連載・TOKYO PREMIUM BAKERIES|第18回 ブーランジェリー ルボワ
第18回 Boulangerie Lebois|ブーランジェリー ルボワ
訪れたひとを楽しくさせる、パワーを秘めた本格パン
東京でほんとうに「上質でおいしいパン」を提供しているパン屋さんを紹介する連載第17回は、中野富士見町の中野通りに沿いにある『ブーランジェリー ルボワ』。ウッディな外観が印象的な、こじんまりとした洒落たお店です。
取材・文=戸川フユキ写真=高田みづほ
目指すは、地域への “あたらしく、おいしいもの” の発信基地
地下鉄丸ノ内線の中野富士見町駅を降りて徒歩約3分、中野通りを右折するとヨーロッパの田舎にポツンとあるような、かわいらしい木造の建物が目に入る。ここが“Lebois”(フランス語の冠詞 Le + 森 bois)と綴る、森 朝春さんの店『ブーランジェリー ルボワ』だ。森シェフは、金沢出身のパン屋さんの3代目。東京の製パン学校を卒業後、5年間パン屋さんに勤務し、その後フランスで約3年の修行の末、2001年にこのお店を開いた。
じつは以前、パーティーのケータリング業を営む友人を手伝ったさいに、「中野富士見町のおいしいパン屋さんまで予約したパンを取りに行って来て」と訪れたのが『ルボワ』だった。
失礼ながら、近所には洒落たお店などあまり見かけない地域。しかし一歩店内に入ると、本格的なハード系のパンから、あんぱんやバターロール、キッシュなどのお惣菜系までが所狭しとならび、じつににぎやかだった。あれから数年、久しぶりに『ルボワ』を訪れたが、ひとを楽しい気分にさせるムードは、なんだかパワーアップしているようだ。
店頭にならぶパンはなんと60種類以上。菓子パンやバターロールなどは、子どもも持ちやすい、ちょっと小ぶりなサイズだ。そのサイズのためだろうか、棚にならぶ姿もなんだか愛らしい。
森シェフのパンづくりのモットーは、「手を抜かないこと」。そして、つねにパン生地の様子を見ながら、「つくりたい味や口溶けのために、最適な材料とレシピでつくること」。『ルボワ』で使用する酵母は自家製の小麦酵母がメインだが、イーストも併用し、ややがっちりと仕上げるハード系のパンには自家製のブドウ酵母を使用する。
「フランスで最初の朝に食べた、めちゃくちゃおいしいクロワッサンの衝撃が、いまでも忘れられないんです」と、森シェフこだわりのクロワッサンは、発酵バターがたっぷり入り、あえて自家製酵母は使わずイーストのみで焼き上げる。外側はサクサクで中はふんわりとやわらかい仕上がりだ。
くるみとクランベリーが入った「クランベリーノワ」は、ブドウ酵母にイーストを併用しラードをくわえてつくる。ハード系のパンの入門編ともいえそうな軽い食感が人気だ。また一度見たら忘れられない、なんともユーモラスなかたちの「マカダミア カンパーニュ」は、コンテスト受賞のパン。上に載ったふたつの丸いお団子の中には、丸ごとのマカダミアナッツが仕込まれ、パンのまんなかにも半割りのマカダミアナッツが入っている。
取材の最中も途切れることなくお客さんが来店し、制服姿の小学生の男の子があんぱんを一個買って帰った。森シェフは「彼は、毎日のように来てくださる“お得意さま”なんです」と小声で教えてくれた。『ルボワ』は地域のひとたちにしっかりと愛されているパン屋さんなのだ。
「ルボワに行ったら、ちょっと変わったあたらしいものがあるよ」と言われるようになったらいいですね。大げさですが、近所のひとたちへのあたらしくおいしいものの発信基地というか。それに、これからはお菓子もつくりたいし……」と森シェフ。
小さな店にキュッと凝縮されたシェフの熱い思いは、焼きたてパンの香ばしい香りとともに、少しずつ中野の街に広がっていくことだろう。
Boulangerie Lebois
『ブーランジェリー ルボワ』
東京都中野区弥生町町2-52-4
Tel. 03-3229-8015
営業時間|9:00~19:00
日曜・第2 / 第4月曜休
(営団地下鉄丸ノ内線、中野富士見町駅より徒歩5分)
http://www.boulangerielebois.com/index.html