連載|『JAPANESE DANDY』の系譜(前編)
特別連載|時代を超える日本の男たちの肖像
『JAPANESE DANDY』の系譜
前編「スタイルをもつ男を切り口とした日本人のポートレート」
10代から90代まで、130人の日本人男性を「ダンディズム」をテーマに撮り下ろし、一冊に集約。2015年1月中旬、『JAPANESE DANDY』が万来舎より発行される。制作の舞台裏を、プロデュースとディレクションを担当した、河合正人氏が全3回にわたって語る。
Text by KAWAI Masato
自身の生き方を投影するように、そのスタイルをもつ“男たち”
昨今の過度なカジュアル化、ドレスダウンされたファッション、とくに男性においては本来の伝統的なスーツスタイルの基本なども欠落したまま、ただ着崩したファッションが時代のスタイルになろうとしています。
それはある種の時代の要請なのかもしれませんが、テーラードというスタイルは長い年月をかけて育まれてきたものであり、その伝統を無視した着こなしがすべてになってしまうようなことがあれば、それは残念でなりません。
しかし、そうしたなかでも自身の生き方を投影するように、そのスタイルとともに時代を超える“男たち”がいます。いま、この時代にこのような“男たち”がいたことの記録として、この写真集は企画されました。
内容はそんな“男たち”のポートレート(肖像)であり、アートともいえる写真です。被写体となる方がたはみな、スタイルをもつ“男たち”で、年代は10代から90代と幅広く対象にしていますが、その年齢に関わらず“大人な”方がたに登場いただいています。
協力いただいた“男たち”は130名。各界で活躍する“素人(プロの被写体ではないと言う意味において)”であり、時代を創ってきた、あるいは時代を創っている方がたです。
制作をともにした、フォトグラファーの大川直人氏とは『FLOWERS』というフォトブックでも共演しています。そのときの被写体は「花」という静物だったのですが、彼の本筋はポートレートですので、今回の企画にもパートナーとして参加してもらうことになりました。
現場ではわたしがディレクションをおこなうのですが、大川氏も作品集を作るというところで、意欲的に取り組んでくれました。これまで彼は、有名ミュージシャンなど“プロの被写体”を撮ってきたわけですが、今回は撮られるという意味においては全員、素人の方がたです。
しかし、思いのほか、すんなりと写真が撮れました。それはなぜだろう?と考えたときに、「洋服好き」という共通の性格が起因しているのではないか、と考えたのです。つまりスタイルをもっているということは、自らをプレゼンテーションしたい、という気持ちを少なからずもっている、ということなのでは、と。
この写真がいまから30年後、50年後といった将来に、記録として残っていることも大変価値のあることではありますが、こういったスタイルをきちんともった大人たちがいるのだということを、いまの若い人たちにも知ってもらいたい、興味をもってもらいたいという想いもあります。そしてそんなスーツを着る大人たちのようになってみたいな、と思わせる写真集でありたいと考えています。
本連載では、わたしがこの写真集を企画するにあたり、伝えたいことを記していくつもりです。出版までの短い期間ではありますが、お付き合いのほど、よろしくお願い申し上げます。
『JAPANESE DANDY』
プロデュース&ディレクション|河合正人
写真|大川直人
登場人数|130名
仕様|B4変形判(左右261× 天地320ミリ)
左綴じ上製本(ハードカバー)、272頁
発行日|2015年1月中旬 発売予定
発行・発売|万来舎
価格|1万800円
http://japanesedandy.com
河合正人|KAWAI Masato
フラワー・コーディネーター、ファッションプロデューサー。1958年、京都生まれ。1986年、河合正人花事務所を設立。広告、雑誌、イベントでの制作を中心に活動。フラワー・コーディネートで農林大臣賞を受賞、そのほか受賞歴多数。1994年、写真集『FLOWERS』(万来舎)を出版。2012年に、2冊目となる『FLOWERS』を出版。
大川直人|OHKAWA Naoto
フォトグラファー。1957年、東京生まれ。1982年、フリーカメラマンに。1988年、株式会社大川直人写真事務所設立。1997年、代官山にプライベートスタジオを開く。広告、ファッション、CD ジャケット、ミュージックビデオなどを中心に活動している。2012年『FLOWERS』刊行。1984年「WONDER WHEEL」、1986年「AFTER HOURS」と個展を開催。