ART|メディア芸術の“いま”「第17回文化庁メディア芸術祭 受賞作品展」
ART|メディア芸術の“いま”を明示する160作品が一堂に!
「第17回文化庁メディア芸術祭 受賞作品展」
年に一度、高い芸術性と創造性をもつ優れたメディア芸術作品を選出する「文化庁メディア芸術祭」。プロ、アマチュア、自主制作、商業作品を問わないという、門戸の広さが特徴だ。17回目を数える今回は、過去最多となる4000以上の応募の中から、32の受賞作品と4人の功労賞受賞者が選出された。
Text by TANAKA Junko (OPENERS)
時代を写し出すメディア芸術の世界
1997年にスタートした「文化庁メディア芸術祭」。「アート」「エンターテインメント」「アニメーション」「マンガ」の計4部門から、それぞれ大賞1作品、優秀賞4作品、新人賞3作品、さらに審査委員会推薦作品を選出し、12日間にわたって受賞作品に触れる機会を提供するメディア芸術の総合フェスティバルである。
今回は世界84カ国から、過去最多となる4347作品の応募があり、はじめて国外からのエントリー(2347作品)が国内の数を上回った。それらを“厳しい目”で評価するのは、各部門5人の審査委員。アーティストの高谷史朗氏やゲーム作家の飯田和敏氏、DOMMUNE主宰の宇川直宏氏など。第一線で活躍するクリエイターや研究者が名を連ねている。
運営委員を務めた京都市立芸術大学長の建畠晢氏によると、今回の特徴は大きく分けてふたつ。あたらしい素材を扱ったり、あたらしい表現に取り組むことの多いメディア芸術だが、今年の審査では、目新しさよりも内容的な真価を評価する傾向にあったこと。それからビッグデータやクラウドなど、多くの技術が現象化した一年を象徴するように、データを使って“いまの表現”をする作品が目立ったことだ。
データは人の心を動かすことができるか?
そうした特徴をもっとも色濃く感じさせたのが、エンターテインメント部門で大賞を受賞した『Sound of Honda / Ayrton Senna 1989』。走行データをもちいて、ドライブを演出する本田技研工業のカーナビゲーションシステム「インターナビ」。その独自の技術と歴史をひもとくため、1989年にアイルトン・セナが樹立した世界最速ラップの走行データをすべてデジタル化し、セナの走りを音と光でよみがえらせた作品だ。
過去のデータと最新の技術を結集させたこのプロジェクト。手がけたのは電通のクリエイティブチームと、プログラマーの真鍋大度氏、映像作家の関根光才氏、サウンドアーティストの澤井妙治氏という、いまをときめく3人のクリエイターだ。
審査委員を務めたゲームクリエイターの岩谷徹氏は、次のように賞賛を送った。「当時の熱気までよみがえってくるようだった。まるで脳裏から記憶が引き出されるように。たった1枚のデータをここまで変貌させたということに、審査委員一同鳥肌が立った。今後の“データ作品”の可能性を感じさせる秀作」
この『Sound of Honda / Ayrton Senna 1989』をはじめとする受賞作品、審査委員会推薦作品約160点が一堂に会する受賞作品展。2月5日(水)から16日(日)まで、国立新美術館を中心に六本木周辺の計4カ所で開催される。時代を写し出すメディア芸術の世界に触れる貴重な機会。ぜひ会場に足を運んでいただきたい。
問い合わせ
文化庁メディア芸術祭事務局
Tel. 03-5459-4755(一般受付/9:00~20:00)
http://j-mediaarts.jp/
https://www.facebook.com/JapanMediaArtsFestival
https://twitter.com/JMediaArtsFes