LOUIS XIII Chapter 13 アンバサダー 遠山正道
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2015年1月8日

LOUIS XIII Chapter 13 アンバサダー 遠山正道

LOUIS XIII|ルイ 13世

アンバサダーインタビュー10>

遠山正道(スマイルズ 代表取締役社長)

途方もない年月と妥協を許さない酒づくりによって生み出される唯一無二のブランデー、ルイ13世。その魅力を広く伝えるべく選ばれた13人のアンバサダーたちが、グランド ハイアット 東京の「メゾン ルイ13世」(バー「マデュロ」内にて2012年3月31日までの期間限定で展開)からお届けするインタビュー。第10回目は“世の中の体温をあげる”をコンセプトに、「Soup Stock Tokyo(スープストックトーキョー)」などさまざまな事業を展開する、スマイルズ 代表取締役社長の遠山正道さん。

Text by MONZEN NaokoPhotographs by IGARASHI Takahiro

“突き抜ける”ことができる品質と、その価値

私はこれまで、人生もビジネスも少し背伸びをしながら自分のなかの筋肉を鍛えてきたところがあります。ルイ13世のアンバサダーのお話も、自分には分不相応と感じながら、こんな光栄な機会はないと気の引き締まる思いでお受けしました。

スケールや歴史は比べものになりませんが、自分の事業とルイ13世の酒作りに共通点を感じる部分は“突き抜ける”ことができる質があるということ。自信をもって胸を張れる品質があるということですね。「スープストックトーキョー」を始めたとき、非常にクオリティの高いスープができたと思ったんです。では、この品質に負けない素敵な売り方をしたいと。パッケージや店舗のデザイン、スタッフの教育……最高の“うつわ”を、このスープに用意したいと思いました。
手間ひまかけてつくって、素敵な売り方をしようとすると、ものすごく安い価格で販売するというわけにはいかなくなる。しかし、やってみたら多くの人が受け入れてくださった。売り手が自信をもてる品質なら、受け手にもわかってもらえる。“突き抜け”ていいんだなと思いましたね。装飾的なボトルで、素材はバカラのクリスタルでと、ルイ13世もある意味トゥーマッチに見えるかもしれない。実際、ほかの酒だったら中身と合わずにちぐはぐな印象になってしまうでしょう。でもこれが過剰にならないのがルイ13世。見合う中身があるから、“突き抜け”た存在たりえるんですね。さまざまな価値観が入り乱れて、絶対的なものが見えづらい社会のなかで、こういった存在は非常に貴重なものだと思います。

価値観のものさしとなってくれる酒

幼いころ実家にボトルがあったように記憶していますが、実際にルイ13世を飲んだのはアンバサダーを受けてから。最初に飲んだ時の衝撃は忘れられません。この酒をつくるのにかかる年月や素材についてなど、予備知識はもっていましたが、それを超越する味わいがありました。普通のブランデーが水のように感じるほど、全く別物だと感じましたね。最初のアタックから徐々に口のなかに広がっていく豊かで複雑な香り……。あまりに多くのことを語りかけてくるので、少しずつでないとこちらのキャパシティを超えてしまうんです。

第二次世界大戦時にシベリアで抑留されていた日本人が、一つの米粒を三等分して食べていたという話を聞いて自分でも試してみたことがあります。三分の一なのに、噛んでいるうちに味覚が冴えてきてしっかりとした甘みを感じました。以来、自分の感覚を総動員させて何かを味わうときには、甘さの存在感を確認することが多い。ルイ13世も芳醇な香りの奥に甘さがあります。三分の一の米粒のように、少しずつ口に含んでゆっくりと向き合いたい酒ですね。ルイ13世の素晴らしさは、これだけの複雑性をもちながら誰が飲んでも素直に美味しいと感じられること。複雑ですが、味がまったく理解できない難解な酒というわけではない。長い歴史を経てなお輝き続けられる所以(ゆえん)だと思います。

例えば「スープストックトーキョー」の場合でも、メニュー開発から物流、販売とまるでバトンを渡すかのように、一杯のスープにさまざまな人がかかわっています。大事につくられた商品だと認識すれば、最終的にお客様に渡すスタッフも、受け取る人の背筋も伸びる。常づねそう社内で言っていますが、ルイ13世はそのバトンの重量感や存在感が圧倒的に際立った酒といえるでしょう。パリに行くと、100年、200年変わらない古い街並みの素晴らしさを実感します。いっぽう、東京では節操なくあたらしいものが生まれては壊されていく。目を覆いたくなるものも多いけれど、そのなかで素晴らしいものが生まれることもある。大事なのはバランスで、どちらかだけではプアな世の中になってしまいます。途方もない時間や努力をかけてつくられるルイ13世の味わいは、伝統の価値を教えてくれる最良の“ものさし”といえるのではないでしょうか。さまざまなものが混在する世界で、個人の好みを超えて絶対と言い切れる品質と歴史をもった“ものさし”だと。

自分の基準を知るプロジェクト

私の会社でも、今年の秋をめどに自分の“ものさし”を知るためのプロジェクトをスタートさせる予定です。いまや世界的になった日本の“カワイイ”という価値観。何でもかんでも“カワイイ”で表現されがちですが、じゃあ、自分の“カワイイ”って何だろう?と。「my panda」という色と柄のバリエーションを豊富に揃えたアパレルブランドをとおして、自分なりの基準を見つけてもらいたい。世界の共通言語となったこの言葉の“ものさし”になるようなブランドを作りたいですね。自分の“ものさし”がしっかりしていれば、他者とのコミュニケーションもより豊かになりますから。自分の考えや立ち位置を教えてくれるルイ13世のような“ものさし”を、日々あたらしいものが生まれる東京から発信できたらと思っています。

遠山正道|TOYAMA Masamichi
株式会社スマイルズ代表取締役社長。1962年、東京都生まれ。慶應義塾大学卒業後、三菱商事株式会社に入社。1997年に日本ケンタッキー・フライド・チキン株式会社に出向後、1999年、スープ専門店「Soup Stock Tokyo(スープストックトーキョー)」第1号店をオープン。2000年に三菱商事初の社内ベンチャー企業として株式会社スマイルズを設立。2008年に100%株式を取得し、現在「スープストックトーキョー」、ネクタイブランド「giraffe(ジラフ)」、セレクトリサイクルショップ「PASS THE BATON(パス ザ バトン)」の企画・運営を行う。アーティストとしての顔ももち、NY、青山、代官山などで個展も開催。著書に『スープで、いきます~商社マンがSoup Stock Tokyoを作る』がある。

           
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