MOVIE|世界に激震をもたらした女性哲学者『ハンナ・アーレント』
MOVIE|世界に激震をもたらした女性哲学者の人生に迫る
“真実”を伝えた女性の愛と信念を描いた『ハンナ・アーレント』
ナチス戦犯アイヒマンの裁判レポートを発表し、その衝撃的な内容で世論に賛否両論をもたらした哲学者ハンナ・アーレント。波乱に満ちた人生、そして彼女の愛と信念を描く『ハンナ・アーレント』が、10月26日(土)より岩波ホールほかで全国順次公開される。
Text by YANAKA Tomomi
主演はドイツ映画祭主演女優賞を受賞したバルバラ・スコヴァ
1960年代初頭、ナチスの戦犯アドルフ・アイヒマンの裁判レポートをザ・ニューヨーカー誌で発表し、世界的大論争を巻き起こしたユダヤ人哲学者ハンナ・アーレントの真実に迫る本作。彼女の思想の本質に触れるとともに、夫や友人への愛溢れる一人の女性としてのアーレントにアプローチし、昨年の東京国際映画祭でも大きな話題となった感動の実話がいよいよロードショーされる。
メガホンを取ったのは『ローザ・ルクセンブルク』で知られる女性監督のマルガレーテ・フォン・トロッタ監督。10年の構想を経て、映像化を実現した。主演は、トロッタ監督との再タッグとなったバルバラ・スコヴァ。温かな魅力と、深く真実を探る鋭さをあわせもつアーレントを熱演し、ドイツ映画祭主演女優賞を獲得している。
「悪の凡庸さ」を主張し、激しい非難を浴びるアーレント
第二次世界戦中にナチスの強制収容所から脱出し、アメリカへと亡命したドイツ系ユダヤ人、ハンナ・アーレント。誰からも敬愛される有名な哲学者であり、「考えることで、強くなれる」を信念に激動の時代を生き抜いてきた。
そして1960年代初頭。何百万ものユダヤ人を収容所へ移送したナチスの戦犯アドルフ・アイヒマンが逃亡先のアルゼンチンで、イスラエルの諜報機関の手により逮捕された。アーレントはイスラエルでおこなわれた歴史的裁判に立会い、ザ・ニューヨーカー誌にレポートを発表。
アイヒマンは世間が考えているような極悪非道な人物ではなく、ただ任務に盲従する“小役人”だったという「悪の凡庸さ」を主張し、その衝撃的な内容に世界は揺れることとなる。
以降も世間からの激しい非難を浴びて思い悩みながらも「悪の凡庸さ」を主張しつづけたアーレント。歴史にその名を刻み、波乱に満ちた人生の真実が半世紀の時を超えていまスクリーンで明らかになる。