オスカー女優 シャーリーズ・セロン、映画『ヤング≒アダルト』を語る
LOUNGE / MOVIE
2014年12月22日

オスカー女優 シャーリーズ・セロン、映画『ヤング≒アダルト』を語る

『JUNO/ジュノ』『マイレージ、マイライフ』ジェイソン・ライトマン監督作品

シャーリーズ・セロン、映画『ヤング≒アダルト』を語る(1)

映画『ヤング≒アダルト』にて、ちょっと“イタい”女性が巻き起こす大騒動と、その心の機微をみごと演じ切ったオスカー女優 シャーリーズ・セロン。映画の公開を記念し、ここで彼女のスペシャルインタビューを紹介しよう。

Text by FUJITA Mayu(OPENERS)

ひとりで生き抜かなければならない現代女性の本音をみごと演じ切る

『JUNO/ジュノ』『マイレージ、マイライフ』などで、人間を温かく見つめながら、現代社会の歪みをリアルに切り取ったジェイソン・ライトマン監督による最新作『ヤング≒アダルト』が、2月25日公開された。主演にシャーリーズ・セロンを迎え、公開前より大きな話題となっていた本作では“真の幸せとはなにか?”というテーマに、ユーモアたっぷりに迫る。今回彼女が演じる役どころは“ヤングアダルト”(少女向け)”小説を執筆中の“バツイチで恋人ナシ、心の友はアルコール”という自称作家(本当はゴーストライター) メイビス・ゲイリー。負け犬一歩手前、そのあまりに“イタい”姿に、声を上げて笑うことだろう。

シャーリーズ・セロン、映画『ヤング≒アダルト』を語る 02

でも、ふと不安がよぎる。はたして私たちは、本当に彼女を笑えるだろうか……? しばらく俳優業から遠ざかっていたシャーリーズ・セロン。本作で3年ぶりに俳優として復活した彼女は、「最高の経験だった」と、作品を振り返る。ひとりで生き抜かなければならない現代女性の本音をみごと演じ切った彼女が、映画『ヤング≒アダルト』を語る。

教訓は得ても、必ずしも生き方は変えない女性

――3年ぶりの撮影はいかがでしたか?

映画を撮ることですばらしい経験をたくさんしてきたけれど、これは今までで一番の経験よ。本当に最高だったわ。それは、メイビスという役とこの映画のテーマ、ジェイソンと仕事ができたこと、そして私が3年間演技から遠ざかっていたことの相乗効果だと思う。3年ぶりに映画に戻ってきて、30日間でジェイソンと『ヤング≒アダルト』を撮ったわ。毎日髪はボサボサ、ノーメイクで、ジャージをはいて現場に行って、メイビスというキャラクターをとことん研究したの。楽しかったわ。来る日も来る日も笑ってばかり、あんなに笑ったことは今までになかったかもしれない。

――本作について、最初に抱いた感想は?

すごく変わった映画。はじめに台本を読んだ時、メイビスについて“図太い”と思ったわ。教訓は得ても、必ずしも生き方は変えない女性。それに私にはすごくリアリティを感じたわ。人間らしい。たとええばクライマックスで、登場人物みんながなにかを悟っちゃうような映画もあるけど、そんな人たちにお目にかかったことがないわ。だから“悟らない女”が登場してうれしかったわ。

シャーリーズ・セロン、映画『ヤング≒アダルト』を語る 03

――メイビスはどんな女性?

メイビスは、年はとっても大人の分別がなく、かろうじて自立してペットの犬の世話はしているものの、精神的成長が止まってしまっている女性なの。彼女は本当にイヤな女よ。正直に言っておくけど、メイビスは私が見てきた映画の主役のなかでもっとも美しい女性とは言えないわ、“身も心も”という意味では。誰だって初めは、これほど性格の悪いキャラクターには共感できないと思う。ところが意外とそうでもなくなってくるの。

それがこの映画のすごいところ。ジェイソンは、「映画を観ることは、鏡で自分自身を見るようなものだ」って言うのだけど、私もそう思うわ。欠点やあまり見たくない部分をあえて見せてくれるもの。だからメイビスは観客、とくに女性に受け入れられるんだと思う。

『JUNO/ジュノ』『マイレージ、マイライフ』ジェイソン・ライトマン監督作品

シャーリーズ・セロン、映画『ヤング≒アダルト』を語る(2)

彼女の言動は極端だけど、多くの女性が思い当たる真実がある

――自分自身に通じる部分はありましたか?

そんなことを言わせたいの? たくさんあるわよ(笑)! 彼女はとても現実味がある女性で、私には映画のなかの架空の人物とは思えない。私が会ったことがあるひとや、私自身に通じるものがたくさんあったから、まったく違和感を持たなかった。私はいわゆる“映画のなかだけのひと”とか、パロディみたいなキャラクターを演じることはできないの。どれほど非常識なひとでも、偉大なひとでも、とっぴで厄介で、ウンザリするようなひとでも、なにか現実に根差したものがないと、どう演じていいかわからない。現実味のない演技は得意じゃないのね。

――冒頭の二日酔いで目覚めるシーンは、メイビスの“負け犬っぷり”が如実に表現されてますね(笑)。

アパートでのオープニングシーンは、撮影開始直後の2日間で撮ったの。難しかったわ……。“その世界に飛び込む最初の1週間が好き”という俳優には、お目にかかったことがないわね。このキャラクターとしてはじめて歩き、しゃべり、振る舞うようなものでしょう。だから最初の週はなにもかもが少し不安定なの。ジェイソンにこう言ったわ、「台本の最初の30ページ、ほとんど台詞がなかったことを忘れてたわ……」。そうしたらジェイソンが、「作家の世界へようこそ」って。あの言葉に救われた。彼は脚本家として、孤独な時やなにかを書こうとする時、世界がどんな風に感じられるかを知っていたけれど、私は彼やメイビスのように作家ではないから、気持ちがわからない。

シャーリーズ・セロン、映画『ヤング≒アダルト』を語る 05

だからあのシーンは、その孤独感のなかに“生きよう”とすることを表現したの。もし笑いをとろうと演技をしたら、誰にもユーモアを感じてもらえなかったと思うわ。酒癖の悪い女がいて、子犬がいる。あのシーンが笑いを誘うのは、あまりにも悲しくて、寂しくて、孤立しているからなのよ。

――なぜメイビスは高校時代にこだわるのでしょう?

誰もが自分の人生に結びつけて考えられることね。それが高校時代か、ほかの時代かはわからないけど、今の自分の空虚な部分をなにかで埋めようとする。思い出すのはたいてい自分が最高だった時なんだけど、それが他人から見ると最高じゃなかった、ということもある(笑)。だからこのストーリーは別の設定もあり得たけれど、主人公がかつてとても人気があったというのはいいと思う。

シャーリーズ・セロン、映画『ヤング≒アダルト』を語る 06

彼女は誰もが憧れた人気者だったはずなのに、マット(パットン・オズワルト)というキャラクターが彼女に言うの、「君はあの頃、最盛期なんかじゃなかった」と。私は本作のなかで一番のキメ台詞を言っているのはパットンだと思う。どれも真実を言い当てている――メイビスが幻滅しきっている世界の真の姿をね。彼の言う「君は最盛期じゃなかったよ。僕が最盛期だったのに、君は僕に気づきもしなかった……」という、孤独が感じられる台詞。誰もが共感できると思うわ。人間は人生のどんな段階でも、ひどく孤独を感じることがある。

そして私たちは不健康なことや、自分自身を偽ることで、その孤独や隙間を埋めようとする。でもパットンは魅力的よ。「僕みたいな男は、君みたいな女を愛するために生まれてきたんだ」という台詞は、何度聞いてもハートをワシ掴みにされる!

――メイビスという女性に誰もが共感する?

このコメディは、現実社会のとても暗いところから引き出されている。だからブレない。メイビスはまちがいなく問題を抱えているし、大人の事情に立ち向かう手段を持ち合わせていない。精神的成長が止まっていて、ものごとの現実の姿を見つめ、対処する洞察力に欠けているわ。彼女の行動の多くは、とても好ましいとは言えないようなことだけど、私たちみんながその日を切り抜けるためにすることばかりなの。いかにもサバイバルモードね。

たとえば小さなウソや彼女がつねに“隣の芝生”を羨む考え方、自分の人生はすばらしいと他人にはっきりと伝えるやり方。彼女の言動は極端だけど、そこには多くの女性が思い当たる真実がある。もちろん孤独感も。彼女はとても孤独なの、それを誰にも打ち明けないのだけれど。人は誰でも孤独を経験している。この映画にはたくさんの人の心に響く要素がつまっているのよ。

――ありがとうございました。

『ヤング≒アダルト』

『ヤング≒アダルト』

TOHOシネマズ、シャンテほか全国公開中!

http://www.young-adult.jp/

監督|ジェイソン・ライトマン(『マイレージ、マイライフ』『JUNO/ジュノ』)

脚本|ディアブロ・コディ(『JUNO/ジュノ』)

出演|シャーリーズ・セロン、パトリック・ウィルソン、パットン・オズワルト、エリザベス・リーサー

ストーリー

美しくて才能もあるのに、やることなすこととんでもない。とても30代の大人の女性とは思えない。彼女のハートは10 代のまま──メイビス・ゲイリー、自称作家(本当はゴーストライター)。執筆中のヤングアダルト(少女向け小説)シリーズは人気が落ちて終了間近。新作の予定もない。見栄っ張りの彼女には、“自分が思う現実”と“他人から見た事実”のあいだに落差があった。そんなメイビスが妻子のいる元カレとヨリを戻すために帰郷、大騒動を巻き起こす。真実から逃れられなくなったメイビスが辿り着いた境地とは――

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