左／フィンセント・ファン・ゴッホ《夜のプロヴァンスの田舎道》 1890年5月12-15日頃　油彩、カンヴァス　90.6×72cm　クレラー=ミュラー美術館蔵。右／フィンセント・ファン・ゴッホ《レモンの籠と瓶》 1888年5月　油彩、カンヴァス　53.9×64.3cm　クレラー=ミュラー美術館蔵。

LOUNGE / ART

2021年9月21日

東京都美術館にて『ゴッホ展──響きあう魂ヘレーネとフィンセント』を開催｜ART

ART｜ファン・ゴッホの油彩画、素描、版画、合計52点が一堂に会する

糸杉を描いた「夜のプロヴァンスの田舎道」が16年ぶりに来日。ゴッホに魅了された収集家・ヘレーネのコレクションを紐解く

世界中で絶大な人気を誇るフィンセント・ファン・ゴッホ（1853～1890年）。その芸術に魅了され、世界最大の個人収集家となったヘレーネ・クレラー=ミュラー（1869～1939年）のコレクションを中心とする展覧会『ゴッホ展──響きあう魂ヘレーネとフィンセント』が、東京都美術館にて、2021年9月18日（土）～12月12日（日）に開催される。

Text by OZAKI Sayaka

選りすぐりのファン・ゴッホの油彩画32点と素描・版画20点で、その画業を辿る

『ゴッホ展──響きあう魂ヘレーネとフィンセント』は、フィンセント・ファン・ゴッホに情熱を注いだ収集家、ヘレーネ・クレラー=ミュラーのコレクションに焦点を当てる展覧会だ。ファン・ゴッホの初期から晩年までの油彩画32点、オランダ時代の素描・版画20点に加えて、関連作家の油彩画20点が展示される。

新印象派の影響を色濃く見せるパリ時代の「レストランの内部」、黄と紫の対照がまばゆいアルル時代の「種まく人」、糸杉を描いたサン=レミ時代の傑作「夜のプロヴァンスの田舎道」など、その初期から晩年までの画業を辿ることができる。

フィンセント・ファン・ゴッホ《レストランの内部》 1887年夏　油彩、カンヴァス　45.5×56cm　クレラー=ミュラー美術館蔵

展示構成は4部から成り、1部の「芸術に魅せられて：ヘレーネ・クレラー=ミュラー、収集家、クレラー=ミュラー美術館の創立者」では、ファン・ゴッホの芸術に魅了されたヘレーネ・クレラー=ミュラーのコレクションに焦点を当てる。石炭や鉄を出荷する事業を営む一家に生まれたヘレーネは、オランダの裕福な人々に美術講座を開催していた教師で批評家でもあったヘンク・ブレマーと出会い、その導きにより、芸術に生きる意義を見出した。ヘレーネは、どんな画家の作品よりもファン・ゴッホの作品に人間の内面が現れていると感じ、その作品を後世に伝えるべく、質の高い作品を選び、初期から晩年までの画業が辿れるよう体系的に収集を行った。ヘレーネは、1938年にクレラー=ミュラー美術館を設立し、初代館長を務め、そのコレクションは、ゴッホの90点を超える油彩画と約180点の素描・版画、そしてゴッホと同時代の画家たちの作品も含まれる。

2部「ヘレーネの愛した芸術家たち：写実主義からキュビスムまで」では、ヘレーネの関心や収集傾向を明らかにするミレー、ルノワール、スーラ、ルドン、モンドリアンらの作品20点を展示。

3部の「ファン・ゴッホを収集する」では、オランダ、フランス時代の素描と油彩画を展覧。クレラー＝ミュラー美術館のコレクションは、短期間の滞在であったドレンテとアントワープで描かれた作品を除き、ファン・ゴッホの画業をほぼ網羅し、画業の初期にあたるオランダ時代の素描から、力強く現代的な独自の様式を発展させるまでの作品群を鑑賞できる。

そして4部の「ファン・ゴッホ美術館のファン・ゴッホ家コレクション：オランダにあるもう一つの素晴らしいコレクション」では、ファン・ゴッホの没後、生前に販売あるいは譲渡された一部の作品を除いて弟テオが相続し、現在はファン・ゴッホ美術館に収蔵されるコレクションより、「黄色い家（通り）」を含むファン・ゴッホの油彩画4点が来日する。