特集|「皇居でチャリティ・ランニング」リポート
特集|皇居でチャリティ・ランニング
変わらぬ思いを胸に
「Run for Children Tohoku in adidas RUNBASE 2014」リポート
「大好きなランニングで、東北の子どもたちを応援しよう!」と、チャリティ・プロジェクト“Run for Children Tohoku”を立ち上げたDJ松浦俊夫氏。震災から3年目を迎えた今年も、読者を招いたチャリティ・ランニングを実施。美しい青空のもと、変わらぬ思いを胸に皇居を駆け抜けた。
Photographs by TAKADA MidzuhoText by TANAKA Junko (OPENERS)
東北の子どもたちに、笑顔を届けたい
3月9日(日)。東日本大震災から、早くも3年が経とうとしていた。天気は快晴。数日前に降った雪が嘘のように、外には青空が広がっている。絶好のランニング日和と言っていいだろう。この日は、チャリティ・ランニング「Run for Children Tohoku in adidas RUNBASE 2014」の開催日。受付場所のランニング施設「アディダス ランベース(adidas RUNBASE)」には、昼前から続々と参加者が集まりはじめた。
「アディダス」の協力のもと、2012年から毎年開催しているこのチャリティ・ランニング。DJ松浦俊夫氏が発起人となってスタートしたイベントだ。根底にあるのは「東北の子どもたちに、笑顔を届けたい」という思い。それは3回目を迎えても、変わることはない。
イベントでは参加費として寄付金を募り、集まったお金はすべて、被災した子どもたちへの支援活動をつづける支援基金に寄付している。
「震災時に0歳だった赤ちゃんが、無事にハタチを迎えるその日まで」の願いを込めたハタチ基金だ。被災した子どもたちの心のケアをはじめ、遊ぶことや学ぶこと。ハタチ基金は、そんな当たり前の日常を、子どもたちが一日でも早く取り戻せるように、支援活動をつづけている。
この日、参加費として募った寄付金の合計額は11万7000円。寄付金に添えられた、子どもたちへの思いとともに、松浦氏の手で全額ハタチ基金に届けられた。
震災の記憶が、少しずつ過去のものとなりつつあるいま。被災地との距離を縮めるために、私たちにできることはなんだろう。大きなことはできないかも知れない。毎日思い返すことも、忙しい日々のなかでは難しいかもしれない。ただ一年に一度は被災地に思いを馳せ、被災した子どもたちにエールを送る。それもひとつの「チャリティ」の形ではないだろうか。
平和の象徴、青い鳥を背負って皇居へ
12時30分。「これはタイムを競うイベントではありません。ともに楽しみながら、心をひとつにして、東北の子どもたちにエールを送りましょう」。松浦氏がそう宣言したあと、参加者たちは皇居に向けて出発した。
その背中には、「Run Run Run for Your Life」の文字とともに、ランニングシューズを咥えた鳥のイラストが。「日本を世界で一番美しい国にする」をコンセプトに、建築とデザインの世界で活躍する「NIKKO DESIGN」が、この日のために手がけた特製Tシャツだ。平和の象徴である、青い鳥が羽ばたくイラストには、彼らと松浦氏の「子どもたちを取り巻く環境が、ナチュラルで大きく、すこやかで美しくありますように」という願いが込められている。
青い鳥とともに皇居を駆け抜けた参加者たち。ランニング後に向かった先は、アディダス ランベースの隣にあるレストラン「永田町 マドゥレス」。松浦氏はそこで感謝の意を述べたあと、被災地への思いを語った。「現地で活動をつづける友人がいます。彼らが口をそろえて言うのは、被災地のことを忘れないでほしいという切なる願い。そして3月11日を、防災意識を高める日にしてほしいという、現地の状況を知る彼らからの呼びかけです。ぜひ周りの方にも伝えてください」
復興はまだはじまったばかり
その後、スクリーンに映し出されたのは、ハタチ基金で活動するNPO団体から届いたふたつのビデオレター。最初に映し出されたのは、福島・郡山市に位置する「ふくしまインドアパーク」。放射能の問題が長期化し、安全な遊び場を見つけるのが難しくなった福島の地で、子どもたちが安心して、思い切り遊べる場所をプレゼントしよう。そんな思いで設立された屋内公園である。
「福島の子どもは震災以降、外で遊ぶことが減ってしまいました。その結果、運動不足や肥満など、さまざまな悪影響が出ています。震災から3年が経ちますが、屋内公園の数はまだまだ足りていないのが現状です。引き続きのご支援を、どうかよろしくお願いします」
次に映し出されたのは、福島・南相馬市で「みなみそうまラーニングセンター」を運営するトイボックス代表の白井智子氏。発達障害などさまざまな理由から、被災地で厳しい状況に置かれている子どもたちの学習支援、心理ケアをおこなっている施設だ。
「この施設を立ち上げて2年になります。みなさんの支援のお陰で、子どもたちが安心できる場をもつことができ、本当にありがたく思っています。その一方で、福島にはいまでも震災の影響が色濃く残っていて、まだまだ支援が足りていないのが現状です。そんななか、被災地のことを思って走ってくださるというのは、私たちにとって大きな励みになっています」
どちらのビデオレターからも、聞こえてきたのは「まだ支援が足りていない」という厳しい現実だった。実は、復興はまだはじまったばかりなのだ。おなじランニングコースも、ひとりで走るより、だれかと一緒のの方が心強いように、先の見えない復興への道のりも、ひとりで走るより、だれかと一緒の方が心強いはずだ。この日、皇居を駆け抜けた参加者たちの思いは、「ここに仲間がいるよ」という大きな呼びかけの声となって、被災地の子どもたちに届いただろうか。