kizunaworld.org|実験音楽の鬼才が奏でる、やわらかな電子音「espoir」
LOUNGE / MUSIC
2015年1月17日

kizunaworld.org|実験音楽の鬼才が奏でる、やわらかな電子音「espoir」

Kizunaworld.org

実験音楽の鬼才が奏でる、やわらかな電子音

坂本龍一氏らによってスタートし、国内外のさまざまなアーティスト作品を通じて寄付を募る東日本大震災被災地支援プロジェクト、「kizunaworld.org」。第16作目となる今回は、1990年代中ごろより音や光の性質に焦点を当てた作品を発表し続けているアーティスト、池田亮司氏の作品。楽曲「espoir」は、アンビエントな電子音が特徴だ。

Text by KASE Tomoshige(OPENERS)

あらたな美学的体験を与えてくれる作品

坂本龍一氏と平野友康氏が発起人となり立ち上がった「kizunaworld.org」。「個人の力でできるかぎりのことをする」というコンセプトのもと、国内・海外からプロジェクトに賛同するアーティストの作品を広く集めて提供することで寄付を募り、被災地への支援を続けている。

プロジェクトの第16弾として楽曲を提供した池田亮司氏。彼の肩書きをわかりやすく伝えるなら作曲家/アーティストであるが、その活動は多岐にわたる。建築、映像、ダンスなどの領域とクロスオーバーしており、さまざまなジャンルに大きな影響を与えている。音楽、時間、空間を数学的に捉えることによって、現象の物理的特性と人間の感覚との関係性を探求しつづけている人物だ。

具体的な作品例を挙げてみよう。180センチのアクリルパネルで作った塀のような直方体の内部に、LEDランプを仕込んだインスタレーション。乱数をびっしりプリントした35ミリフィルム。バーコードを再構築したようなモノクロの巨大な映像……。言葉で表現するのは難しいが、造形にしても音楽にしても映像にしても、触れた者にあらたな美学的体験を与えてくれる作品、であることは間違いない。

作品は、1口1000円の寄付をPayPalから決済するとダウンロードできる仕組み。集まった寄付金は、決済手数料をのぞく全額が「医療」「こども」「食料」「住宅」「エネルギー」の5つの分野で“いま必要な支援”として、状況に応じて寄付先を随時検討しながら届けられる。また昨年10月1日からは「こども」の寄付先が、震災により楽器が使えなくなってしまった教育機関に対し楽器の修復や提供をおこなうとともに、被災地での音楽活動を支援する「こどもの音楽再生基金」に変更されている。

kizunaworld.org|実験音楽の鬼才が奏でる、やわらかな電子音 02

「test pattern」と呼ばれる、ピクセルなどの最小単位の“データ”を再構築した作品。ライブなどで映像として流す場合もある。

池田亮司ホームページ
http://www.ryojiikeda.com/

           
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