ART|原美術館で『蜷川実花:Self-image』展
ART│「生身に近い、何も武装していない」セルフポートレートを中心に展示
原美術館で『蜷川実花:Self-image』
幅広い活動で知られる写真家の蜷川実花(にながわ みか)による写真展『蜷川実花:Self-image』が1月24日(土)から5月10日(日)まで、品川区の原美術館で開催。本人が「生身に近い、何も武装していない」と語るセルフポートレートを中心に、これまでの蜷川実花とはまたちがった作品群が出現する。
Text by YANAKA Tomomi
インスタレーションでは音楽を渋谷慶一郎が担当
“蜷川カラー”ともいわれる極彩色の鮮烈な写真で知られる蜷川実花。写真家としてはもちろんのこと、近年では映画やミュージックビデオを手がけたり、ファッションデザイナーとのコラボレーションなど多彩な活動を展開している。
彼女は、写真家としての活動開始と同時に毎年写真集を発表。現在では90冊近くが出版され、これまでに“写真界の芥川賞”ともいわれる木村伊兵衛賞など数々の賞に輝いてきた。そして今回、かつて邸宅でもあった原美術館で蜷川実花の未発表作品を中心する約150点が展示される。
蜷川にとってはじめてとなるセルフポートレートが中心となる本展。写真家としてのデビュー当初から断続的に撮影されたものの、これまであまり発表されることのなかったモノクロームのセルフポートレートは、蜷川特有の極彩色が鳴りを潜め、限りなく素に近く、彼女の内面にまで迫ることができる。
このほか、闇や影の部分に目を向け、新境地を切り開いた『noir』(2010年~)や、目黒川の川面に散る桜を一心不乱に収めた『PLANT A TREE』(2011年)からも出品。また展覧会に足を踏み入れるとすぐに三面に映像が投影される新作のインスタレーションも披露。このインスタレーションでは、映像にあわせて特別に渋谷慶一郎が音楽を、サウンド・ジェネレートシステムをevalaが担う。
花の輝きを捉え、ポジティブで開放的な作品を作りつづける一方で、華やかさや幸福感と隣り合わせにあるゆがみやよどみ、衰退の影や死の気配を切り取りつづけてきた蜷川実花。セルフポートレートをはじめとする作品から、彼女のあらたな才能の一面を見ることができそうだ。