連載|『JAPANESE DANDY』の系譜(後編)
特別連載|時代を超える日本の男たちの肖像
『JAPANESE DANDY』の系譜
後編「アパレル業界への影響と海外にたいする提示」
10代から90代まで、130人の日本人男性を「ダンディズム」をテーマに撮り下ろし、一冊に集約。2015年1月中旬、『JAPANESE DANDY』が万来舎より発行された。制作の舞台裏を、プロデュースとディレクションを担当した、河合正人氏が全3回にわたって語る。中編につづき、後編は「アパレル業界への影響と海外にたいする提示」というテーマで、今後の展開について話を聞いた。
Interview & Text by IWANAGA Morito (OPENERS)
日本人が解釈する洋装の現在
ついに刊行された珠玉の写真集、『JAPANESE DANDY』。今回、河合正人氏が語ったのは、本書がもつ「アパレル業界への影響と海外にたいする提示」という側面について。日本のファッションが秘めている可能性を、あらためて再認識させてくれる内容となった。
――どのように130名の出演者を集めたのですか?
撮影させてもらった方のうち、7割ほどは、程度のちがいこそあれ、先に存知あげている方だったんですね。あとはご紹介を受けた方もいますし、街で声をお掛けした方もいます。みなさん、ボランティアでこの企画に参加してくれました。
――著名な方から一般の方まで、さまざまですね。
はい。出演者の何割かはアパレル業界の関係者なのですが、この写真集を手に取った方が「男のスーツ姿っていいよね」と思って、「じゃあ一着、スーツでも買おうかな」という動機になれば、彼らへの間接的なお返しとして、国内のメンズファッションを盛り上げることができると考えています。またアパレル業界に携わっていない出演者の方がたも、それを望んでくれているはずだと、私は思います。
今後の展開としては、国内の大都市や中核都市を数年かけて写真展で回れればと思っています。リアルなプリントではないと、感じられないものもあるはずです。それを見た方が触発されて、スーツやネクタイ、靴などを買いにお店へ足を運んでいただければ幸いです。全国を巡ることで、大手アパレルだけではなく、地方のお店も活性化するのではないかと。
――この写真集が最終的に行き着くところは?
やはり、海外の方に見てもらいたいです。いまの日本のリアルなスーツスタイルを。明治5年、洋装を日本の礼装として取り入れることを太政官布告で明治天皇が定めました。それまでは衣冠束帯、紋付き袴ですね。それから140年以上の歳月のなかで、海外からやってきた洋服が、日本にこのように根付いていることをアピールしたいです。
今回、撮影のオファーをした際に「着物でもいいですか?」という方がたもいらっしゃいましたが、「今回は洋服で」とお願いいたしました。それは、洋装で勝負するためなのです。自動車然り、洋酒然り、カメラ然り、それらは、すべて海外からやってきたものです。それを日本人独自の感覚で再解釈し、世界に冠たるブランドとして輸出ができているわけです。そろそろ、そこに日本の洋装が当てはまってもいいのではないかなと思っています。
いま「クールジャパン」の取り組みで、日本のコンテンツを海外へ発信しようという動きがありますよね。『JAPANESE DANDY』は、まさしくコンテンツです。昨年、出版に先行して出展させていただいた「TOKYO PHOTO」主催の原田知大さんも、日本の技術やハードを輸出するのではなく、コンテンツを輸出していきたいというところでこの企画を気に入ってくださいました。この写真集が海外へとわたり、とくに西洋の方がどうジャッジをするのか知りたいです。「日本人もなかなかやるんじゃないの?」という声を聞ければいいですね。
『JAPANESE DANDY』
発売中
プロデュース&ディレクション|河合正人
写真|大川直人
登場人数|130名
仕様|B4変形判(左右261× 天地320ミリ)
左綴じ上製本(ハードカバー)、272頁
発行・発売|万来舎
価格|1万800円
http://japanesedandy.com
河合正人|KAWAI Masato
フラワー・コーディネーター、ファッションプロデューサー。1958年、京都生まれ。1986年、河合正人花事務所を設立。広告、雑誌、イベントでの制作を中心に活動。フラワー・コーディネートで農林大臣賞を受賞、そのほか受賞歴多数。1994年、写真集『FLOWERS』を出版。2012年に、2冊目となる『FLOWERS』(万来舎)を出版。
大川直人|OHKAWA Naoto
フォトグラファー。1957年、東京生まれ。1982年、フリーカメラマンに。1988年、株式会社大川直人写真事務所設立。1997年、代官山にプライベートスタジオを開く。広告、ファッション、CD ジャケット、ミュージックビデオなどを中心に活動している。2012年『FLOWERS』刊行。1984年「WONDER WHEEL」、1986年「AFTER HOURS」と個展を開催。