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2023年4月18日
氷温熟成酒「礼比」。時間旅行に飛び立つための、ドラえもんの道具のような日本酒、爆誕!!|SAKE HUNDRED
SAKE HUNDRED|サケハンドレッド
SAKE HUNDREDのブラックラベル第2作目「礼比」(※)、5月15日(月)18時より公式ページにて数量限定発売
日本酒界に革命を起こしているSAKE HUNDRED。なかでも、限られた銘柄だけに施されるブラックラベル(※SAKE HUNDREDのブランドカラーはホワイトなので、通常はホワイトラベル)に、新作がラインナップしました。それが、数量限定銘柄「礼比」(らいひ)。16万5000円(税込)という高価格なアイテムなので、全員に試してほしいとは言えません。でも、この対価を支払える可能性があるなら、ぜひとも試すことをおすすめします。あと何十年後、きっとフランクに楽しめるようになるであろう未来の酒質設計を、まるでタイムマシンでワープするごとく先取りできる、とても稀有なアイテムです。
(※)第1作目は、「現外」。詳細はこちらの記事へ(https://openers.jp/lounge/lounge_features/1wLWm)
(※)第1作目は、「現外」。詳細はこちらの記事へ(https://openers.jp/lounge/lounge_features/1wLWm)
Text by TSUCHIDA Takashi
まさにツルっトロっの極地。日本酒は、ついに未体験の領域へ
「礼比」とは、13年間氷温庫で保存した熟成酒であり、そのうちの直近3年間はフレンチオーク樽で寝かしています。そして日本酒の造り自体も通常と異なり、3段仕込みの最後の仕込み水に日本酒を加える「貴醸酒」と同様の造りです。日本酒の発酵が途中で止まるので、お米の糖分が液体に残り、ほど良く甘やかな味わいとなるのです。
驚くのは、飛び抜けて芳香な香り。オーク樽由来のバニラの香りに包み込まれ、一瞬のうちに華やぎの世界へと誘われます。口に含むと、熟成由来の極めてまろやかなテクスチャー。とんがった部分がまるでなし!
どこまでも、まろやかで、甘やかで、スムースな世界。
この感動を他に例えるものはないかと考えてみたところ、私は、ボルドー・ソーテルヌ地区の甘口ワインを想起しました。でも、この「礼比」は、ソーテルヌに輪をかけて、スムースでふくよか。5角形のチャート図で示すなら、ナントカ角形じゃなくて、もはや、まん丸。要素と要素の間までも埋め尽くす膨らみがあり、それでいて、しつこくない。これ、とっても重要!! しつこくないんです。こんな体験は、日本酒、ワインを通じて初めてでした。
日本酒が熟成すると、お酒の中に存在する糖分とアミノ酸がメイラード反応を起こします。茶色く色づくのも、メイラード反応ですね。プリンの茶色いカルメラと一緒です。ですから、コクが出る分、飲み心地が重たくもなり、しつこさが出てくるんです。
ところが、この「礼比」。13年間も熟成しているのに、メイラード反応がとても薄い。その秘訣が、氷温熟成。日本酒はゼロ度前後の氷温だと、熟成スピードが遅まります。つまり、13年もの長い時間をかけ、敢えてゆっくり・ゆっくり・ゆーっくりと熟成させているということ。そのおかげで、メイラード反応というネガティブな要素を回避しつつ、熟成のプラス要素を引き出しているんです。
熟成のプラス要素とは、まろやかなテクスチャーです。味わいを構成する分子が結合して、口当たりがツルリン、トロリンとなるんです。繊細な日本酒が、その繊細さをそのまま保ちつつ、13年間熟成というボルドーワインの熟成年数と同等のスペックをまとった、という、とても稀有な液体です。
ハイ、とても稀有な分、お値段もとても高いです。1本16万5000円。日本酒としては破格ですし、一般庶民のワタクシにとっては、宝くじが当たらないと手が出せません。でも、この価格はそのまま希少価値。なぜなら、このようなお酒をほかに探そうにも、今現在、世界中どこにも探せません。
最近になって、日本酒における熟成という概念が脚光を浴びていますが、そもそも13年前に、日本酒で熟成といっても「ハアっ?」と、思われる次第。しかも! 氷温熟成という概念も奇抜すぎて、受け入れられるものではありませんでした。ワインと違って、日本酒の熟成適温はもっともっと低いんです。このことも、近年になって解明されたこと。
13年もの間、批判の目に屈せず、このお酒は守り抜かれてきたんです。その希少性に対して、「礼比」の値付けはおかしいものではありません。彼の地、フランス銘醸地でも、熟成ものの値付けは跳ね上がるわけですから。いつ何時、何が起こるかわからない分、そのリスクをくぐり抜けてきた奇跡に、対価は支払われるべきものなのです。
今まさに、日本酒の熟成酒が注目され、複数の蔵元が熟成向けの日本酒を仕込んでいます。でも、それらのボトルが市場に出てくるのは、まだまだ先の話。もしかしたら、私たちの次の世代が、「嗚呼、日本酒の熟成っておいしいね。先輩たち、仕込んどいてくれてありがとう!」って言われてしまうかも。
うぐっ。そんなの、悔しすぎるわけです。
というわけで、この限定「礼比」は、そんな自分たちの次の世代が、きっと豊かに日本酒ライフを楽しむであろう氷温熟成のツルっトロっな味わいを、一足飛びでワープして先取ってしまうもの。こんな貴重な体験をさせてくれるのですからね、体験できる可能性がある人は、今すぐ、体験することをおすすめします。
ちなみに、種明かしをすると、この「礼比」は、群馬県の永井酒造さん(※「水芭蕉」銘柄が有名)が、氷温熟成の価値を信じて保存していたお酒を、SAKE HUNDREDが見初たもの。最後のオーク樽熟成で香りにお化粧を施しているあたりが、とてもソーテルヌのようで、さすが、世界を見据えて日本酒造りに革命を起こす団体の視点だと思っています。
何らかの日本酒の代わりに留まらず、もしかしたらボルドー・ソーテルヌ、ポルトガル・マディラのように食後のシメ酒として、世界のツウを唸らせていくに違いありません。
これまで、がんじがらめだった日本酒界隈に、いま革命がどんどん起きています。そのただなかに、ワタクシたちは生きている、そのことを実感できる、素晴らしい1本です。
問い合わせ先
SAKE HUNDRED
https://jp.sake100.com/products/raihi
内容量|500ml
製造者|永井酒造(群馬)
販売元|SAKE HUNDRED
価格|16万5000円(税込)