戦後70年、アウシュビッツ収容所解放70周年の夏に送る感動作『ふたつの名前を持つ少年』|MOVIE
MOVIE|戦後70年、アウシュビッツ収容所解放70周年の夏に送る感動作
ナチス時代を勇敢に生き抜いたユダヤ人少年『ふたつの名前を持つ少年』
ウーリー・オルレブ著『走れ、走って逃げろ』をドイツの名匠が映画化。過酷な運命を勇敢に生き抜いたユダヤ人少年の実話を基にした『ふたつの名前を持つ少年』が、8月15日(土)よりヒューマントラストシネマ有楽町ほかにて全国ロードショーされる。
Text by KUROMIYA Yuzu
主人公の少年役には双子の兄弟を起用
自身も強制収容所に入れられたことのあるユダヤ人作家のウーリー・オルレブが、ヨラム・フリードマンの体験を綴った『走れ、走って逃げろ』。その体験記を『Schwarzfahrer(黒人の乗客)』でアカデミー賞®短編実写賞を受賞したドイツの名匠、ペペ・ダンカート監督が映画化。
ダンカート監督が描き出すのは、第2次世界大戦時に、8歳のユダヤ人少年が身分と名前を偽り、ポーランド人孤児としてナチス・ドイツの手を逃れ、たったひとりで終戦までの3年間を生き抜いたという驚愕の実話にもとづく物語だ。主人公の少年役には、双子のアンジェイ・トカチとカミル・トカチを起用。カミルが繊細なシーンを、アンジェイがアクティブなシーンを演じるというように、兄弟の個性を使い分けることで幅広い感情を表現している。
奇しくも戦後70年、アウシュビッツ収容所解放70年の記念となる2015年に、大人から子どもまで、観る者すべての心に訴えかける感動作が誕生した。
“ポーランド人孤児ユレク”
ポーランドのユダヤ人強制居住区から脱走した8歳の少年スルリックは森へと逃げるが、飢えと寒さで行き倒れとなり、ヤンチック夫人に助けられる。夫人はスルリックの賢さと愛らしさに気づき、ひとりでも生き延びられるよう“ポーランド人孤児ユレク”という架空のアイデンティティをあたえ、追っ手から逃がす。
教わった通りに嘘の身の上を語り、寝床と食べ物を求めて農村を一軒ずつ訪ね歩く“ユレク”。無邪気な彼に救いの手を差し伸べる者、ドアを閉ざす者、利用しようとする者……。優しい家族に受け入れられ、束の間の平穏をつかみかけても、ユダヤ人だとばれては次の場所へと逃げる日々。ユダヤ人というだけで、なぜこんな目に合わなければならないのか。それでも生き別れになった父との約束を胸に、“ユレク”の命の旅はつづくのだった。
『ふたつの名前を持つ少年』
8月15日(土)ヒューマントラストシネマ有楽町ほかにて全国ロードショー
監督|ペペ・ダンカート
原作|ウーリー・オルレブ著『走れ、走って逃げろ』(母袋夏生訳 岩波書店)
出演|アンジェイ・トカチ、カミル・トカチ、ジャネット・ハイン、ライナー・ボック
配給|東北新社
2013年/ドイツ・フランス/108分/原題『RUN BOY RUN』
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©2013 Bittersuess Pictures