DINING OUT ONOMICHI with LEXUS参加記|LEXUS
LOUNGE / TRAVEL
2016年6月15日

DINING OUT ONOMICHI with LEXUS参加記|LEXUS

DINING OUT ONOMICHI with LEXUS参加記

尾道を舞台とした、気鋭のシェフ6人による奇跡の共演

食を通じて、美しい自然や伝統文化、歴史、そして産物など地方に眠っているさまざまな価値を再編集し、新たな価値として顕在化させることで、地域経済の活性化を目指すという地域振興プロジェクト「ダイニングアウト」。その8回目となるイベント「DINING OUT ONOMICHI with LEXUS」が、風薫る3月下旬の週末、広島県の尾道で開催された。

Text by YAMAGUCHI Koichi

「フュージョン」をテーマに6人のシェフをキャスティング

「日本に眠る愉しみをもっと。」をコンセプトとするダイニングアウト。これまでも場所を変えながら、数日だけオープンする野外レストランとして、新潟県の佐渡をはじめ、沖縄県の八重山や徳島県三好市の祖谷など、日本各地の名所を舞台に、7回にわたって開催されてきた。

毎回、テーマに則った特別な体験を参加者に提供してきた同イベントだが、今回のテーマはずばり「フュージョン」。なぜこのテーマが選ばれたのか。今イベントにてホスト役を務めた東洋文化研究家のアレックス・カー氏は、尾道の歴史にその理由があるという。

瀬戸内海のほぼ中央という交通の要衝に位置し、南側は細く入り組んだ尾道水道、そして北側は千光寺山、西国寺山、浄土寺山からなる尾道三山に囲まれた尾道。平安時代には、倉敷地に認定されたこの地に荘園米の積み出し港が開かれる。港町、尾道のはじまりである。それ以来、対明貿易船や、北海道と大阪を結ぶ北前船などの寄港地として、中世、近世をとおして繁栄を遂げてきた。

DINING OUT|ダイニング アウト

ホストを務めた東洋文化研究家、アレックス・カー氏

DINING OUT|ダイニング アウト

料理をプロデュースした大橋直誉氏

こうした土地柄もあり、尾道にはいにしえより外部から多くの人や物、そして文化が流れ込み、それらを受け入れ、融合しながら独自の世界を育んできた歴史がある。こうして尾道に脈々と受け継がれてきた「受け入れ」と「融合」、つまり「フュージョン」のDNAにインスピレーションを受け、「最先端のフュージョン」を表現するのが今回の野外レストランというわけだ。

このテーマを具現すべく、今回のダイニングアウトでは、レストランプロデューサーの大橋直誉氏が迎え入れられた。氏は、オーナーを務める東京は白金台のレストラン「TIRPSE」にて、オープン2カ月半という世界最速のタイミングでミシュラン一つ星獲得という快挙を成し遂げ、世界中から注目を集めた人である。その大橋氏が、東京、大阪、そしてパリから5人のシェフと1人のパティシエをキャスティングし、尾道の豊かな食材を使って趣向をこらしたコース料理をプロデュースする。

DINING OUT|ダイニング アウト

浄土寺山山頂より尾道の景観を楽しむ参加者たち

DINING OUT|ダイニング アウト

アミューズとして供されたフィンガーフード

尾道において、二晩限りのレストランの舞台となるのは、日本国宝にも指定されている尾道最古の寺、浄土寺である。尾道に到着した参加者は、まずレセプション会場となる浄土寺山展望台で大橋直誉、アレックス・カー両氏の歓迎を受けた。尾道三山の一つに数えられる浄土寺山山頂に位置するここでは、地元のブラッドオレンジで作られたシャンパンカクテルや、同じく広島県の三次ワイナリーによるぶどうジュース、そして3種類のフィンガーフードが振る舞われ、「DINING OUT ONOMICHI with LEXUS」の幕が開けた。

浄土寺山の展望台に立つと、一見、大河のような尾道水道や、山と海に囲まれた尾道の町並み、そして瀬戸内に点在する島々が眼下に広がる。「尾道水道が紡いだ中世からの箱庭的都市」として日本遺産に認定されたこの地の麗しさが手に取るように分かる瞬間だ。美しい自然が織りなす景色を眺めていると、この地が育む食材を用いた料理への期待感がおのずと高まる。参加者たちはシャンパングラスを片手に、しばしこの絶景を楽しんだ。

DINING OUT ONOMICHI with LEXUS参加記

尾道を舞台とした、気鋭のシェフ6人による奇跡の共演 (2)

ビンテージビネガーでディナーが幕開け

ディナー会場となる浄土寺は、聖徳太子が開創したと伝えられる、中国地方屈指の古刹だ。鎌倉時代末期、元弘の乱の折には後醍醐天皇が天長地久の祈祷を命じ、南北朝時代には足利尊氏が戦勝祈願に訪れるなど、日本史の重大な局面にその名を刻む。

山門をぬけ境内に歩を進めると、正面に本堂、右手に阿弥陀堂、そして日本三大多宝塔の一つである浄土寺多宝塔が参加者を迎い入れるかのようにたたずんでいた。いずれも鎌倉時代末期から南北朝時代に建てられたもので、本堂と多宝塔は国宝、阿弥陀堂は重要文化材に認定されている。ここで、アレックス・カー氏による解説にしばし耳を傾けながら、700年前、足利尊氏も目にしたであろう景観を眺めていると、当時と同様の静溢で荘厳な時間が流れているような気がしてくる。

阿弥陀堂内部へ通された参加者は、阿弥陀堂の本尊、木造阿弥陀如来坐像を前に、住職から浄土寺の本尊や建築物についての説明を受け、その後、ディナー会場となる方丈の間と客殿へ案内された。いずれも重要文化財に指定された隣接する空間で、前者は皇室が尾道を訪れたさいに立ち寄る場所だという。

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「心白」石田大樹氏による「Japan」

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「Chi-Fu」東 浩司氏による「China」

ディナー会場に面した庭園と、その奥の築山に配された茶室、露滴庵が夕暮れとともにライトアップされ、参加者たちは非日常的な時空間に誘われる。「フュージョンというテーマを、尾道の食材や様々な歴史文化をもとに、僕というフィルターを通して6人の料理人がクリエイトした作品から、楽しんでいただきたいと思います」。大橋直誉氏のそんな挨拶の言葉で、ダイニングアウトのメインイベントがスタートした。

まず、アペリティフとして大橋氏がこの特別なディナーのために用意したのは、1500年代からこの地で酢をつくりつづけてきた尾道造酢で、60年前以上前から家宝とされてきたビテージビネガー、つまり酢だ。まだ肌寒い気候を鑑みお湯割りで提供されたのだが、その上品な味わいと華やかな香りが湯気となって口いっぱいに広がるのが印象的だった。

つづいて「Japan」と名づけられた一皿目がテーブルに供された。東京は広尾で熟成寿司の店「心白」を営む石田大樹氏による作品で、ヨーロッパ種と広島産の2種類の牡蠣、そして熟成させた穴子の天ぷらを、尾道の遺跡から出土したという有田焼の器に盛りつけるとことで、佐賀県は有田で開催された前回のダイニングアウトに対する敬意を表した。

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「Clown Bar」の渥美創太氏による「France」

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料理に合わせて大橋氏がセレクトしたワインや日本酒、そしてビールも振る舞われた

二皿目は、大阪のモダンチャイニーズ店「Chi-Fu」の東 浩司シェフによる「China」。しまなみの島々の様々な食文化を表現すべく、それぞれの島でとれる山菜や果物を用いて、よもぎのクレープにまとめあげた。三皿目の「France」は、フランスはパリのレストラン「Clown Bar」の渥美創太シェフによるひと皿で、焼いたトマトにパイ生地が添えられ、それらを合わせて楽しむというもの。

三皿目が終わったところで小休止。会場となった方丈の間と客殿について、アレックス・カー氏がその様式やしつらえなど詳細についてわかりやすく解説してくれる。こうして、胃袋と同時に知的好奇心をも満たしてくれる、特別なディナーがゆったりと進んでいく。

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尾道を舞台とした、気鋭のシェフ6人による奇跡の共演 (3)

スペシャルなディナーを五感で追体験するドライブ

後半の幕開きとなる四皿目の「Okonomiyaki」を手がけたのは、大阪のお好み焼き店「パセミヤ」の中川善夫氏。山菜とぼたん肉をベースとした、上品な味わいが特徴だ。そして五皿目は、東京は外苑前のフランス料理店「Abysse」の目黒浩太郎シェフによる「Bouillabaisse」。広島の伝統的な食材、ガンゾウビラメの干物「デベラ」を使い、ブイヤベースに。つづく六皿目の「Spring」では、再び「Clown Bar」の渥美創太シェフが登場。浄土寺の井戸から湧き出る温度の低い冷泉で軍鶏を煮ることで、素材の持つ旨味と甘みを引き出した。

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「パセミヤ」中川善夫氏による「Okonomiyaki」

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「Abysse」目黒浩太郎氏による「Bouillabaisse」

ディナーを締めくくる二皿のデザート「Pasture」と「Blossom」を担当したのは、「TIRPSE」のパティシエ、中村樹里子さんだ。前者のパンナコッタ、後者のイチゴのスイーツ、いずれも土地の食材を生かした繊細で上品な味わいが、ディナーの余韻をより深めてくれた。

フュージョンという言葉を6人の料理人が現代的感性で咀嚼し、表現した一皿一皿を、微に入り細に穿つ典雅な空間で、悠々と流れる時間に身を置きながら味わう。自然と歴史、そして文化が見事に調和した尾道ならではの、そんな胸に響く特別なひとときは、こうして静かに幕を下ろした。

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「Clown Bar」渥美創太氏による「Spring」

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「TIRPSE」中村樹里子氏による「Blossom」

翌日はダイニングアウトのオフィシャルパートナーであるレクサスの各モデルで、尾道周辺をドライブできる「LEXUS ドライビングプログラム」が用意されていた。筆者はスポーツクーペ「RC-F」で、瀬戸内の美しき島々を繋ぐしまなみ海道を伝い、和歌山県は今治までの往復4時間ほどのドライブを楽しんだ。

それは、昨日、アレックス・カー氏が説いてくれた尾道の歴史や文化、浄土寺山展望台から愛でた海と山と島が織りなす麗しき景色、そして最高の食材を育む素晴らしい自然を、実際に自らの五感を通して追体験するような喜びに満ちた行為だった。

「日本ならではの魅力は、都市部よりも地域のほうが根強く残っていると思います。しかし、地元の方々にとってそれは日常であり、その魅力に気づきにくい。地方創生には、彼らが自分たちが住んでいる場所に対してプライドを持つことが最も大事です。
これからもダイニングアウトを通して各地域の方々とチームを組むことで、その土地の素晴らしさをお互いに気づき合っていきたいし、それを世界に発信していきたいと思っています」

DINING OUT|ダイニングアウト

参加者はレクサス各モデルで尾道ドライブを楽しんだ

ダイニングアウトを主催するONESTORYの代表、大類知樹氏はディナー会場でそう語った。メディアに携わる者として、いや、ひとりの日本人として、心からこの取り組みを応援したい。尾道からの帰路、車窓から昔ながらの風情溢れる町並みを眺めながら、そう思った。

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「日本に眠る愉しみをもっと。」をテーマに、毎回、日本のどこかで数日だけオープンするプレミアムな野外レストランとして2012年にスタート。これまでも、新潟県・佐渡、沖縄県・八重山、徳島県・祖谷、大分県・竹田、静岡県・日本平、佐賀県・有田を舞台に開催されてきた。次回の時期や場所については、決まり次第オフィシャルサイトで発表とのこと。http://www.onestory-media.jp

           
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