BOOK|“東京の家”はやっぱりヘン!?
BOOK|ジャーナリズム的視点の“家”の写真集
写真家ジェレミー・ステラ インタビュー
フランス人の視点で捉えた『東京の家』
日本に住むフランス人フォトグラファーが捉えた“日本の家”の写真集が話題を呼んでいる。景観のなかで異彩を放つ住宅の数々。しかしながらそれは、誰もが「東京の家ってこうかもね」と意識の底で認めている風景でもある。4年にわたる撮影を経て完成した写真集『東京の家』を上梓した、ジェレミー・ステラ氏に話をきいた。
Photographs (interview) by JAMANDFIXText by KASE TomoshigeTranslation by TANAKA Junko(OPENERS)
25年後も撮っていたい
「この写真集に収めたような“東京の家”を初めて見たときは、本当にびっくりしました。建物自体もユニークですし、その周囲の雰囲気も独特なものに感じました」
一般的にヨーロッパの国々では、法規制によって景観の統一性を損ねるような建築は認められないことが多い。法人はもとより個人の住宅においても、だ。そうした景観に慣れている外国人から見れば、東京の街はある意味カオスであろう。
フランス人フォトグラファー、ジェレミー・ステラ氏が捉えた“東京の家”の数々は、まず見るものに驚きを与える。一瞬をおいて静けさを感じさせ、その後風景の中から生活が漂ってくる。
「捉えたかったことは3つあって、住宅、生活、周辺の雰囲気です。そしてそれらを通じて“東京感”を見せたいと思ったんです。自転車に乗ったサラリーマンや幼稚園に通う親子、駐車違反を取り締まる人などは、意図的に入れ込みました」
いずれの写真も水平を確保し、露出も適正。奇異を正攻法で捉えればユーモアも立ち上ってくる。つまり総合的に、魅力に溢れた写真なのである。
現在東京に暮らし、フランスのル・モンド紙、米ウォール・ストリート・ジャーナル紙、日本の建築雑誌などで活動するフォトグラファーのステラ氏。パリに住んでいたときは、どのような写真を撮っていたのだろうか。
「いや、フランスでは違う仕事をしていたんですよ。シトロエンのエンジニアで、車体のデザインを担当していました。写真は趣味だったんです。東京に来てから、本格的に写真を始めて、プロになりました」
フランスでも活躍してきた人物だと思っていたのだが的外れであった。しかしながら言われてみればエンジニアならではの、冷静な視点を備えた理系の写真ではある。全61点を収めた写真集『東京の家』。こうした家は歩いて探してみると、意外に見つからないものだが。
「建築雑誌の住宅特集やインターネットを見て、家を探しました。目当ての家が見つかったら、建築家や出版社に電話して『撮影をしているんですが、この家の住所を教えてほしい』と聞いたりしました。もちろん最初は教えてくれませんでしたけど(笑)」
取材も正面からの正攻法。4年にわたる活動のなかで徐々に交渉にも慣れ、その家の住人からの許可もほとんど得られたという。
「長く撮影してきたので、“東京の家”に慣れてきてしまったことはちょっと残念(笑)。でも日本の建築は日々新しくなっていくので、まだまだサプライズが待っているはずです。また住宅の寿命はだいたい25年と言われていますので、できれば25年はこの活動を続けて、移り変わりを見ていきたいですね」
そして25年後にまた同じ家を撮影しても面白いでしょうね、とステラ氏はいう。そのときには家も、周りの風景も、人も――そして“東京感”も大きく変わっているのかもしれない。
Jérémie Souteyrat|ジェレミー・ステラ
フランス生まれ。2009年より東京在住。主に仏ル・モンド紙、米ウォール・ストリート・ジャーナル紙などで活動。仕事も作品もジャーナリズムの視点を忘れぬよう心掛けているという。
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