『渋谷5Gエンターテイメントプロジェクト』は日本再生計画だった! キーマンであるKDDI・革新担当部長・三浦伊知郎インタビュー|au
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2020年3月6日

『渋谷5Gエンターテイメントプロジェクト』は日本再生計画だった! キーマンであるKDDI・革新担当部長・三浦伊知郎インタビュー|au

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au|渋谷5Gエンターテイメントプロジェクト

革新担当部長・三浦伊知郎氏インタビュー

先日、記者発表がおこなわれた『渋谷5Gエンターテイメントプロジェクト』。「渋谷の街をエンターテイメントに特化したテクノロジーでより面白く」「au 5Gで渋谷の街を創造文化都市へ」というスローガンは見えたものの、具体的な中身はまだ見えない。しかし、それは当然のことであった。何をするかは「走りながら考える」と屈託なく語る、KDDI ビジネスアグリケーション本部担当部長であり同プロジェクトのキーマンとなる三浦伊知郎氏に真意を訊いた。

Text by TOMIYAMA eizaburo|Photo by TAKASE tatsuya

何をするかは「走りながら考えます」

ーー『渋谷5Gエンターテイメントプロジェクト』は、KDDI、渋谷未来デザイン、渋谷区観光協会の3社が主幹事となっています。そもそもはどのようにスタートしたのでしょうか?
三浦 KDDIのオフィスが渋谷にもあるということもあり、以前から渋谷区と何か連携できないかと模索していました。通常であれば、弊社も通信業社という半公共サービスですので、どんなビジネススキームを作りましょうかとマジメな話になる。また、公共系同士が組んでも面白いことが生まれにくい。そこで、渋谷未来デザインさんや渋谷区観光協会さんと一緒になって、何か新しいことをやろうとしたのが出発点です。
ーー渋谷未来デザインというのはどういう組織なのでしょう。
三浦 2018年4月に設立された社団法人で、私なりの解釈ですが、感覚的にはベンチャーに近い。渋谷にはたくさんの人がやってきますよね? ゆえに、ハロウィンの日などはオーバーツーリズム状態になってしまうなど問題も多い。しかし、それを区民の税金で解決するべきなのかというと難しい。センター街周辺に住んでいる方は少ないですから。そういったなかで、渋谷区が抱える社会的な課題を企業と共に解決しよう、街の魅力を再発見しよういうのが、『一般社団法人 渋谷未来デザイン』の大きなミッションだと理解しています。KDDIも参画しています。
ーー渋谷未来デザインには、同業他社のNTTドコモや東急電鉄など大手企業も多く参画していて、産官学民連携で新しい取り組みが生まれると期待されていますよね。
三浦 地方自治体の取り組みとしては好例になっていると思います。
ーー話を戻すと、当初は3社で何かやろうということだったんですね。
三浦 はい。そこでいろいろと話し合いをするうちに、KDDIという会社は成り立ちからエンターテイメント色の強い会社だなと改めて感じたんです。そうであれば、そこを際立たせて何かをやってみようと、2019年9月に渋谷未来デザイン、観光協会の3社でまずは組織を立ち上げました。当然ながら、社内外からは「何をやるの?」と聞かれるわけですが、僕の答えは「走りながら考えます」という(笑)
ーーすごい(笑)。よくOKが出ましたね。

既成概念を壊すことがイノベーションには必要

三浦 イノベーティブなことをやるには、既成概念を一度壊して「ここで遊んでいいんだよ」という土壌を作ってあげたほうがみんな動きやすいだろうと考えたんです。弊社の社員は皆さん優秀なので、うまく作り込んでくれますから。昨年、9~12月で7本の企画を実施しました。まさに走りながら考えて実行した結果です。
ーーどんな企画だったのですか?
三浦 一番インパクトがあったのは『MUTEK.JP』*1です。KDDIとして参加したのは2019年で3回目でしたが、2018年は共催として参加し、日本科学未来館でかなり大きなイベントをMUTEKチームと一緒にやりました。そこで弊社の社員にいろいろな気付きが生まれたんです。
※1MUTEKとは、デジタル・クリエイティビティ、電子音楽 、オーディオ・ビジュアルアートの創造性の開発、文化芸術活動の普及 を目的とした、国際的に 名高 い芸術文化活動を行う団体。2016年、アジア唯一となるMUTEK Japanが発足、毎年12月にフ ァスティバルを開催 している。写真はRYOICHI KUROKAWAのパフォーマンス。
ーーどういう気づきなのでしょうか。
三浦 2017年あたりは、社員もどうしていいかわからない状態だった。でも、2018年に大きく関わるようになると、デジタルアートやクリエイティブをやっている人たちとも、自分たちは楽しくやれる、会話できるんだということがわかった。同時に、そういうことに興味のある人がどこにいるのか、部署を横断しての人材発掘ができたんです。
ーーKDDIさんは通信会社ですからデジタルに強いわけですし、研究所もあるので本来は親和性が高いに決まっていますよね。
三浦 そうなんです。5Gをはじめ様々な技術、研究所にはうまく使いきれていないテクノロジーがたくさんあるわけです。そういうのをクリエイターの方々にお見せすると、相当に面白いハレーションが起きる。そういった積み重ねのなかで、2019年にはKDDIの社員がクリエイターとして作品発表するまでに至りました。
渋谷のスクランブル交差 点をスマホでかざすと、ARでアートが浮かび上がる『インビジ ブルアートインパブ リック』。有名無名関係なく、純粋にアートとして魅力的なものが紹介された。
三浦 社員が『MUTEK.JP』でARアート展をおこなうことになったのも、渋谷未来デザインさんが主催している『ソーシャルイノベーションウィーク』(2019年9月)という、渋谷の未来を考えるイベントがきっかけなんです。弊社の社員も参加したトークセッションで、野性爆弾のくっきーさんが「スクランブル交差点にスマホをかざして、自分の絵が見られたら面白い」という話をしていて、そこからヒントをいただいたんです。

募集から締め切りまで2週間。それでも32社が集まった

ーー『渋谷5Gエンターテイメントプロジェクト』の基本的な考え方は、そういう積み重ねがあったわけですね。
三浦 でも、3社でやるには限界がある。そう考えていた時期に、他企業さんもこのフレームに入りたいと仰ってくれて。それならば、もう一気に変えちゃおうと。
ーー何を変えようとしたのでしょう?
三浦 弊社もそうですが、おそらく他の日本企業も同じような悩みを抱えていると思うんです。というのも、今の日本社会というか会社組織はどん詰まっている気がするんです。どこに向かっていいのかわからない。どうすればいいか模索しているうちに時間だけが過ぎていく。そこまできたら、これまでの価値観をすべて捨てるくらいの勇気がないと無理だと思うんです。一方で、こういう話をすると理解してくれる人も多い。
ーー閉塞感をみんなが抱えていますからね。
三浦  はい。そうであれば、公共的なサービスである5Gを使って、エンターテイメントの分野でそれぞれのアセット(資源)を持ち寄りながら、実証実験をしてみましょうよと。募集をかけたのが12月末で、記者発表したのが先日の1月24日でした。
ーーすごいスピードですね。
三浦 いまの時代、何事も高速回転しないといけないと思っているんです。なので、「参加企業をつないでいきますよ」と募集して、締め切りは2週間後という(笑)。そんななか、まさか32社も集まるとは思っていませんでした。皆さん、いい意味で危機感がある。
ーーどのような募集内容だったのでしょうか?
三浦 ひとつは渋谷という街を使うこと。もうひとつは、エンターテイメントとテクノロジーで街をよくしようということ。そして、すぐにマネタイズはできないので初年度はいろいろと実験しましょうということ。もちろん、実験で終わらせる気はありません。各社それぞれ、なんとなくの方向性はすでに決まっています。
ーー走りながら考えるという方法論は、『渋谷5Gエンターテイメントプロジェクト』においても発揮されているんですね。
三浦 そうですね。でも、まだローンチしたばかりですが、すでに面白い組み合わせは生まれ始めています。一方で、「僕たちはどうすればいいですか?」「どうなるんですか?」という会社さんもある。でも、それは自分で考えてもらうしかない。受け身の会社はいらないんです。1年後に10個くらいのビジネスモデルができれば成功かなと思っています。
ーー本当に変わる気があるのかを試しているんですね。でも、こういうやり方は、KDDIとしてもチャレンジグなわけですよね?
三浦 実は、私には「革新担当部長」という肩書きがあるんです。KDDIも大きな組織ですので、新卒で入社している方々がほとんど。そうなると、コーポレートカルチャーが固まってしまう。変化を求めても、社内の人間ではどうにもならないことは大きいわけです。
ーーはい。
三浦 そこで、外部から特定のノウハウや知見がある人を複数人、「革新担当部長」として招き入れた。私の場合は、イベント事業とイノベーティブな新規事業を立ち上げることをミッションとして与えられました。その他、金融やらエネルギーやらいろんなジャンルに「革新担当部長」がいます。

『CE LA VI 東京』でキックオフパーティをやった理由

ーーKDDIは本気で変わろうとしているんですね。そんな三浦さんは、かつてディーゼルジャパンにもいらっしゃって、アパレルや音楽方面の人たちともつながりが強い。これもなかなかの個性ですよね。
三浦 先日、『渋谷5Gエンターテイメントプロジェクト』のお堅い記者発表をやりましたが、その夜には東急プラザ渋谷の『CE LA VI 東京』でキックオフパーティをやったんです。元アンダーワールドのダレン・エマーソンやKEN ISHIを呼んで盛大に。
ーー遊びに行かせていただきました。シンガポールの『マリーナベイサンズ』の最上階バーの東京版というお店で、ルーフトップの最高な空間でした。
CE LA VI東京でおこなわれた、『渋谷5Gエンターテイメントプロジェクト』のキックオフパーティ。写真のDJはダレン・エマーソン。
三浦 ああいうことをやると、みんなビックリするわけです。私はディーゼルにいたので珍しくないし、自分だからこそできることだと思ったのがひとつ。それに、エンターテイメントなプロジェクト発表会の日に、楽しい企画がひとつもないのは良くない。
ーーそれはそうですよね。
三浦 参画いただいた32社の方々もいらしていましたが、クラブのようなパーティ会場に放りこまれると身動き取れなくなる方々もいる。実はそれも狙いのひとつで、「あなたたちは今後、ここにいるような人たちと会話をしなくてはいけないんですよ」というメッセージでもあったんです。「もう戻れませんよ」って(笑)
ーーあははは。でも、いまの話であの夜のイベントの意味がわかりました。昼間の記者発表会との落差が不思議でもあったんです。
三浦 でも、みんな意外に楽しんでくれて、遅くまで残ってくれた人も多かったんです。弊社にとって『MUTEK.JP』がきっかけになったように、『渋谷5Gエンターテイメントプロジェクト』に参画してくれた会社の方々も、これをきっかけにどんどん新しい世界に飛び込んでほしいと思っています。
ーー三浦さんにとっては、渋谷と5Gとエンターテイメントを使った日本再生計画でもあるんですね。
三浦 危機感はすごくあります。僕は煮詰まるとすぐインスピレーションを得に海外に行きますけど、若い人もどんどん旅に出るべきだと思うんです。もっとスマホだけじゃなくて、肌で体験して、もっとみんな自由な思考で高速回転して欲しい。そして、『渋谷5Gエンターテイメントプロジェクト』をうまく活用していただければと思っているんです。まだ言えないことが多いですが、これから面白いことがどんどん生まれていきますよ!
三浦伊知郎 | Ichiro Miura
KDDI株式会社 革新担当部長
成蹊大卒。1996年よりNTT(日本電信電話株式会社)、Ogilvy and Mather、DIESEL JAPAN 広報宣伝室マネージャーを経て、PRコンサルティング会社立ち上げ。
その後2017年、KDDI株式会社にて事業のプロモーション等をメインとした領域の革新担当部長に就任し、2020年1月に、民間企業32社と渋谷区と共に、渋谷5Gエンターテインメントプロジェクトを立ち上げ、渋谷発の5G、テック&エンターテイメントビジネスの創出を主導。
趣味と実益を兼ねて1995年より約5年間日本、オーストラリアにて大規模フェスティバルの立ち上げとプロデュースにも従事。また、学生時代より世界60カ国以上の旅して廻る会社員トラベラーとして、プチラグジュアリーバックパッカーの旅を提唱中。
                      
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