄展が開催されているので、建築ファンならぜひ訪れたい。台湾ならではのデザイングッズを販売するミュージアムショップもお勧めだ。

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亞洲大学現代美術館
41354台中市霧峰区柳豐路500号
電話:+886-4-2332-3456
E-MAIL:asiamodern@asia.edu.tw
開館時間:9:30〜17:00 月曜休館
入場料:NTD$250
http://asiamodern.asia.edu.tw/index.php

台湾の伝統的な家屋に興味があるなら、ぜひ訪れてほしいのが台中駅と並び重要建築として国の史跡に指定されている霧峰林家花園だ。「台湾五大家族」のうちの1軒である由緒正しい名家の私邸で、1999年9月21日に起きた震災で被害にあったものの、修復を経て現在は一部が公開されている。細部に至るまで豪華な装飾が施された門や壁面、整えられた広いガーデン、屋根つきの屋外舞台がしつらえられた宴会場など、台湾の伝統的な建築様式や意匠をじっくり堪能しつつ、霧峰林家の財力と栄華を肌で感じることができる史跡だ。清代中期から現在まで、年代を経ながら建築様式を大きく変化させているのも興味深い。後期には建築と庭園に中国、西洋、日本の三つのスタイルを融合させている。予約をすれば、日本語のガイドもお願いできる。

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霧峰林家花園
台中市霧峰区民生路26号
電話:+886-4-2331-7985
開館時間:9:00~17:00 月曜休館
入場料:NTD$250
http://wufenglins.com.tw/

大甲鎮瀾宮は、航海・漁業の守護神である媽祖を信仰する廟として台湾で最も有名な施設のひとつだ。清朝に小さな祠が建設されて以来、285年の歴史を持つ。毎年旧暦三月に行われる媽祖巡行は、媽祖の生誕を祝って、神輿を担いだ人々が340km以上の道のりを9日間にわたって練り歩く。周囲には内外から100万人ほどの巡礼者や観光客が詰めかける台湾最大規模の宗教行事だ。その巡行のメイン舞台となるのが、大甲鎮瀾宮。伝統工芸ともいえる屋根ほか、屋内外の豪華なしつらえは必見。途切れることのない参拝者、うず高く積まれたお供えものを見るだけで、ここが台湾の人々にとって心のよりどころであることがわかる。

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大甲鎮瀾宮
住所:大甲区順天路158号
電話:+886-4-2676-3522
営業時間:06:00〜21:30
http://www.dajiamazu.org.tw/index.aspx

建物探訪なら、古き良き日本統治時代のムードを色濃く残す台中駅やその周辺エリアも外せない。特にスタイリッシュな変貌を遂げたこのエリアの象徴となっているのが、宮原眼科だ。眼科といっても、医院ではない。もともとは、1927年に眼科医の宮原武熊博士が開設。今では、レトロな風情を残す赤レンガの建物がリノベーションされ、アイスクリームやチョコレート、チーズケーキなどを扱うスウィーツショップに。高い天井と広々とした空間にそびえ立つ木製のシェルフや長く伸びる階段など、伝統とモダンを融合させたインテリアは必見。お菓子のパッケージも眺めているだけでも心躍るほどスタイリッシュなので、お土産探しにでかけるのもいいだろう。

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宮原眼科
住所:台中市中区中山路20号
電話:+886-4-2227‐1927
営業時間:10:00~22:00 年中無休
http://www.miyahara.com.tw/en/index.html

宮原眼科にはお茶や食事が楽しめるサロンもあるので、散策に疲れて一休みしたいときにもぜひ。気になる台中の食探訪は、後編にて。

TRAVEL INFORMATION
●台湾に行くなら、チャイナ エアラインが便利。成田をはじめ、日本の15都市から桃園空港へ週200便以上を就航。桃園空港から台中市までは、直通バスで約1時間30分。
https://www.china-airlines.com/jp/jp

●「台湾好玩卡(台湾おもしろカード)」
台中を旅するなら、移動をより快適にする「台湾好玩卡(台湾おもしろカード)」の入手がおすすめ。観光スポットの特別優待を提供する電子チケット式カードだ。台中市内の200のルートのバスが乗り放題。本カードにより、現地でさまざまな特別優待やサービスを受けることができる。空港やコンビニエンスストアで購入可能。
http://ct-pass.com/product/show/539?lang=ja

           
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