連載|『JAPANESE DANDY』の系譜(中編)
特別連載|時代を超える日本の男たちの肖像
『JAPANESE DANDY』の系譜
中編「時代を残す記録」
10代から90代まで、130人の日本人男性を「ダンディズム」をテーマに撮り下ろし、一冊に集約。2015年1月中旬、『JAPANESE DANDY』が万来舎より発行される。制作の舞台裏を、プロデュースとディレクションを担当した、河合正人氏が全3回にわたって語る。前編につづき、中編は「時代を残す記録」というテーマで、本書が出版される意味を読み解いていく。
Interview & Text by IWANAGA Morito (OPENERS)
2010年代に存在した、日本の男たちの姿を焼き付ける
出版を目前に控えた『JAPANESE DANDY』。今回、河合正人氏が語ったのは、本書がもつ「時代を残す記録」という側面について。現在に至るまで脈々と受け継がれているもの、変わりつつあるもの、そして、その先にある日本人男性の姿とは。
――テーラードスタイルにこだわった理由は?
理由のひとつとして、昨今、それらのスタイルが斜陽化していることが挙げられます。ビジネススーツというのは横ばい状態で、サラリーマンが仕事着として使用しています。いっぽうで、お洒落で着るような、いわゆる「タウンスーツ」と呼ばれる趣味性の強いものの需要は、落ち込んでいます。やはり、多くの方がカジュアルな格好にシフトして、装う愉しみとしてスーツを着ることを、しなくなったと思うのです。
この先、仮に数十年このような状況がつづくとしたら、ファッションとしてのスーツスタイルが、街から消えてしまうのではないか。そうしたなかで、この130人のポートレートが、数十年後に価値ある資料になるかもしれない。そのような記録性も、本書の大きなテーマとなっています。
『TAKE IVY』も出版されて50年が経ちますが、現在では貴重な資料として、世界的に認知されています。今回、これだけのボリュームで製作したのは、“2010年代に、たしかに日本に存在した男たち”の資料として残したいという思いがあったからです。
――先ほど、斜陽化という言葉が出ましたが、スタイルを記録として留めることにおいて、いまがギリギリのタイミングだと思いますか?
そこまでは思わないです。ただやはり、お洒落ができるスーツを着る方というのは、一般的には少ないじゃないですか? このままだと消えゆく運命に有るのはたしかだと……
ただ、スーツもれっきとしたファッションなので、かたちを変えて受け継がれることも考えられます。この先、なにかのタイミングでテーラリングスタイルが注目され、そこからスーツで楽しむお洒落が再認識される可能性は大いにあるでしょう。そのときのきっかけが、この本であればうれしいと思います。
本書のなかでは、モードな着こなしの方も数名いらっしゃいます。つまり、クラシックに偏重した堅苦しさを感じさせるような内容ではないのです。
基本的には、ご自身の服をお好きに着ていただきました。着こなしのバリエーションも豊富に、イタリア、イギリス、アメリカ、とさまざまです。その国のなかでも、地方によって異なりますし、わかる人にはわかるはずです。
――日本のスーツスタイルの“いま”を切り取ることで、“これまで”を記録するようなかたちになったと。
結果的にそう見えるかもしれませんが、今回はパーソナリティありきです。バリエーションをつけるために、全体を俯瞰した編集的な視点もありましたが、第一に、あの人の、スーツ姿のポートレートを撮りたい、という出発点がありましたので。
――出演者のセレクトにも河合さんの意図が反映されている、と。
はい。スタイルブックという側面ももたせたいと思っていましたので、単に格好の良い男性たちを撮っているわけではないのです。ファッション好きの人にも、楽しんでページをめくっていただけるのではないかと思います。
『JAPANESE DANDY』
プロデュース&ディレクション|河合正人
写真|大川直人
登場人数|130名
仕様|B4変形判(左右261× 天地320ミリ)
左綴じ上製本(ハードカバー)、272頁
発行日|2015年1月中旬 発売予定
発行・発売|万来舎
価格|1万800円
http://japanesedandy.com
河合正人|KAWAI Masato
フラワー・コーディネーター、ファッションプロデューサー。1958年、京都生まれ。1986年、河合正人花事務所を設立。広告、雑誌、イベントでの制作を中心に活動。フラワー・コーディネートで農林大臣賞を受賞、そのほか受賞歴多数。1994年、写真集『FLOWERS』を出版。2012年に、2冊目となる『FLOWERS』(万来舎)を出版。
大川直人|OHKAWA Naoto
フォトグラファー。1957年、東京生まれ。1982年、フリーカメラマンに。1988年、株式会社大川直人写真事務所設立。1997年、代官山にプライベートスタジオを開く。広告、ファッション、CD ジャケット、ミュージックビデオなどを中心に活動している。2012年『FLOWERS』刊行。1984年「WONDER WHEEL」、1986年「AFTER HOURS」と個展を開催。